緩和ケアプログラムによる地域介入研究

文献情報

文献番号
201019062A
報告書区分
総括
研究課題名
緩和ケアプログラムによる地域介入研究
課題番号
H18-3次対がん・戦略-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
江口 研二(帝京大学 医学部内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 秋月 伸哉(千葉県がんセンター 精神腫瘍学)
  • 秋山 美紀(慶応義塾大学大学院 政策メディア研究科)
  • 梅田 恵(株式会社緩和ケアパートナーズ)
  • 江角 浩安(国立がん研究センター東病院)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 川越 正平(あおぞら診療所)
  • 木澤 義之(国立大学法人筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 木下 寛也(国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 志真 泰夫(筑波メディカルセンター病院 緩和治療科)
  • 白髭 豊(医療法人白髭内科医院)
  • 武林 亨(慶応義塾大学 医学部 衛生学 公衆衛生学)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター)
  • 的場 元弘(国立がん研究センター 緩和医療科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護分野)
  • 山川 宣(国家公務員共済組合連合会六甲病院 緩和ケア科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
146,580,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)緩和ケアの標準化と継続性の向上、2)がん患者・家族に対する適切な緩和ケアの知識の提供、3)地域の緩和ケアの包括的なコーディネーション、4)緩和ケア専門家による診療およびケアの提供、を中心とする地域単位の緩和ケアプログラムの整備により、QOLの指標である、1)患者による苦痛緩和の質評価が改善し、2)遺族による苦痛緩和の質評価が改善し、3)緩和ケア利用数が増加し、4)死亡場所が患者の希望に近く変化するかを評価する。
研究方法
4地域の住民を対象とした地域介入による前後比較研究。
結果と考察
介入後調査の主要評価項目として、患者による評価 (855名) 、専門緩和ケアサービスの利用数 を取得した。4地域のがん患者の死亡場所について、人口動態統計の目的外使用から取得した。副次評価項目として、地域医療者の困難感・知識 、地域の緩和ケアの質指標 として、オピオイド処方量 、麻薬免許を取得している診療所医師数などを取得した。
結論
地域介入研究の3年目として予定されていた介入をすべて終了し、予定されていた介入後調査を終了した。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201019062B
報告書区分
総合
研究課題名
緩和ケアプログラムによる地域介入研究
課題番号
H18-3次対がん・戦略-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
江口 研二(帝京大学 医学部内科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 秋月 伸哉(千葉県がんセンター 精神腫瘍科)
  • 秋山 美紀(慶應義塾大学 総合政策学部)
  • 梅田 恵(株式会社緩和ケアパートナーズ)
  • 江角 浩安(国立がん研究センター東病院)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報・統計部)
  • 川越 正平(あおぞら診療所)
  • 木澤 義之(国立大学法人筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 木下 寛也(国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
  • 志真 泰夫(筑波メディカルセンター病院 緩和治療科)
  • 白髭 豊(医療法人白髭内科医院)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部 衛生学 公衆衛生学)
  • 平井 啓(大阪大学 コミュニケーションデザイン・センター)
  • 的場 元弘(国立がん研究センター 緩和医療科)
  • 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護分野)
  • 山川 宣(国家公務員共済組合連合会六甲病院 緩和ケア科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域での緩和ケアの普及が求められているが、患者アウトカムを含めた地域緩和ケアプログラムの効果を評価した地域介入研究は国際的にもない。本研究の目的は、地域の緩和ケアプログラムにより、地域のがん患者のQuality of Lifeが向上するかどうかを評価することである。
研究方法
4地域において地域介入による前後比較研究を行った。介入は、緩和ケアの標準化と継続性の向上、患者・家族に対する適切な緩和ケアの知識の提供、地域の緩和ケアの包括的なコーディネーション、緩和ケア専門家による診療およびケアの提供を含む包括的なプログラムを設定した。主要評価項目として、患者による苦痛緩和の質評価(Care Evaluation Scaleの身体的・精神的ケアドメイン)、遺族による苦痛緩和の質評価(Care Evaluation Scaleの身体的・精神的ケアドメイン)、専門緩和ケアサービスの利用数、死亡場所を設定した。副次評価項目として、患者の疼痛・quality of life、遺族から見た患者のquality of life、医療者の知識・困難感・実践、および、地域の緩和ケアの質指標を設定した。
結果と考察
2011年までに、遺族調査、2010年の専門緩和ケアサービスの利用数と死亡場所以外の介入後調査が計画通りに終了した。自宅死亡率は、介入前6.8%から、介入後1年目に8.6%、2年目に9.6%に有意に増加した(P<0.001)。増加率は全国平均(10%)の4倍であった。専門緩和ケアサービス利用数は、介入前31%から、介入後1年目に34%、2年目に50%に有意に増加した(P<0.001)。患者による苦痛緩和の質評価の平均得点は、4.43±1.08から4.57±0.97に有意に増加した(P=0.0052, n=859, 855)。医師による身体的ケア、看護師による身体的ケア、精神的ケアのいずれも改善した。医師の緩和ケアに関する知識・困難感・実践、および、看護師の緩和ケアに関する知識・困難感・実践のいずれも有意に改善した。
結論
我が国において、緩和ケア領域においても、大規模な患者アウトカムを含む臨床試験が実施可能であることが示された。本研究は緩和ケアの地域介入研究としては国際的にも最大規模のものである。介入プログラムは、自宅死亡の増加、専門緩和ケア利用の増加、患者からみた苦痛緩和の質、および、医師・看護師の緩和ケアについての知識・困難感・実践を改善する可能性が示された。付帯研究とあわせて、我が国の地域緩和ケアをすすめるための指針を得ることができると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201019062C

