がん性疼痛治療の施設成績を評価する指標の妥当性を検証する研究

文献情報

文献番号
201020083A
報告書区分
総括
研究課題名
がん性疼痛治療の施設成績を評価する指標の妥当性を検証する研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-036
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
的場 元弘(国立がん研究センター 中央病院 緩和医療科・精神腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部衛生学 公衆衛生学教室)
  • 東 尚弘(東京大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学)
  • 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻緩和ケア看護学分野)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 秋山 美紀(慶應義塾大学 総合政策学科 ヘルスコミュニケーション)
  • 吉本 鉄介(社会保険中京病院 緩和ケアチーム)
  • 冨安 志郎(長崎市立市民病院 麻酔科診療部)
  • 岩瀬 哲(東京大学医学部付属病院)
  • 山口 拓洋(東北大学病院 医学統計学 医学研究支援)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
18,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん疼痛は患者QOLを著しく低下させており、治療成績の向上は最重要課題である。
この課題達成を迅速化・効率化する妥当な施設単位の成績指標が必要である。
国際的標準治療法WHOガイドラインによる、がん疼痛治療成績のプロセスとアウトカムを多施設で多元的に評価できる指標を検討する。
研究方法
初年度は、全評価プロトコル作成に向けて、臨床現場で継続評価可能な除痛率の定義の確定と、 調査項目及び抽出するサンプルの妥当性、疼痛評価とQOLの関連、アウトカム指標として「がん疼痛治療への満足度」、プロセス評価として施設麻薬消費量の多施設予備調査、患者家族の要求 情報収集のための調査、方法の決定を行う。
結果と考察
除痛を、専門家パネルの合意形成に従って定義した。除痛されている状態とは、患者が痛みがなくなった、あるいは日常生活の中で痛みの影響をほとんど意識しない程度に軽減していると感じる状態が一定期間続いていることであり痛みを我慢している状態は十分な除痛ではなく痛みの治療を望まないという患者も、除痛には含まないと結論した。
予備調査を名古屋・長崎地区で実施し、疼痛治療の満足度は、2施設において緩和ケア供給体制の改善指標となっていた。予備的推計として、がん性疼痛適応消費が施設の総麻薬消費量の中に占める割合は、がん診療拠点病院では85%前後であることが示された。
診療報酬請求明細書の分析対象として、がん患者の約5分の1が何らかの鎮痛薬を使用しており、さらにその5分の1が麻薬鎮痛薬を使用していた。
市民の求めるがん疼痛関連情報としては、正しい知識、痛み治療の専門家の所在、専門家へのアクセスといったより具体的な情報が必要とされていた。また、痛みの表現方法・伝え方も重要な要素であった。情報収集手段は、世代によって異なっており、日本におけるがん患者の情報探索行動を考慮した方法が必要である。
結論
施設単位での除痛率については世界的にも明確な定義がなく、研究班としての定義を決定した。 次年度は施設単位での除痛率の測定研究を実施する。本研究の除痛率調査の結果は、WHOガイドラインが示す疼痛治療成績との比較が可能になり、医療機関側の緩和ケアへの対応によって、除痛率の改善や悪化の傾向が可視化されることに意義がある。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201020083Z