臓器移植の社会的基盤に関する研究

文献情報

文献番号
201023023A
報告書区分
総括
研究課題名
臓器移植の社会的基盤に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-024
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院 角膜センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 伸一(国立長寿医療研究センター)
  • 藤堂 省(北海道大学大学院 医科学研究科 消化器外科・一般外科学分野)
  • 浅井 康文(札幌医科大学 医学部 救急集中治療医学講座 高度救急センター)
  • 高橋 公太(新潟大学大学院 腎泌尿器病態額)
  • 星長 清隆(藤田保健衛生大学 泌尿器科)
  • 高原 史郎(大阪大学大学院 医学系研究科 先端移植基盤医療学)
  • 横田 裕行(日本医科大学院 侵襲生体管理学)
  • 藤田 民夫(名古屋記念病院 泌尿器科)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学講座・医療政策)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病研究センター)
  • 山口 芳裕(杏林大学救急医学 臓器・組織移植センター)
  • 田中 秀治(国士舘大学 体育学部 スポーツ医学科 救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
34,414,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器提供希望者の意思を尊重できるシステムを構築することで、わが国における臓器提供者の増加を図る。また、国際標準化システムを鑑みた臓器・組織移植医療の円滑な一元管理システムの作成を目的とする。
研究方法
DAPによる教育、研修を60程度の医療機関で実施し、ポテンシャルドナー情報の把握と意思確認の実施調査を行い、調査結果から、ポテンシャルドナーとして認識されない理由や、臓器提供というオプションが提示されない理由を解析する。さらに、種々の移植コーディネーターに対する教育の在り方と、ドナーディテクション教育、ドナー管理教育について検討する。
また、国際標準化システムに沿った移植医療の一元管理システムの作成に向け、従来のスキンバンクネットワークシステムをベースにして、情報標準化にXML技術を用い検討を行う。
結果と考察
61施設でDAPを導入・展開し実施した。結果として、36ドナー62腎の提供があった。具体的に実施施設のニーズに合わせて実施されたアクションプランは、臓器移植の意義や知識を培うセミナーに加え、個々の症例が臓器提供可能かどうかを判断するためのディテクションセミナー、遺族アプローチに欠かすことのできないコミュニケーションセミナー、またそれらを実践するロールプレイが試みられた。結果、遺族に対し臓器提供の意思を確認するオプション提示数が増加した。
組織移植に関しては、スキンバンクネットワークシステムをベースとして、平成22年5月にWHOにて採択された移植医療標準化のための国際コーディングシステムに準拠するシステム改正を行った。その際、各バンク間の情報を標準化することは必須であり、XML技術を用いることで、国内各組織バンクの情報標準化のみならず、国際間での情報標準化にも対応できるシステムを開発した。
結論
我が国で臓器移植を発展させるためにすべきことは、不幸にして終末期を迎えた患者および、その家族の臓器提供に関する意思を確認することである。意思確認を行い、国民の意思を尊重するだけで臓器提供数は増加する。そして意思確認推進のために必要な要素が、DAPであり、運用する移植コーディネーターの教育である。
組織移植に関しては、国際標準コード化を踏まえた一元管理システムであるT-Codeを開発するに至った。今後は、XML協議会などのいわゆる標準化は必須であり、臓器・組織移植管理の高度なICTを実現し、これらの課題に柔軟に対応していく組織作りが求められている。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023023B
報告書区分
総合
研究課題名
臓器移植の社会的基盤に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-024
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
篠崎 尚史(東京歯科大学市川総合病院 角膜センター)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 伸一(国立長寿医療研究センター)
  • 藤堂 省(北海道大学大学院 医科学研究科 消化器外科・一般外科学分野)
  • 浅井 康文(札幌医科大学 医学部 救急集中治療医学講座 高度救急センター)
  • 高橋 公太(新潟大学大学院 腎泌尿器病態額)
  • 星長 清隆(藤田保健衛生大学 泌尿器科)
  • 高原 史郎(大阪大学大学院 医学系研究科 先端移植基盤医療学)
  • 横田 裕行(日本医科大学院 侵襲生体管理学)
  • 藤田 民夫(名古屋記念病院 泌尿器科)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学講座・医療政策)
  • 北村 惣一郎(国立循環器病研究センター)
  • 山口 芳裕(杏林大学救急医学 臓器・組織移植センター)
