認知症の遠隔医療およびケア提供を促進するための研究

文献情報

文献番号
202516001A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の遠隔医療およびケア提供を促進するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GB1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 川勝 忍(公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター)
  • 小野 賢二郎(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 新堂 晃大(三重大学 大学院医学系研究科 神経病態内科学)
  • 鄭 勳九(ジョン フング)(広島大学 医系科学研究科 共生社会医学講座)
  • 滝口 優子(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研修部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
13,619,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,医療資源や交通手段の確保が困難なため認知症医療・ケアの提供に課題が生じている地域において、シームレスな医療介護提供体制を構築・維持するための方法を示し、自治体で活用可能な資料を作成することにある。
研究方法
上記の目標を達成するために、2025年度は7つの分担研究を進めるとともに、自治体で活用可能な事例集を作成した。
結果と考察
1) 全国の離島・中山間地域における認知症支援体制の実態把握と認知症医療介護支援モデルの開発(粟田主一)では、全国885過疎市町村に対するアンケート調査のデータと公表されている既存の介護保険関連データを結合して分析し、過疎市町村における会議体には3つの参加者構成の類型があり、類型によってサービスの配分調整や制度外資源を認知症ケアに結びつける調整機能に差を生じ得ることを示した。
2)東京都及び全国の離島における認知症支援モデルの可視化と類型化に関する研究―東京都の離島における支援モデルの構築(井藤佳恵)では、東京都の島しょ地域において「予防事業と認知症対応事業の一体化実施モデル」の構築に取り組み、新島村および神津島村をフィールドに、住民リーダー育成、フレイル予防事業との連携、認知症教育の統合的実施を組み合わせた介入を開始した。
3)福島県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究―福島県会津地方における認知症遠隔医療の開発と導入(川勝忍)では、iPadとIBM遠隔診療支援アプリを用いて、実際に医師-医師間および医師-患者間の認知症の遠隔医療を試行的に行い、その有用性、使い勝手などを調査し、実用的であることを確認した。
4)石川県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究(小野賢二郎)では、能登地域で認知症医療を担う医療機関を対象にアンケート調査を実施し、災害が認知症医療・ケアの両面に深刻な影響を及ぼすことを示し、遠隔診療・巡回診療・多職種連携・広域連携を組み合わせた継続的かつ柔軟な認知症医療・ケア体制の整備が急務であることを示した。
5)三重県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究(新堂晃大)では、医師不足地域においてITを活用した遠隔スクリーニングを実施し、スクリーニングによって要介護認定前からの早期発見が可能となり、へき地医療に有用であることを示した。また多職種による複合プログラムは認知機能低下の抑制に寄与する可能性が示した。
6)広島県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究(鄭勳九)では、民生委員1,859名を対象にアンケート調査を行い、孤独・孤立がある場合、様々な福祉課題を有するクラスの出現確率が高まることを示した。また、介護支援専門員への研修が、認知症ケアマネジメントの知識・スキル向上に有用であることを示した。
7)オンラインシステムを用いた医療介護専門職の人材育成に関する研究(滝口優子)では、異なる離島間をオンラインで結ぶ交流会兼研修会を企画・実施し、介護専門職が継続的にオンラインで集まり情報を共有することが、離島で働く専門職の孤立感の解消や地理的制約を超えた学び合いに有効であることを示した。
結論
1) 過疎地域では地域包括ケアシステムの推進に係る会議体の参加者構成がサービス提供体制に影響する可能性がある。
2) 離島では予防と共生を統合した認知症支援モデルを構築する必要性が高い。
3) IBMの遠隔医療支援システムとiPadを使った認知症の遠隔診療の有用性は高く、実用的である。
4) 過疎・被災地域の実情に即した認知症医療・ケアの継続的提供に向けて、遠隔診療・巡回診療・広域連携を組み合わせた包括的な支援体制の整備が急務である。
