関節リウマチの関節破壊ゼロを目指す治療指針の確立、及び根治・修復療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201023001A
報告書区分
総括
研究課題名
関節リウマチの関節破壊ゼロを目指す治療指針の確立、及び根治・修復療法の開発に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(学校法人 産業医科大学 医学部 第1内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科 内科学講座・第二内科)
  • 住田 孝之(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 竹内 勤(慶応義塾大学 医学部)
  • 三森 経世(京都大学 医学部)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 山中 寿(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター)
  • 山本 一彦(東京大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)は、進行性関節破壊を必発し、機能予後、生命予後不良に伴う社会的損失や経済的問題等を生じてきた。生物学的製剤は疾患制御を可能としたが、大部分の症例は治療前に既に関節破壊が進行し、それによる不可逆性の機能障害を有するのが現状であり、治療指針の設定による医療の標準化が最重要課題である。そこで、関節破壊ゼロを目指す関節リウマチの治療指針の確立を目的とした。一方、破壊された関節は機能的寛解でも身体機能の改善は得られず、修復を目指した治療の開発が必須である。そこで、関節破壊の制御、修復療法の開発を目的として研究した。
研究方法
①RA患者に対して保険診療内で実施できる関節破壊ゼロを目標とした治療ガイドラインを作成し、早期RA患者に対するZERO-J試験(UMIN登録)を実施し、1年後の関節X線で総Sharp値(mTSS)変化を評価した。②RAの関節破壊関連因子を同定し、モデル動物を用いて関節破壊における役割を解明した。
結果と考察
①治療1年間のDAS28は、MTX群で3.97から3.38に対して、TNF阻害薬群は4.96から2.73まで改善した。mTSSはMTX群で5.2から6.6へと増加したが、TNF阻害薬群は6.4のままで不変で、構造的寛解を保った。ただ、SDが大きく、症例数をさらに増やして検討する必要があった。一方、RISING試験では、インフリキシマブ各用量群の強力な関節破壊阻止効果が確認され、軟骨障害は機能障害に直線的に関わる可能性が指摘された。②RAの関節破壊関連因子としてPADI4、TTP、HLA SE、OA関連DVWA、DKK-1を同定した。PADI4ノックアウトマウスではコラーゲン誘導性関節炎が軽減され、p16 INK4aをアデノウイルスで動物モデル関節に遺伝子導入すると関節炎が改善し、TTP-ZFトランスジェニックマウスでは、TNF-α、IL-6、IL-17の発現抑制を介して関節炎、破壊を制御した。さらに、ヒト間葉系幹細胞からIL-1β、Wnt5a/Ror2を介する骨芽細胞への誘導培養系を確立した。
結論
①RA患者の発症早期から保険診療内でMTXとTNF阻害薬で治療することにより、構造的寛解すなわち関節破壊をゼロにすることが検証できた。②RAの関節破壊関連因子としてPADI4、TTP、HLA SE、OA関連DVWAを同定して機能的意義を解明し、ヒト間葉系幹細胞から骨芽細胞への効率的な分化誘導培養系を確立した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201023001B
報告書区分
総合
研究課題名
関節リウマチの関節破壊ゼロを目指す治療指針の確立、及び根治・修復療法の開発に関する研究
課題番号
H20-免疫・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田中 良哉(学校法人 産業医科大学 医学部 第1内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 隆夫(北海道大学大学院医学研究科 内科学講座・第二内科)
  • 住田 孝之(筑波大学大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻臨床免疫学)
  • 竹内 勤(慶応義塾大学 医学部 リウマチ内科)
  • 三森 経世(京都大学大学院医学研究科 内科学講座 臨床免疫学)
  • 宮坂 信之(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科学)
  • 山中 寿(東京女子医科大学 膠原病リウマチ痛風センター)
  • 山本 一彦(東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻アレルギーリウマチ学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
関節リウマチ(RA)患者に必発する進行性関節破壊は、機能障害に伴う社会的損失や関節置換術などによる医療費負担を生じてきた。日本人RAは、難治性、関節破壊進行が急速・高度で、関節が変形すると不可逆的で、身体機能の低下は必至である。生物学的製剤は関節破壊制御を可能としたが、TNF阻害薬投与前にすでに関節が破壊し、不可逆性の機能障害を有する症例が大部分であり、治療指針の設定による医療の標準化が最重要課題である。また、破壊された関節の修復を目指した治療の開発が必須である。そこで、①関節破壊ゼロを目指す関節リウマチの治療指針の確立、②関節リウマチの根治療法、関節破壊修復療法の開発を目的として研究した。
研究方法
①RA患者に対して保険診療内で実施できる関節破壊ゼロを目標とした治療ガイドラインを作成し、早期RA 178例に対するZERO-J試験(UMIN登録)を実施し、1年後の関節X線で総Sharp値(mTSS)変化を評価した。②RAの関節破壊関連因子を同定し、モデル動物を用いて関節破壊における役割を解明した。
結果と考察
