文献情報
文献番号
202517007A
報告書区分
総括
研究課題名
児童・思春期精神医療における多職種連携の推進マニュアル作成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GC1013
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 政英(国立健康危機管理研究機構 国立国府台医療センター児童精神科 / 子どものこころ総合診療センター)
研究分担者(所属機関)
- 原田 謙(長野県立 こころの医療センター駒ヶ根)
- 大重 耕三(地方独立行政法人 岡山県精神科医療センター)
- 奥野 正景(医療法人サヂカム会 三国丘病院 精神科)
- 田崎 琴瑛(板垣 琴瑛)(国立健康危機管理研究機構 国立国府台医療センター 心理指導室)
- 山本 啓太(国立健康危機管理研究機構 国立国府台医療センター ソーシャルワーク室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
3,116,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
不登校の児童生徒や若年層の自殺増加などにより、児童・思春期精神医療へのニーズが急速に高まっている。しかし、専門医等の不足や偏在が初診待機の長期化などのボトルネックを引き起こしている。この課題を克服するためには、医師への過度な業務集中を防ぎ、多職種が各々の専門性を発揮して協働するチーム医療の推進が不可欠である。本研究は3年計画の最終段階(令和7年度)として、現場の実態を反映した連携マニュアルの完成と、各専門職の役割の最終的な効果検証を目的とした。
研究方法
国立健康危機管理研究機構 国立国府台医療センターを中心とし、全国の関連協議会の協力を得て以下の調査等を実施した。
原田班:児童病棟において各専門職が担当するプログラムを絞り込んだ新たな運用体制を導入し、単施設前後比較調査としてスタッフを対象にアンケート調査を実施した。
大重班:全国の児童相談所に所属する児童福祉司を対象に、精神科医療機関との連携において感じる困難さとその具体的な理由について、選択式および自由記述形式によるアンケート調査を行った。
奥野班:日本児童青年精神科・診療所連絡協議会の会員施設を対象にアンケート調査を実施した。2025年11月の各種診療報酬加算の算定状況や多職種の配置人数などの定量データを収集し、前年度調査との比較分析を行った。
山本班:専門施設を退院した児童本人およびその保護者を対象にオンライン調査を実施し、総合満足度と各評価項目の関連を明らかにするため、統計解析を行った。
板垣班:4つの分担研究班から得られたデータと文献レビューを統合し、計3回の研究班会議を経てマニュアル最終案を策定する。
原田班:児童病棟において各専門職が担当するプログラムを絞り込んだ新たな運用体制を導入し、単施設前後比較調査としてスタッフを対象にアンケート調査を実施した。
大重班:全国の児童相談所に所属する児童福祉司を対象に、精神科医療機関との連携において感じる困難さとその具体的な理由について、選択式および自由記述形式によるアンケート調査を行った。
奥野班:日本児童青年精神科・診療所連絡協議会の会員施設を対象にアンケート調査を実施した。2025年11月の各種診療報酬加算の算定状況や多職種の配置人数などの定量データを収集し、前年度調査との比較分析を行った。
山本班:専門施設を退院した児童本人およびその保護者を対象にオンライン調査を実施し、総合満足度と各評価項目の関連を明らかにするため、統計解析を行った。
板垣班:4つの分担研究班から得られたデータと文献レビューを統合し、計3回の研究班会議を経てマニュアル最終案を策定する。
結果と考察
各班の調査・分析により、多職種連携の実態と機能的システムへの昇華に向けた重要な知見が得られた。
入院プログラムの職種別担当制(原田班):担当制の導入は「専門性の発揮」や「チームの一体感醸成」という明確なメリットをもたらした。一方で、「担当外プログラムの様子が把握しづらい」というデメリットが表面化し、業務の分業化を進める際には、それを統合するための強力な情報共有プラットフォームが不可欠であると示された。
児童福祉司からみた連携の障壁(大重班):約68%の児童福祉司が精神科医療機関との連携に困難を感じていた。その背景には、アセスメントと介入方針の乖離、実情に合わない要求、医療資源の絶対的不足などがある。医療側の「医学的パラダイム」と福祉側の「児童福祉的パラダイム」という根本的なズレが連携停滞を生んでおり、平時から構造的なコミュニケーションの場(地域連携会議等)を構築することが急務である。
