トリプルネガティブ乳がんに対する創薬と治療の最適化

文献情報

文献番号
201019040A
報告書区分
総括
研究課題名
トリプルネガティブ乳がんに対する創薬と治療の最適化
課題番号
H22-3次がん・一般-023
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田村 研治(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 康弘(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
  • 増富 健吉(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所)
  • 高田 江里子(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所)
  • 小泉 史明(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所)
  • 津田 均(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
  • 木下 貴之(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
22,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ホルモン非依存性HER2陰性乳がんは、「トリプルネガティブ(以下TNB)」と呼ばれ、乳がん全体の20%を占めるが、既存のホルモン療法HER2阻害剤に対し抵抗性であり、他の亜型と比較して予後不良である。
本研究班は、TNBに対する、標的分子の異常を指標とした個別化治療の確立を目標とする。そのため、1)細胞株を用いた標的分子の同定と抗腫瘍薬のスクリーニング、2)臨床検体を用いた標的分子異常の検出、臨床効果との相関の検討、3)前向き臨床試験を用いた治療法の最適化を試みる。
研究方法
TNB細胞株・乳がん検体を用いた大規模前向き臨床研究、後ろ向き臨床研究などから得られた乳がん検体を用いて、トリプルネガティブ乳がん(TNB)の増殖能、薬剤感受性などに直結する分子を同定することを研究目標とした。
結果と考察
①TNBにおけるmTOR阻害剤(エベロリムス)の感受性を規定する分子の同定
②TNBにおけるPARP阻害剤(オラパリブ)の感受性を規定する分子の同定
④TNBの術前化学療法のPDとnon-PDを規定する因子の病理学的探索
⑧乳がん組織検体でのNS発現量の測定(RT-PCR, 免疫組織染色)
⑨TNBにおける白金製剤の有用性を検証と感受性を規定する分子マーカーの同定
結論
TNBを創薬に直結する機能的に分類することが可能となった。
1)Basal marker陽性TNBであり、エベロリムスに対する感受性は非常に高い結果となった。TNBに対して高感受性を示す分子標的薬剤がほとんどない現状では、この結果は期待できる。
2)BRCAの機能が低下したTNBであり、PARP阻害剤に高い感受性を示した。TNB臨床検体を用いた解析では、TNBではBRCA1のメチル化が高頻度に存在していることが判明し、BRCA胚細胞変異がある「家族性乳がん」でなくとも、PARP阻害剤などのDNA修復酵素を標的分子とした薬剤が期待できることが予想された。
3)がん幹細胞、EMT-rich なTNBであり、従来型の抗がん剤、シグナル伝達系タンパク質阻害剤、PARP阻害剤などにもきわめて抵抗性である。これらの創薬に直結する機能的な分類が次第に判明してきた。

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201019040Z