①MTX治療群では1年後に、関節破壊指標であるmTSS値は5.1から6.4に増加し、⊿mTSSは1.4と増加したのに対して、TNF阻害薬治療群はmTSSは6.1から6.0、⊿mTSSも-0.1と不変で、65.6%が構造的寛解を保った。以上、MTXとTNF阻害薬の併用により、構造的寛解すなわち関節破壊をゼロにできることが検証できた。②RAの関節破壊関連因子としてPADI4、TTP、HLA SE、OA関連DVWA、DKK-1を同定した。PADI4ノックアウトマウスではコラーゲン誘導性関節炎が軽減され、p16 INK4aをアデノウイルスで動物モデル関節に遺伝子導入すると関節炎が改善し、TTP-ZFトランスジェニックマウスでは、TNF-α、IL-6、IL-17の発現抑制を介して関節炎、破壊を制御した。さらに、ヒト間葉系幹細胞からIL-1β、Wnt5a/Ror2を介する骨芽細胞への誘導培養系を確立した。
結論
①RA患者の発症早期から保険診療内でMTXとTNF阻害薬で治療することにより、構造的寛解すなわち関節破壊をゼロにすることが検証できた。②RAの関節破壊関連因子としてPADI4、TTP、HLA SE、OA関連DVWAを同定して機能的意義を解明し、ヒト間葉系幹細胞から骨芽細胞への効率的な分化誘導培養系を確立した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201023001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
関節リウマチ(RA)の関節破壊の制御、修復療法の開発は途上にあった。今回、RAの関節破壊関連因子としてPADI4、TTP、HLA SE、OA関連DVWAを同定し、各因子に関して機能的意義を究明した。その結果、関節破壊の制御を目的とした治療の開発に於いて、明確な治療標的を示すことができた。また、ヒト間葉系幹細胞から骨芽細胞への効率的な分化誘導培養系を確立し、ナノファイバーによる3次元骨形成系を確認し、再生医療を応用した関節破壊の修復療法の基礎を築いた。
臨床的観点からの成果
RAに対する生物学的製剤は高い臨床効果を齎したが、日本人に於ける関節破壊の抑制効果は不詳であった。今回、ZERO-J試験により、早期のRA患者を対象にMTXとTNF阻害薬の併用療法を行い、高率な臨床的寛解と共に、治療1年後の関節X線を評価して構造的寛解、即ち『関節破壊をゼロに』できることを検証した。以上の結果は、保険診療内でバイオ製剤を的確に用いたタイトコントロールすれば、関節破壊を抑止し、長期機能予後を改善し、機能障害に伴う社会的損失や医療費高騰を抑制できることが明らかになった。
ガイドライン等の開発
大部分のRA症例は治療前に既に関節破壊が進行し、それによる不可逆性の機能障害を有するのが現状であり、治療指針の設定による医療の標準化が最重要課題であった。RA患者のプライマリケア医から専門医まで保険診療内で実施できる関節破壊『ゼロ』を目標とした治療ガイドラインを作成し、的確な治療により関節破壊を抑止しできることが検証された。今後、さらに効率が良い治療指針を策定し、日本リウマチ学会と共同で公布すれば、リウマチ医療の標準化・効率化を地方に至るまで周知できるはずである。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
平成22年12月17日に、本班会議を公開シンポジウム形式で実施した。各施設から2名と限定したが、20以上の製薬企業、及び、研究所からの出席者を集め、研究意義に強い注視がなされた。特に、関節破壊の制御に関して明確な治療標的を示すことができたこと、再生医療へ応用可能なヒト間葉系幹細胞から骨芽細胞への効率的な分化誘導培養系が確立されたこと、および、バイオ製剤を的確に用いたタイトコントロールを行えば、関節破壊が抑止されることを検証できたことに注目が集まった。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
99件
その他論文(和文)
31件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
25件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Y Tanaka, T Takeuchi, T Mimori.et al.
Discontinuation of infliximab after attaining low Disease actibity in patients with rheumatoid arthritis:RRR(remission induction by Remicade in RA)study
Ann Rheum Dis , 69 , 1286-1291  (2010)
原著論文2
JUN FUKAE, YUJIRO KON, MIHOKO HENMI.et al.
Change of Synovial Vascularity in a Single Finger Joint Assessed by Power Doppler Sonograpgy Correlated With Radiographic Change in Rheumatoid Arthritis:Comparative Study of a Novel Quantitative Score With a Semiquantitative Score
Arthritis Care&Research , 62 , 657-663  (2010)
原著論文3
Jun Fukae, Masato Shimizu, Yujiro Kon.et.al.
Screening for rheumatoid arthritis with finger joint power Doppler ultrasonography:quantification of conventional power Doppler ultrasonographic scoring
Mod Rheumatol , 19 , 502-506  (2009)
原著論文4
Tsutomu Takeuchi, Nobuyuki Miyasaka, Kazuhiko Inoue.et.al.