診療所における多職種配置と制度的課題(奥野班):診療報酬における評価は、公認心理師などの多職種配置を強力に牽引するインセンティブとして有効に機能していた。しかし、施設基準の厳格さがトランジション期の思春期患者のアクセスを難しくする可能性や、長期通院患者に対する加算の算定制限が医療機関の経営を圧迫するという制度設計上の課題も提起された。
当事者と保護者の治療ニーズの差異(山本班):児童本人は「病棟レクリエーション」や「院内学級」など日常的活動の保障を重視して治療環境を評価した。対照的に、保護者は「主治医や看護師との緊密なコミュニケーション(医療的安心感)」を最重要視していた。特定の職種単独でこの複合的な二重のニーズを満たすことは不可能であり、全職種による包括的な支援が不可欠である。
マニュアルの完成と実装意義(板垣班):実証データを統合し、4章構成の実践指針「MENTOR」を完成させた。規模や機能格差に配慮して対象に「保育士」や「院内学級教員」を追加し、急性期の危機に対して即時開催する「迅速多職種カンファレンス」のプロトコルなどを規定することで、情報の分断を防ぎチームの俊敏性を高める汎用的な設計とした
入院プログラムの職種別担当制(原田班):担当制の導入は「専門性の発揮」や「チームの一体感醸成」という明確なメリットをもたらした。一方で、「担当外プログラムの様子が把握しづらい」というデメリットが表面化し、業務の分業化を進める際には、それを統合するための強力な情報共有プラットフォームが不可欠であると示された。
児童福祉司からみた連携の障壁(大重班):約68%の児童福祉司が精神科医療機関との連携に困難を感じていた。その背景には、アセスメントと介入方針の乖離、実情に合わない要求、医療資源の絶対的不足などがある。医療側の「医学的パラダイム」と福祉側の「児童福祉的パラダイム」という根本的なズレが連携停滞を生んでおり、平時から構造的なコミュニケーションの場(地域連携会議等)を構築することが急務である。
診療所における多職種配置と制度的課題(奥野班):診療報酬における評価は、公認心理師などの多職種配置を強力に牽引するインセンティブとして有効に機能していた。しかし、施設基準の厳格さがトランジション期の思春期患者のアクセスを難しくする可能性や、長期通院患者に対する加算の算定制限が医療機関の経営を圧迫するという制度設計上の課題も提起された。
当事者と保護者の治療ニーズの差異(山本班):児童本人は「病棟レクリエーション」や「院内学級」など日常的活動の保障を重視して治療環境を評価した。対照的に、保護者は「主治医や看護師との緊密なコミュニケーション(医療的安心感)」を最重要視していた。特定の職種単独でこの複合的な二重のニーズを満たすことは不可能であり、全職種による包括的な支援が不可欠である。
マニュアルの完成と実装意義(板垣班):実証データを統合し、4章構成の実践指針「MENTOR」を完成させた。規模や機能格差に配慮して対象に「保育士」や「院内学級教員」を追加し、急性期の危機に対して即時開催する「迅速多職種カンファレンス」のプロトコルなどを規定することで、情報の分断を防ぎチームの俊敏性を高める汎用的な設計とした
結論
最終年度の調査を通じて、日本の児童・思春期精神医療における多職種連携の定量的な実態、当事者の質的ニーズ、ならびに外部機関連携における構造的な障壁が科学的に可視化された。
これらのエビデンスを統合して策定された「児童・思春期精神医療における多職種連携の推進マニュアル(MENTOR)」は、各専門職の役割を最適化し、定期的なカンファレンスを通じて職種間・機関間の認識のズレを解消し、患者本人・家族・地域社会をシームレスにつなぐための標準的かつ柔軟な実践指針である。今後は、本研究で構築されたマルチメディア教材等と連動させながら、本マニュアルを全国の臨床現場や研修プログラムへと広く実装していくことが最大の課題となる。本成果が、我が国の児童・思春期精神医療の質を飛躍的に向上させ、多職種協働の基盤整備に資する実効性ある社会資源となることを確信する。
これらのエビデンスを統合して策定された「児童・思春期精神医療における多職種連携の推進マニュアル(MENTOR)」は、各専門職の役割を最適化し、定期的なカンファレンスを通じて職種間・機関間の認識のズレを解消し、患者本人・家族・地域社会をシームレスにつなぐための標準的かつ柔軟な実践指針である。今後は、本研究で構築されたマルチメディア教材等と連動させながら、本マニュアルを全国の臨床現場や研修プログラムへと広く実装していくことが最大の課題となる。本成果が、我が国の児童・思春期精神医療の質を飛躍的に向上させ、多職種協働の基盤整備に資する実効性ある社会資源となることを確信する。
公開日・更新日
公開日
2026-06-17
更新日
-