5) 医師不足地域においては、ITを活用した認知症スクリーニングにより早期発見と専門医療への導入が可能となる。
6) 都市部・離島・中山間地に関わらず認知症の人の福祉課題の複合化は、孤立・孤独と関連している。
7) 異なる離島間を結ぶオンライン研修会と現地訪問を組み合わせたハイブリッドの伴走的支援は介護専門職の人材育成とケアの質向上に寄与する実現可能な支援モデルである。
8) 離島・中山間地域の認知症支援体制に関する自治体向け事例集を作成した。

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
202516001B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症の遠隔医療およびケア提供を促進するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GB1001
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
粟田 主一(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター)
研究分担者(所属機関)
  • 井藤 佳恵(東京都健康長寿医療センター研究所 福祉と生活ケア研究チーム)
  • 川勝 忍(公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター)
  • 小野 賢二郎(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 新堂 晃大(三重大学 大学院医学系研究科 神経病態内科学)
  • 鄭 勳九(ジョン フング)(広島大学 医系科学研究科 共生社会医学講座)
  • 滝口 優子(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研修部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療資源や交通手段の確保が困難なため認知症医療ケアの提供に課題が生じている地域において、シームレスな医療介護提供体制を構築・維持するための方法を示し、自治体で活用可能な資料を作成することにある。
研究方法
上記の目標を達成するために、2023~2025年度に7つの分担研究課題を設定して研究を進めるとともに、2025年度に自治体で活用可能な事例集を作成した。
結果と考察
1)全国の離島・中山間地域における認知症支援体制の実態把握と認知症医療介護支援モデルの開発では、2023年度は全国の過疎市町村に対する質問紙調査によって、人口規模が小さいほど認知症に対する住民理解が不良であり、医療・ケア提供者の専門性が低くなり、医療介護リソースが不足すること、2024年度は認知症疾患医療センターが未整備の二次医療圏が18圏域存在し、そのすべてが過疎地・特定農山村にあること、2025年度は調査データと介護保険データを結合して、過疎市町村における会議体の類型と認知症ケアのサービス調整機能が関連することを示した。2)東京都及び全国の離島における認知症支援モデルの可視化と類型化に関する研究では、2023年度はインタビュー調査を通して東京都の離島における認知症支援体制構築支援事業の課題を「理解」「周知」「利用」の観点から示し、2024年度は量の不足、インフォーマルサポートの脆弱化とそれを補う資源が創出できないことや住民のヘルスリテラシーとスティグマという課題を抽出し、2025年度は「予防事業と認知症対応事業の一体化実施モデル」を構築し介入研究を開始した。3)福島県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究では、2023年度は現地関係者等のアンケート調査から遠隔医療の実施にあたってはITリテラシーの問題があることを示し、2024年度はIBM遠隔診療支援アプリを用いたD to Dは充分に利用可能であること、介護支援ソフト「ケアエール」を利用した介護事業所と利用者家族との通信網利用は介護者に好評であることを示し、2025年度はiPadとIBM遠隔診療支援アプリを用いたD to DおよびD to Pの認知症遠隔医療を試行的に実施し実用的であることを確認した。4)石川県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究では、2023年度は医療機関を対象とするアンケート調査から過疎地域では交通手段がないため通院困難な高齢者が多いこと、施設が不足していること、へき地医療拠点病院では認知症患者に対する介入が乏しいこと、2024年度は震災による被災と地域コミュニティ・家族支援体制崩壊の影響で、入院の長期化や認知症患者の症状悪化といった問題が生じていること、2025年度は災害が認知症医療・ケアの両面に深刻な影響を及ぼし、遠隔診療・巡回診療・多職種連携・広域連携を組み合わせた継続的かつ柔軟な認知症医療・ケア体制の整備が急務であることを示した。5)三重県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究では、2023年度は遠隔ITスクリーニングが認知症患者を専門医につなげるのに有効であることを示し、2024年は医師不足地域におけるITスクリーニングと地域住民の勉強会を実施し、2025年度はITスクリーニングによって認知症の早期発見が可能となりへき地医療に有用であることを示した。