わが国における飲酒の実態把握およびアルコールに関連する生活習慣病とその対策に関する総合的研究

文献情報

文献番号
201021050A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国における飲酒の実態把握およびアルコールに関連する生活習慣病とその対策に関する総合的研究
課題番号
H22-循環器等(生習)・一般-013
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
樋口 進(独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上島 弘嗣(滋賀医科大学社会医学講座福祉保健医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,670,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルコール(AL)有害使用による健康・社会への負の影響を低減するための計画策定と基礎資料作成のための調査研究を目的としている。
研究方法
本研究は以下のような多くの調査研究で構成されている。
若年成人等に飲酒状況等をインターネットによる調査
救命救急センター受診外傷患者の飲酒等の調査
うつ病とAL障害の関連を面接調査
飲酒量低減のためのマニュアル作成や人材育成の研修会開催
ALによる社会的損失の推計
一般住民の飲酒、CTによる冠動脈石灰化等、企業勤務男性の飲酒酒種、採血等の調査
人間ドックを受診した男性に横断研究
飲酒量とメタボリックシンドローム(MeS)や頚動脈エコー所見等との関連の検討
関連施設での膵炎患者に関する調査と膵炎発症の危険因子の検討
AL性肝障害患者の生活習慣病・精神疾患との関連を検討
OLETFラットにAL投与の検討、非AL性脂肪肝炎(NASH)患者の飲酒状況を検討
関連施設での重症型AL性肝炎(SAH)の調査、AL性肝硬変(LC)合併高アンモニア血症患者への大建中湯の効果の検討
結果と考察
大量飲酒者では冠動脈石灰化riskが高く、清酒はγ-GTP高値へ影響が強かった。飲酒量増加で脂肪肝は低下し、肥満、脂質異常、喫煙が脂肪肝発生に関与し、飲酒量は関連しなかった。飲酒量増加で内臓脂肪量、頚動脈プラーク有病率、虚血性心疾患や脳血管障害発症率も増加した。急性膵炎では40-79g飲酒者のオッズ比1.7、80g以上3.4、慢性膵炎では、40-79g4.2、80g以上12.0であった。男性LCは非LCより肥満の頻度が低く、女性LCの47%が精神疾患を合併した。OLETFラットはAL投与で肝小葉80%以上に脂肪沈着を認め、NASH全例禁酒によりAST、ALT、γGTP値が正常化した。SAH生存例で好中球除去療法(GCAP)施行率が高く、大建中湯はALCを合併した高アンモニア血症患者に有効であった。
結論
大量飲酒は冠動脈石灰化の危険因子で、清酒はよりγ-GTP高値への影響が強い事が示唆された。脂肪肝の予防に肥満、脂質異常、喫煙を考慮した生活指導が重要である。基礎疾患合併で40g/日以下飲酒でも、MeSや動脈硬化進展に悪影響を及ぼす可能性がある。飲酒により膵炎のriskが上昇し、喫煙がAL性膵炎発症・進行促進する可能性がある。精神疾患は女性ALDの最大要因で、ALDは生活習慣病の肝病態進展に大きな影響を与えなかった。少量飲酒でもNASHを生じる可能性がある。GCAPはSAHに有効と考えられ、大建中湯はALC合併肝性脳症再発予防に有用な可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021050Z