糖尿病患者における心血管イベント発症に関する後ろ向きコホートに関する研究

文献情報

文献番号
201021060A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病患者における心血管イベント発症に関する後ろ向きコホートに関する研究
課題番号
H21-糖尿病等・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 隆造(京都大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨 秀一郎(財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 心臓血管外科)
  • 坂東 興(国際医療福祉大学塩谷病院 循環器科)
  • 岡林 均(岩手医科大学 循環器医療センター)
  • 小西 宏明(自治医科大学 中央手術部)
  • 上田 裕一(名古屋大学 心臓外科)
  • 夜久 均(京都府立医科大学 心臓血管外科)
  • 南方 謙二(京都大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
  • 岡村 吉隆(和歌山県立医科大学 第一外科)
  • 大北 裕(神戸大学 心臓外科)
  • 種本 和雄(川崎医科大学 胸部心臓血管外科)
  • 有永 康一(久留米大学 外科)
  • 上嶋 健治(京都大学 EBMセンター)
  • 佐藤 俊哉(京都大学 医療統計学)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 動脈硬化代謝内科)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病研究センター 輸血管理室)
  • 久 容輔(鹿児島大学 心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、CABG手術における糖尿病合併ならびに術前、術中、術直後の血糖コントロールがその予後に及ぼす影響について、多施設共同後ろ向き研究により検討することを目的とした。
研究方法
全国14施設で2007年および2008年に行った単独冠動脈バイパス術(CABG)1522例について検討した。入力データは京都大学EBM研究センターに集積し、統計解析は京都大学医療統計学教室で実施した。
結果と考察
糖尿病の定義は術前に糖尿病と診断されていたもの+術前HbA1c>6.1%とした。糖尿病 (DM群; n=849)とそれ以外 (non-DM群; n=572) の2群に分けて解析を行ったところ、術前・術中・術後血糖値はDM群で146, 172, 168、non-DM群で103, 140, 136といずれの時点でもDM群で有意に高かった (p<0.0001)。術後感染においてはDM群で9.2%とnon-DM群の6.1%に比べて有意に高かった (p=0.036)。その内、深部胸骨・前縦隔感染は、DM群で2.0%、non-DM群で1.1% (p=0.163)とDM群で高い傾向があった。一方、総死亡はDM群2.1%、non-DM群1.1% (p=0.124)とやはりDM群で高い傾向にあった。死亡原因は感染に関連したものが多かった。さらに、off-pump群 (n=983)とon-pump群 (n=438)に分けてサブグループ解析を行った。off-pump 群において、術後感染はDM群 (8.3%)、non-DM群 (6.1%)に差を認めなかったが (p=0.210)、総死亡 (DM:1.5% vs non-DM:0.3%、p=0.053)、術後腎合併症 (DM:1.7% vs non-DM:0.3%, p=0.037) はDM群の方が高かった。一方、on-pump群においては、術後感染はoff-pump群よりも高く、DM群11.3%、non-DM群6.1%とDM群でより高い傾向がみられた (P=0.063)。
結論
糖尿病合併CABG患者では術後感染症を有意に起こしやすく、死亡率の増加に寄与している可能性が示された。また、off-pump手術はDM患者で予想される術後感染の増加を抑制する可能性があるものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201021060B
報告書区分
総合
研究課題名
糖尿病患者における心血管イベント発症に関する後ろ向きコホートに関する研究
課題番号
H21-糖尿病等・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
坂田 隆造(京都大学大学院医学研究科 心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 高梨 秀一郎(財団法人日本心臓血圧研究振興会附属 榊原記念病院 心臓血管外科)
  • 坂東 興(国際医療福祉大学塩谷病院 循環器科)
  • 岡林 均(岩手医科大学 循環器医療センター)
  • 小西 宏明(自治医科大学 中央手術部)
  • 上田 裕一(名古屋大学 心臓外科)
  • 夜久 均(京都府立医科大学 心臓血管外科)
  • 南方 謙二(京都大学大学院医学研究科 心臓血管外科 )
  • 岡村 吉隆(和歌山県立医科大学 第一外科)
  • 大北 裕(神戸大学 心臓外科)
  • 種本 和雄(川崎医科大学 胸部心臓血管外科)
  • 有永 康一(久留米大学 外科)
  • 上嶋 健治(京都大学 EBMセンター)
  • 佐藤 俊哉(京都大学 医療統計学)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター 動脈硬化代謝内科)
  • 宮田 茂樹(国立循環器病研究センター 輸血管理室)
  • 久 容輔(鹿児島大学 心臓血管外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
今回われわれは本邦における冠動脈バイパス(CABG)症例で、糖尿病の合併および術中ならびに術後血糖コントロール状況とその予後を調べることにより、本邦におけるCABG周術期の血糖管理指針を作成するための根拠を得ることを目的とした。
研究方法
全国14施設で2007年および2008年に行った単独CABG手術1,522例を対象に検討した。データの収集は日本成人心臓血管外科データベース機構に予め登録されているデータに、術前、術中、術後の血糖値ならびに術後イベントの詳細を加える形で行なった。入力データは京都大学EBM研究センターに集積し、統計解析は京都大学医療統計学教室で実施した。
結果と考察
糖尿病の定義は術前に糖尿病と診断されていたもの+術前HbA1c>6.1%とした。糖尿病 (DM群; n=849)とそれ以外 (non-DM群; n=572) の2群に分けて解析を行ったところ、術前・術中・術後血糖値はいずれの時点でもDM群で有意に高かった (p<0.0001)。術後感染はDM群で9.2%とnon-DM群の6.1%に比べて有意に高かった (p=0.036)。その内、深部胸骨・前縦隔感染は、DM群で2.0%、non-DM群で1.1% (p=0.163)とDM群で高い傾向があった。一方、総死亡はDM群2.1%、non-DM群1.1% (p=0.124)とやはりDM群で高い傾向にあった。死亡原因は感染に関連したものが多かった。さらに、off-pump群 (n=983)とon-pump群 (n=438)に分けてサブグループ解析を行った。off-pump 群における解析で、術後感染はDM群 (8.3%)、non-DM群 (6.1%)に差を認めなかったが (p=0.210)、on-pump群における解析では、術後感染は、DM群11.3%、non-DM群6.1%とDM群の方でより高い傾向がみられた (P=0.063)。
結論
糖尿病合併CABG患者では術後感染症を有意に起こしやすく、死亡率の増加に寄与している可能性が示された。また、off-pump手術はDM患者で予想される術後感染の増加を抑制する可能性があるものと思われた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021060C