6)広島県の僻地における認知症支援体制構築に関する研究では、2023年度はアンケート調査によって民生委員が重要な役割を果たし多様な支援を行っていること、介護支援専門員に対す研修が認知症ケアマネジメントの向上に有効であることを示し、2024年度は認知症地域支援体制における民生委員の重要性と介護支援専門員に対するオンライン研修の有用性を示し、2025年度はアンケート調査データの潜在クラス分析から、孤独・孤立がある場合、様々な福祉課題を有するクラスの出現確率が高まることを示した。7)オンラインシステムを用いた医療介護専門職の人材育成に関する研究では、2023年度はアンケート調査から、過疎地域の介護専門職にとって集合研修は「移動」「費用」等に負担があることを示し、2024年度は異なる離島間を結ぶオンライン研修を実施し、①離島の介護専門職が容易に集まり研修会を実施できること、②介護専門職同士が互いの実情を知り、共感や新たな気付きを得る貴重な機会となること、③地域を超えた学び合いの可能性と発展性があることを示し、2025年度はオンライン交流会兼研修会を通して、離島で働く専門職の孤立感の解消、地理的制約を超えた学び合いに有効であることを示した。
結論
以上の分担研究の成果を踏まえ自治体向けの事例集を作成した。本事例集が、離島・中山間地域の認知症支援体制の構築に係る都道府県・市町村施策の策定に活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202516001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
認知症支援体制に関する全国885の過疎関係市町村へのアンケート調査と、福島県、東京都、新潟県、石川県、三重県、広島県の離島・中山間地域における実態調査とモデル開発を目的とする実践的研究を通して、資源不足、人員不足、交通不便、スティグマ、災害の長期的な影響等の課題を明らかにするとともに、ICTを活用した遠隔診療、遠隔スクリーニング、専門職の人材育成システム等の新たな支援体制づくりの方法論を創出し、その有用性と実用性を確認した。その成果は老年精神医学雑誌等の複数の学術雑誌に掲載され注目されている。
臨床的観点からの成果
ICTを活用した遠隔スクリーニングは専門医が不足している地域の認知症の早期診断と専門医療へのアクセシビリティの確保に寄与すること、豪雪・山間地域の認知症の遠隔診療で実施されたD to Dシステムは診断精度の十分な信頼性と実用性があることを確認した。また、異なる離島間の専門職をオンラインで結ぶ交流・研修会は離島の専門職の孤立の解消に寄与するとともに、医療・介護・行政・住民を結ぶ支援体制づくりに発展する可能性があることを示した。いずれも、全国の離島・中山間地域で実現可能なシステムである。
ガイドライン等の開発
本研究において、豪雪山間地域で実装された認知症の遠隔診療システム、医師不足地域に実装された遠隔スクリーニングシステム、離島等で展開された専門職の人材育成システム等は、本研究で作成した自治体向け手引き「離島・中山間地域における認知症支援体制づくり事例集」に掲載した。この事例集は、離島・中山間地域を有する都道府県・市町村の認知症支援体制づくりに係る施策で活用できるように、研究代表者の研究機関のホームページに掲載しており、必要な自治体には冊子体を郵送することができるようにしてある。
その他行政的観点からの成果
本研究で作成・公開される事例集は、人口減少が顕著で、交通の便が悪く、医療・介護資源が不足し、専門職の確保にも困難を来している離島、半島、山間地域を有する都道府県・市町村自治体の認知症施策推進計画、第10期介護保険事業計画・介護保険事業支援計画、地域医療計画の策定に役立てることができる。また、認知症医療については、抗アミロイドβ抗体薬の導入をはじめとする新たな医療サービス提供体制の確立に向けた遠隔診療・スクリーニングシステムの活用によって、地域の認知症医療の均霑化に寄与することができる。
その他のインパクト
2040年に向けて、超少子高齢化に起因する人口減少によって、社会資源やサービス提供体制の地域格差が顕在化してきている。本研究の成果は、それぞれの地域の実情に応じた新たなサービス提供体制の創出、イノベーション、ヘルスケア領域の技術革新、経済活動の活性化に寄与するものである。また、超少子高齢化は、わが国のみならず、先進諸国及び東アジア諸国の共通課題であり、認知症施策のあり方を問う国際的な政策科学的研究にもインパクトを与えるものである。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
74件
学会発表(国際学会等)
11件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
その他成果(施策への反映)
1件
自治体向け手引きの作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
202516001Z