人工赤血球のICU使用を目的とした最適化およびME技術の改良

文献情報

文献番号
201009003A
報告書区分
総括
研究課題名
人工赤血球のICU使用を目的とした最適化およびME技術の改良
課題番号
H20-政策創薬・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純三(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 陽太郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 小松 晃之(中央大学 理工学部)
  • 冨田 裕(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではICU管理と極めて密接な関係があり、人工赤血球投与の想定に際して必ず問題となると考えられる合併症や管理方法から幾つかの実験モデルの構築を目指し、検討を行った。
研究方法
本研究では、(I) ICUにて出血性ショックに、或は術後に際し投与することを想定し、特に、合併症として外科的措置後に併発することの多いSIRSに対する影響と可能であればその度合いを軽減する人工赤血球の物性開発を検討する。また出血性ショック時の脳微小循環維持効果を検討する。さらにICU管理において高頻度に見られる人工呼吸器管理のもとに人工赤血球を投与した場合の特に肺への影響を検討する。また人工酸素運搬体としてのアルブミンヘムを検討する。
結果と考察
①検討した交換率ではHb小胞体投与のVILIへの悪影響は明らかではなく、また5%アルブミン分散液に比べVILIを軽度軽減する可能性が示唆された。
②限局性腹膜炎惹起モデルにおける肺組織所見の評価を試みた。腸間膜リンパ節に比べ組織学的変化はより顕著であり、評価方法として有用である可能性が示唆された。また肺組織のDNAチップ解析ではStefin Aの上昇が顕著であった。
③本研究では、生体内で酸素輸送のできる新しい人工酸素運搬体の開発を目的とし、HbにHSAを結合したHb/HSAn複合体(n=1~4)を合成し、その構造、物性に関する検討を行った。Hb/HSAn複合体の等電点は5.1~5.2と低く、粒径はHSA結合数に伴い増加した。
④全身血圧・脳表の酸素分圧値は、脱血後有意に減少し、再注入にて有意に回復した。一方、脱血後、人工赤血球の投与時には、脳表酸素分圧は回復後持続した。脱血後の生理食塩水の投与により、脳表酸素分圧は一過性に上昇したのみであった。人工赤血球投与は出血性ショック時などの際の微小脳循環障害を改善する可能性が示唆された。
結論
本研究から得られる成果は、人工赤血球をICUで合併症を有する症例に安全に有効に使用するための指針作製に繋がる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201009003B
報告書区分
総合
研究課題名
人工赤血球のICU使用を目的とした最適化およびME技術の改良
課題番号
H20-政策創薬・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
武田 純三(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 陽太郎(慶應義塾大学 医学部)
  • 宗 慶太郎(早稲田大学 理工研)
  • 東 寛(北海道赤十字血液センター )
  • 小松 晃之(中央大学 理工学部)
  • 冨田 裕(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人工赤血球、Hb小胞体、に関する製造技術および安全性に関する研究が現在進行中である。期限切れ赤血球より精製した高純度・高濃度ヒトヘモグロビン(Hb)を、リン脂質小胞体に内包したHb小胞体(平均粒径250nm)の基本物性と製造法に関する基礎技術はほぼ確立されている。さらに、生体に投与した際の安全性に関する研究、および救急医療への応用に関する研究が厚生労働科学研究として行われてきた。製造技術の移転が完了し、GMP製造、非臨床・臨床試験の準備が進行中である。
一方、人工赤血球、Hb小胞体の実際の臨床応用は、集中治療室(Intensive Care Unit: ICU)において合併症を併発した状態においての使用が多く想定され、正常な生体への投与とは異なった影響が考えられる。
研究方法
このような状況を踏まえて、本研究ではICU管理と密接な関係にある合併症や管理方法の中から、人工呼吸器管理、出血性あるいは炎症性のショック(systemic inflammatory response syndrome(SIRS))、におけるHb小胞体の使用を想定し、それぞれ動物モデルを用いた検討を行った。
結果と考察
①Hb小胞体投与のVILIへの悪影響は明らかではなかった。また5%アルブミン分散液に比べVILIを軽度軽減する可能性が示唆された。
②限局性腹膜炎惹起モデルにおける肺組織所見の評価は腸間膜リンパ節に比べ組織学的変化はより顕著であり、評価方法として有用である可能性が示唆された。今後これらのモデルに人工赤血球投与を行うことにより、SIRS状態における投与を想定したモデルが構築可能と考えられた。
③少なからず薬剤とHbを内包するリポソームとの間に相互作用があることが示唆された。しかしながら,その減少はHbV 40%で3時間混和したプロプラノロールおよびハロペリドールでみられた約30%が最も大きな変化であり,臨床上問題にはならないことが明らかとなった.
④人工赤血球投与は出血性ショック時などの際の微小脳循環障害を改善する可能性が示唆された。
結論
ICUで遭遇する様々な基礎疾患あるいは様々な薬剤やモニタリング機器と人工赤血球特にヘモグロビン小胞体との相互作用に関する基礎的な知見が蓄積された。

公開日・更新日

公開日
2011-09-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201009003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究ではICUにおいて想定される病態および疾患管理方法として人工呼吸器管理下における肺への影響、出血性ショック、脳微小循環への影響、さらにヘモグロビンを基盤とした人工酸素運搬体アルブミンーヘムの基礎的物性を検討した。さらなる検討が必要であるが、いずれの使用状況においても人工赤血球、Hb小胞体の有用性が示唆された。
臨床的観点からの成果
人工赤血球、特にHb小胞体の臨床試験に向けて有用なデータが得られた。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
輸血代替物開発に関する基礎的知見を集積した。
その他のインパクト
ICUという特殊な環境における輸血代替物に関する基礎的研究は少ない。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009003Z