成果

専門的・学術的観点からの成果
糖尿病合併CABG患者では非糖尿病患者に比べて術後感染症を有意に起こしやすく、死亡率の増加に寄与している可能性が示された。実際の血糖コントロールは十分と言えず、治療成績向上には厳重な血糖管理が必要と思われた。本邦では周術期血糖管理ガイドラインがなく、施設間で統一された指針が必要であると考えられた。
臨床的観点からの成果
本邦では欧米に比べてoff-pumpでCABGが行われることが多いが(当該研究では70%)、糖尿病患者におけるoff-pump CABGの成績は死亡率1.5%と極めて良好であった。さらにoff-pump CABG手術はDM患者で予想される術後感染の増加を抑制する可能性があるものと思われ、これまで指摘されていなかったoff-pump CABGの効果として大変注目すべき点と考えられる。
ガイドライン等の開発
本邦には開心術後の血糖コントロールに関するガイドラインは存在しない。血糖管理は予後を左右する重要な因子であるため、今回の結果を参考にしながらさらに検討を重ね、ガイドライン作成のためのデータ収集を行う必要がある。
その他行政的観点からの成果
開心術後の重症感染症である前縦隔炎を合併した場合、入院期間の延長と死亡率の増加を来す。当然治療に要する医療費も増大するため、出来るだけこの合併症を予防することが医療経済的にも肝要である。これまでの研究では周術期の血糖管理を厳重に行えば合併頻度を下げられることが分かっているため、出来るだけ早期にガイドラインを作成するべきであると考えられる。
その他のインパクト
平成22年10月27日、米国における開心術後血糖管理ガイドライン作成に従事した経験をもつ、オレゴン大学のDr. Anthony Furnaryを招へいし、日米合同シンポジウムを開催した。我々の研究成果と米国とのデータを比較しながら問題点を抽出し、今後前向き試験を実施するための活発な議論が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
南方 謙二、坂田 隆造
糖尿病の合併症と心臓血管外科治療
最新内分泌代謝学  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021060Z