成果

専門的・学術的観点からの成果
患者アウトカムを含む緩和ケアプログラムの有効性を検証した地域介入研究として国際的に最大規模である。緩和ケア領域では患者自身の評価が最も重要であるが、取得が困難であることから、これまでに行われた研究では死亡場所や緩和ケアサービスの利用数が指標として用いられてきた。本研究では、それらに加え、1000名の患者調査、遺族調査、3000名の医師・看護師調査を同時に行うことに成功した。多角的な分析が可能な国際的に最大規模の研究であり、我が国の緩和ケア領域においても大規模な臨床研究が可能であることが示された。
臨床的観点からの成果
効果が検証された地域緩和ケアプログラムのすすめ方が具体的に記述されることにより、臨床的に有用なプログラムを全国で実施することが可能になる。また、緩和ケアについての医師・看護師対象の教育、患者・家族への情報提供、地域対象の相談窓口や緩和ケアチーム、地域カンファレンスや退院支援などの地域連携といったこれまでほとんど知見がないままに行われていた各プログラムの有用性が評価され、プログラムを改善することに役立つと考えられる。
ガイドライン等の開発
我が国ではがん対策基本法に基づいて緩和ケアを地域に普及させることが求められているが、ガイドラインや指針は作成されていない。その理由として最も大きいものは、有効な地域緩和ケアプログラムに関する知見がほとんどないことがあげられる。本研究は、地域緩和ケアのすすめるためのエビデンスにしたがったガイドラインを作成するための知見を提供する我が国で唯一設定されている大規模研究である。本研究終了後に知見に基づいたガイドラインが作成可能になる
その他行政的観点からの成果
本研究は、緩和ケアの推進を達成するため、がん対策のための戦略研究(行政のニーズにより計画され、その成果を「国民の健康に関する課題」や「国民生活の安心・安全に関する課題」を解決するために使用されることを前提として実施されるアウトカム研究)として開始した。本研究成果は行政および診療に広く生かされることが期待されている。本研究で作成したマテリアルは既に公開されており、緩和ケアの診療に広く活用され、緩和ケアの推進に大いに貢献している。
その他のインパクト
研究最終年度の2011年1月に公開でシンポジウムを行い、介入地域4地域の実務担当者と研究者あわせて約100名でグループディスカッションなどを行った後、政府の審議会である「がん対策推進協議会」の委員を務めている患者会代表者などとの討論を行った。研究は、研究期間中合計40回の新聞報道を受けた。

発表件数

原著論文(和文)
28件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
53件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hiroki Fukahori, Mitsunori Miyashita, Tatsuya Morita, et al.
Administrators' Perspectives on End-of-Life Care for Cancer Patients in Japanese Long-Term Care Facilities
Support Care Cancer ,  (17) , 1247-1254  (2009)
原著論文2
井村千鶴、藤本亘史、野末よし子他
緩和ケアチームによる診療所へのアウトリーチプログラムの有用性
癌と化学療法 , 37 (5) , 863-870  (2010)
原著論文3
鄭陽、井村千鶴、野末よし子他
地域における講義とグループディスカッションを複合した多職種セミナーの有用性
ペインクリニック , 30 (11) , 1553-1563  (2009)
原著論文4
井村千鶴、古村和恵、末田千恵他
地域における緩和ケアの連携を促進する取り組み フォーカスグループの有用性
緩和ケア , 20 (2) , 204-209  (2010)
原著論文5
井村千鶴、古村和恵、 末田千恵他
地域における緩和ケアの連携を促進する取り組み フォーカスグループの有用性(2)
緩和ケア , 20 (3) , 308-312  (2010)
原著論文6
井村千鶴、古村和恵、 末田千恵他
地域における緩和ケアの連携を促進する取り組み フォーカスグループの有用性(3)
緩和ケア , 20 (4) , 417-422  (2010)
原著論文7
井村千鶴、古村和恵、野末よし子他
浜松市のがん患者に対するケアマネジメントの実態調査
緩和ケア , 20 (1) , 92-98  (2010)
原著論文8
秋山美紀、的場元弘、武林亨他
地域診療所医師の在宅緩和ケアに関する意識調査
Palliative Care Research , 4 (2) , 112-122  (2009)
原著論文9
赤澤輝和、野末よし子、井村千鶴他
緩和ケアについての市民・患者対象の啓発介入の実態調査
Palliative Care Research , 5 (2) , 171-174  (2010)
原著論文10
井村千鶴、野末よし子、伊藤富士江他
がん患者に対する介護保険手続きの迅速化の効果
緩和ケア , 21 (1) , 102-107  (2011)
原著論文11
赤澤輝和、川崎由実、山田博英他
緩和ケアの啓発用冊子を病院内のどこに置いたらよいのか?
緩和ケア , 21 (2) , 221-225  (2011)
原著論文12
伊藤富士江、井村千鶴、森田達也
がん在宅緩和医療の課題と解決策に関する診療所医師を対象とした訪問調査
緩和ケア , 20 (6) , 641-647  (2010)
原著論文13
Kenji Eguchi
Development of palliative medicine for cancer patients in Japan: From isolated voluntary effort to integrated multidisciplinary network.
Jpn J Clin Oncol , 40 (9) , 870-875  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019062Z