Impact of trough serum level on radiographic and clinical response to infliximab plus methotrexate in patients with rheumatoid arthritis:results from the RISING study
Mod Rheumatol , 19 , 478-487  (2009)
原著論文5
Tsutomu Takeuchi, Hideto Kameda.et.al.
The Japanese experience with biologic therapies for rheumatoid arthritis
NATURE REVIEWS , 6 , 644-652  (2010)
原著論文6
Yuta Kochi, Yukinori Okada, Akari Suzuki.et.al.
A regulatory variant in CCR6 is associated with rheumatoid arthritis susceptibility
NATURE GENETICS , 42 , 515-521  (2010)
原著論文7
Chiyoko Sekine, Takahiko Sugihara, SAchiko Miyake.et.al.
Successful Treatment of Animal Models of Rheumatoid Arthritis with Small-Molecule Cyclin-Dependent Kinase Inhibitors
The Journal of Immunology , 21 , 1954-1961  (2011)
原著論文8
Takefumi Furuya, Tomohiko Urano, Katsunori Ikari.et.al.
A1330V polymorphism of low-density lipoprotein receptor-related protein 5 gene and self-reported incident fractures in Japanese female patients with rheumatoid arthritis
Mod Rheumatol , 19 , 140-146  (2009)
原著論文9
Kenichi Shimane, Yuta Kochi, Tetsuya Horita.et.al.
The Association of a Nonsynonymous Single-Nucleotide Polymorphism in TNFAIP3 with Systemic Lupus Erythematosus and Rheumatoid Arthritis in the Japanese Population
ARTHRUTIS&RHEUMATISM , 62 , 574-579  (2010)
原著論文10
Aya Kawasaki, Satoshi Ito, Hiroshi Furukawa.et.al.
Association of TNFAIP3 interacting protein 1,TNIP1 with systemic lupus erythematosus in a Japanese population:a case-control association study
Arthritis Research & Therapy , 12 , 174-180  (2010)
原著論文11
Motomu Hashimoto, Keiji Hirota, Hiroyuki Yoshitomi.et.al.
Complement drives Th17 cell deggerentiation and triggers autoimmune arthritis
JEM , 207 , 1135-1143  (2010)
原著論文12
Yosuke Murakami, Tohru Akahoshi, Naoko Aoki.et.al.
Inrwevention of an Inflammation Amplifier, Triggering Receptor Expressed on Myeloid Cells 1, for Treatment of Autoimmune Arthritis
ARTHRUTIS&RHEUMATISM , 60 , 1615-1623  (2009)
原著論文13
A Nakajima, E Inoue, E Tanaka.et.al.
Mortality and cause of death in Japanese patients with rheumatoid arthritis based on a large observational cohort,IORRA
Scand J Rheumatol , 39 , 360-367  (2010)
原著論文14
Choo Q-Y, Ho PC,Tanaka Y.et.al.
Histone deacetylase inhibitors MS-275 and SAHA induced growth arrest and suppressed lipolysaccharide-stimulated NF-k B p65 nuclear accumulation in human rheumatoid arthritis synovial fibroblastic E11 cells.
Rheumatoligy , 49 , 1447-1460  (2010)
原著論文15
Tanaka Y, Takeuchi T, Mimori T.et.al.
Discontinuation of infliximab after attaining low disease activity in patients with rheumatoid arthritis,RRR(remission inducton by remicade in RA)study.
Amm Rheum Dis , 69 , 1286-1291  (2010)
原著論文16
Suzuki K, Saito K, Tsujimura S.et.al.
A calcineurin inhibitor,tacrolimus avercomes treatment-unresponsiveness mediated by P-glycoprotein on lymphosytes in refractory rheumatoid arthritis.
J Rheumatol , 37 , 512-520  (2010)
原著論文17
Sawamukai N, YUkawa S, SAaito K.et.al.
Mast cell-derived tryptase inhibits apoptosis of human rheumatoid synovial fibroblasts via rho-mediated signaling.
Arthritis Rheum , 62 , 952-959  (2010)
原著論文18
Iwata S, Saito K, Yamaoka K.et.al.
Effects of anti-TNF-α antibody infliximab in refractory entero-Beh et's disease.
Rheumatology , 48 , 1012-1013  (2009)
原著論文19
Nakayamada S, Fujimoto T, Nonomura A.et.al.
Usefulness of initial histoligical features for stratifying Sjogren's syndrome responders to mizoribine therapy.
Rheumatology , 48 , 1279-1282  (2009)
原著論文20
Takeuchi T, Tatsuki T, Nogami N.et.al.
Post-marketing surveillance of the safety profile of infliximab in 5,000 Japanese patients with rheumatoid arthritis.
Ann Rheum Dis , 67 , 189-195  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
2015-06-29

収支報告書

文献番号
201023001Z