  • 田中 秀治(国士舘大学 体育学部 スポーツ医学科 救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臓器提供希望者の意思を尊重できるシステムを構築することで、わが国における臓器提供者の増加を図る。国際標準化システムを鑑みた臓器・組織移植医療の円滑な一元管理システムの作成を目的とする。
研究方法
DAPによる教育、研修を協力医療機関で実施し、ドナー情報の把握と意思確認の実施調査を行い、調査結果から、ドナーとして認識されない理由や、臓器提供の選択肢が提示されない理由を解析。移植コーディネーターに対する教育の在り方、ドナー認識・管理教育についても検討する。
組織移植においては、ドナー、レシピエント、提供組織に対して国際的な規則に則った番号を割り振り、その情報を保存・管理できる国際コーディングシステムを構築する。
結果と考察
平成20年度24施設、平成21年度46施設、平成22年度61施設でDAPの導入・展開を実施した。結果、平成20年度14例28腎、平成21年度17例34腎、平成22年度36例62腎の提供があった。具体的なニーズからのアクションプランとして、臓器移植の意義や知識を養うセミナーに加え、個々の症例が提供可能かを判断するためのセミナー、遺族アプローチに必要なコミュニケーションセミナー、それらを実践するロールプレイが試みられた。結果、遺族に対し臓器提供の意思を確認するオプション提示数が増加した。
組織移植では、既存のスキンバンクシステムを基にし、平成22年5月にWHOにて当該研究班から提唱し採択された移植医療標準化のための国際コード化を準拠するシステム改正を行った。その際、各バンク間の情報を標準化することは必須であり、XML技術を用いることで、国内各組織バンク間、国際間での情報標準化に対応できるシステムを開発した。
結論
臓器移植を発展させるためにすべきことは、終末期を迎えた患者、および家族の臓器提供に関する意思を確認することである。意思確認を行い、意思を尊重するだけで臓器提供数は増加する。そして意思確認推進のために必要な要素が、DAPであり、運用する移植コーディネーターの教育である。
組織移植に関しては、国際標準コード化を踏まえた一元管理システムであるT-Codeを開発するに至った。今後は、XML協議会などの標準化は必須であり、臓器・組織移植管理様々な課題に柔軟に対応していく組織作りが求められている。当該研究から、国際コード化を提唱し、WHOのガイドラインとなった成果は非常に大きい。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成22年の改正臓器移植法施工後、脳死下臓器提供数が増加したことは事実であるが、心停止後の献腎を含めると臓器提供総数が増加した訳ではない。我が国における臓器提供数増加のための方法として、ヨーロッパで運用されているDAPが応用できるという成果を得た。また、昨今の組織移植、細胞移植は国際間でのトレーサビリティー確保のための国際共通コード化をWHOに提唱し、WHOガイドラインとなった上、情報一元管理システムの開発を行った。
臨床的観点からの成果
我が国における臓器提供数増加に向けた対策として、医療スタッフに対しては適応症例判断スキルと、意思確認スキル、移植コーディネーターに対してはコミュニケーションスキルを含めた医療機関へのDAP導入スキルの向上が必要不可欠であり、ドナーの満足度を得る為にも、具体的な対策を見いだせたことが成果である。組織移植におけるデータベースでは、多部位の臓器、組織が提供された際でも、移植施設も含めて一元管理できる。
ガイドライン等の開発
世界保健機関(WHO)移植ガイドラインの改定(2010)に研究代表者が議長として参画し制定した。
また、改正臓器移植法においては、当該研究で得られた成果を元に、審議会、作業班での議論に反映され、意思表示カードの記載項目の簡略化や明確化、更には、共通コード管理の為のマニュアル開発があげられる。
その他行政的観点からの成果
世界保健機関(WHO)の改正ガイドラインに、当該研究で実施してきた世界共通コード化が世界の基準として採用された事が最も重要である。これにより不正な臓器売買や渡航移植をモニターでき、更にはWHOのホームページに、Global Knowledge-base for Transplant(GKT)を作成し、加盟193ケ国、地域の法制度、提供数、移植数が臓器、組織毎に掲載されるに至った。
その他のインパクト
WHO改正ガイドラインでは、NHKニュースを始め、各メディアに取り上げられ世界的にも大きなインパクトがあった。また、改正臓器移植法においても、臓器提供意思表示の方法や、DAP参加医療機関、移植コーディネーターらの意見が反映され意思表示カードの変更や救急関連学会の周知に関する話題が、新聞、Webニュース等、多数取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
25件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
33件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
世界保健機関(WHO)の改正ガイドラインに、当該研究で実施してきた世界共通コード化が世界の基準として採用された。
その他成果(普及・啓発活動)
2件
臓器移植法改正において、臓器提供意思表示法につき、DAP参加医療機関、移植コーディネーターらの意見が反映され、新聞、Webニュース等、多数取り上げられた。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Naoshi Shinozaki, Edward Holland, John Kearney, et al.
