文献情報
文献番号
201015021A
報告書区分
総括
研究課題名
新規治療法が開発された小児希少難病の疫学調査と長期フォローアップ体制の確立
課題番号
H20-臨床研究・一般-011
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
奥山 虎之(独立行政法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
研究分担者(所属機関)
- 遠藤 文夫(熊本大学 医学薬学研究部)
- 中村 公俊(熊本大学 医学薬学研究部)
- 田中 あけみ(大阪市立大学大学院 医学研究科)
- 鈴木 康之(岐阜大学医学部医学教育開発研究センター)
- 加藤 俊一(東海大学医学部基盤診療学系)
- 矢部 普正(東海大学医学部基盤診療学系)
- 掛江 直子(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 )
- 衛藤 義勝(東京慈恵会医科大学 遺伝病研究講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
これまで有効な治療手段がなかったライソゾーム病の一部の疾患で、酵素補充療法が開発された。種々の臨床症状の改善が得られるが、中枢神経症状に対して効果が期待できない、病態の進行した症例での治療効果が乏しい、莫大な費用がかかる、などの問題があり、酵素補充療法開発以前の唯一の治療法であった造血幹細胞移植を再評価する動きもある。このような背景を考慮して、本研究を進めた。
研究方法
1:ファブリ病のスクリーニング法の開発とパイロット研究の実施 2:ポンペ病のスクリーニング法の開発とパイロット研究の実施 3:NAG(中性αグルコシダーゼ)活性 3:ムコ多糖症II型に対する造血幹細胞移植の後方視的検討 4:ムコ多糖症IV型のわが国における実態調査。
結果と考察
酵素補充療法は、発症早期あるいは発症前から治療を開始するこることにより、その効果を最大限に引き出すことができる。酵素補充療法の開発前から導入されている治療法として造血幹細胞移植がある。欧米を中心に、適応が認められていなかったムコ多糖症II型に対して、わが国では、相当数のムコ多糖症患者に造血幹細胞移植が行われ、一定の効果があるとされていたが、実態は不明であった。本研究で行った調査により、造血幹細胞移植には限界はあるものの明らかな効果が認められた。酵素補充療法はまだ始まって日が浅いため、これと比較することは難しいが、少なくとも同等の効果があると思われた。今後、造血幹細胞移植の前向き臨床研究で同治療法の効果や酵素補充療法との比較研究を実施する必要がある。
結論
早期発見のための新生児マススクリーニング法の開発をファブリ病およびポンペ病で検討した。技術的な問題は解消し、パイロット研究の段階に至ることができた。しかし、どちらの疾患でも、酵素活性の測定値が正常下限であるが疾患を発症しないPseudodeficiencyの存在も明らかとなった。今後、これらの症例の取扱いは全国レベルでの本格的なスタートにむけて克服すべき重要課題となる。また、欧米ではあまり行われないムコ多糖症II型の造血幹細胞移植の効果について、後方視的な検討を加えた結果、酵素補充療法とほぼ同様な効果があることが示された。酵素補充療法には、高額な治療や週1回の通院の必要性などの問題もあり、造血幹細胞移植も選択肢に加えた形での治療選択に関するガイドラインの必要性が示唆された。さらに、ムコ多糖症IV型の自然歴調査により酵素補充療法の臨床試験の必要性が認識されるに至り、次年度中に予定されている国際共同治験に日本が参加できることが確定した。
公開日・更新日
公開日
2011-09-21
更新日
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