行動変容理論に基づく効率的かつ効果的な特定保健指導手法の疫学的エビデンスとITを援用した開発

文献情報

文献番号
201021009A
報告書区分
総括
研究課題名
行動変容理論に基づく効率的かつ効果的な特定保健指導手法の疫学的エビデンスとITを援用した開発
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
梶尾 裕(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 国際臨床研究センター)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院 )
  • 森田 明美(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 本田 佳子(女子栄養大学 栄養学部)
  • 岡崎 研太郎(国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室)
  • 泉 和生(財団法人 国際協力医学研究振興財団)
  • 本田 律子(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部 )
  • 奥田 昌之(山口大学 理工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ハイリスク者に対する対面式の保健指導の問題点を克服するために、行動療法理論やIT等の利用を考慮した効果的で効率的な指導方法を開発し、医療経済や疫学の面からも検証することである。本研究班では、保健指導を効率よく、効果的に進めるための現場の保健師などが利用可能なITを用いた補助ツールの作成を目的としている.
研究方法
本年度(最終年)は、2年次に開発した支援ツールの初期モデルを改善、強化し、その効果や効率性について検証を行った。8月までに、支援ツールの初期モデルのプログラムや機能を改善、強化を行い、その後、この改善ツールを用い、新宿区保健所、マツダ防府工場、下関大丸を研究協力施設として、対象者をツール使用群と非使用群に分けて介入比較試験を実施し、その結果(中間結果、および6ヶ月後の最終結果)を検討した。
結果と考察
支援ツールの初期モデルのプログラムや機能の改善、強化点として、1)検診データの自動取込、2)行動目標からのカロリー自動計算機能、3)カロリーデータベース管理機能の付加を行った。本研究の対象者は総計で114名(ツール使用群75名、非使用群39名)。新宿区と山口、また、男女によって食習慣・食行動、運動習慣・活動度、行動様式が異なり、指導内容も個人に合わせた指導が必要となった。初回面談時間は、使用群と非使用群とで差はなかったが、報告書は、使用群では指示入力により直ちに自動的に作成され、効率的だった。6ヶ月面談参加率は、使用群27%、非使用群10%と差があったが、体重や腹囲の減少量や、栄養・食生活や身体活動の改善の具合には明らかな差は見いだせなかった。6ヶ月後の体重と腹囲はいずれも3ヶ月後の中間調査時より増加していた。本ツールは、指導する側には、報告書作成の負担軽減、熱量の自動計算、保健指導が一定水準を保つ点で有用であるが、指導される側には大きなメリットはなかった。これは、行動変容の点から、特定保健指導の指導方法自体の問題点を示しており、ITツールに短期的・長期的結果による制御機能をさらに付加する必要である。
結論
今回開発した保健指導支援ツールは、指導側の効率には役立つが、行動変容理論や医療経済の面から、さらに改善、確立する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201021009B
報告書区分
総合
研究課題名
行動変容理論に基づく効率的かつ効果的な特定保健指導手法の疫学的エビデンスとITを援用した開発
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
梶尾 裕(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 野田 光彦(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 国際臨床研究センター)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院 )
  • 森田 明美(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 本田 佳子(女子栄養大学 栄養学部)
  • 岡崎 研太郎(国立病院機構京都医療センター 臨床研究センター 予防医学研究室)
  • 泉 和生(財団法人 国際協力医学研究振興財団)
  • 本田 律子(独立行政法人国立国際医療研究センター病院 糖尿病・代謝症候群診療部 )
  • 奥田 昌之(山口大学 理工学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ハイリスク者に対する対面式の保健指導の限界や問題点を明らかにし、行動療法理論やIT等の利用を考慮した効果的で効率的な指導方法を開発し、効果や効率について検証することである。本研究班では、保健指導を効率よく効果的に進めるように現場の保健師などが利用可能なITを用いた補助ツールの作成を目的としている。
研究方法
1年次には保健指導の問題点を既存の介入研究の検討や医師および糖尿病療養指導士を対象にしたアンケートで検討し、2年次は支援ツールの初期モデルを開発し試行し、プログラムの利点及び改善点について意見を集約した。最終年は、2年次に開発した支援ツールを改善、強化し、実際の現場で運用して、その効果や効率性について検証を行った。
結果と考察
1年次には、保健指導の問題点とともに指導の類型化、食事指導や運動指導の進め方、行動変容理論から見たITの保健指導の在り方が明らかになった。2年次は、実際の保健指導に則して行動療法にもとづく支援プログラムの初期モデルをDVDの形で開発し、試行によって改善点を明らかにした。最終年は、改善したツールを用いて、新宿区保健所、マツダ防府工場、下関大丸で総計114名(使用群75名、非使用群39名)に実施した結果、指導する側にとっては、報告書作成の負担軽減、熱量の自動計算、指導者のレベルにかかわらず一定水準を保った保健指導が担保される点で有用であるが、指導される側にとっては、ツール使用群が有意に勝っているという結果は得られなかった。これは、行動変容の点から、ツールの問題というよりは特定保健指導の指導方法そのものに内在する問題と考えられ、短期的・長期的結果による制御という観点からの工夫が必要と考えられた。
結論
今回開発した保健指導支援ツールは、指導側の効率には役立つが、指導を受ける側に対して行動変容をさらに取り入れたITによるさらなる継続的なツールの開発の必要性が明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2011-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201021009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生活習慣が関与する糖尿病などの疾患において、具体的な生活改善の目標設定やモニター法、さらに指導の標準に関する情報を提供した。さらに、生活習慣改善指導の評価について、その方法や、費用対効果の評価についての学術的な観点からの検討を行った。
臨床的観点からの成果
平成20年4月から始まった特定保健指導を、少しでも効率よくそして効果が現れるように進めるために、現場の保健師などが利用可能なITを用いた補助ツールを完成させた。特に、本ツールのそれぞれの部分で開発した機能は、それぞれ独自に使用することも可能であり、効果的で効率的な指導のための標準的手法としての汎用性が高い。
ガイドライン等の開発
本研究の結果は、現在進行中の特定保健指導のアウトラインの変更を促すものであり、今後の指導のガイドライン作成、あるいは改訂に参考にあるものを提供している。
その他行政的観点からの成果
行動変容理論やIT利用の立場から、現在進行中の特定保健指導の問題点を明らかにして、より有効な指導形態の改善の方向性を示した。さらに、一連の生活習慣改善指導の評価方法の検討と合わせて、行政面において、生活習慣病関連の疾患の予防や治療の手法の均てん化を政策決定する際に、重要かつ有用な情報を提供した。
その他のインパクト
間接的に期待される社会的成果として、1)保険者や市町村等の「保健指導」の実施団体に対して、アウトカム評価を可能とする有益な情報を提供し、2)保健指導を直接担う保健師や管理栄養士等の医療関係者に対しても指導手法の具体的で明確な目標を提示し資質の向上に寄与し、3)産業界に対しては「保健指導」の進むべき具体的な方向性を示し、3)国民に対して保健指導についての理解を深め、総合的な生活習慣病対策の促進に寄与している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
内分泌糖尿病科26:432,2008(岡崎)
原著論文(英文等)
2件
Biopsychosoc Med 11;1,2010(熊野) Diabetes Care 33:2016(新保)
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
第9回日本糖尿病病情報学会(2009.8、梶尾) 第29回日本肥満学会(2008.10,森田)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201021009Z