Global Coding System for Human Cells and Tissues for Transplantation
Transplantation , 15 (86) , 181-  (2008)
原著論文2
高橋公太
献腎提供を増やすにはーDonor Actionー
臨床透析 , 24 (1) , 5-6  (2008)
原著論文3
高橋公太
―医療従事者へのメッセージ―移植の歴史とその現況
成人病と生活習慣病  , 37 (12) , 1338-1343  (2008)
原著論文4
篠崎尚史
WHOガイドライン(組織移植)
Organ Biology , 15 (1) , 69-77  (2008)
原著論文5
篠崎尚史
組織移植・臓器移植・海外の実情
Organ Biology , 15 (4) , 321-347  (2008)
原著論文6
篠崎尚史
海外の渡航腎移植の現況と問題点
腎と透析 , 65 (3) , 446-449  (2008)
原著論文7
篠崎尚史
アジアの移植事情―まとめ
移植 , 43 (6) , 443-445  (2008)
原著論文8
浅井康文、武山佳洋、丹野克俊、他
移植コーディネーションの先進国際トレーニングコースに参加して
北海道医報告 , 1087 , 17-19  (2008)
原著論文9
長谷川友紀、篠崎尚史、大島伸一
ドナーアクションプログラム
移植 , 44 , 5217-5220  (2009)
原著論文10
篠崎尚史、福嶌教偉
「臓器移植法」改正案における脳死
移植 , 44 , 5143-5149  (2009)
原著論文11
篠崎尚史
WHO Guiding Principle
Organ Biology , 16 , 447-481  (2009)
原著論文12
横田裕行
脳死判定の現状-脳死下臓器提供との関連から
Clinical Neuroscience , 27 (8) , 866-869  (2009)
原著論文13
高橋絹代
ドナー移植コーディネーターの活動
看護 , 62 (2) , 70-72  (2009)
原著論文14
Michael Strong, Naoshi Shinozaki
Coding and traceability for cells, tissues and organ for transplantation
Cell and Tissue Banking , 11 , 305-323  (2010)
原著論文15
篠崎尚史
欧州モデルに学ぶ、医療文化と臓器提供推進機関のあり方
Organ Biology , 17 (1) , 27-33  (2010)
原著論文16
篠崎尚史
円滑な小児臓器移植医療の推進に向けて
小児科 , 51 (7) , 909-915  (2010)
原著論文17
藤堂省
生命の贈り物 -北海道の移植医療のこれまでの歩みとこれから
北海道医報 , 1107 (12) , 34-37  (2010)
原著論文18
小野 元、吉野茂、秋山政人、他
臓器提供のための医療機関のあり方
日本臨床 , 68 (12) , 2210-2214  (2010)
原著論文19
篠崎尚史、浅水健志
臓器移植の社会的基盤構築
医学のあゆみ , 237 , 363-367  (2011)
原著論文20
高橋公太
特集:知っておきたい最新の腎移植知識 わが国における臓器と組織移植の現況
腎と透析 , 65 (3) , 311-316  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-04-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201023023Z