貧血用漢方薬の作用メカニズム解析と有効成分の同定

文献情報

文献番号
201008022A
報告書区分
総括
研究課題名
貧血用漢方薬の作用メカニズム解析と有効成分の同定
課題番号
H22-創薬総合・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 大介(九州大学大学院医学研究院 SSP造血幹細胞分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
貧血疾患の治療では、造血因子の導入、免疫抑制剤の開発、造血幹細胞移植療法開発により、治療成績が飛躍的に向上したが、未だ治療が奏功しない難治性貧血が存在する。一部の難治性貧血に漢方薬が奏功し、症状の緩和・検査データの改善を認めるものの、その作用機序解明は発展途上である。本作用機序の解明は、難治性貧血の新規治療薬開発へ貢献する。そこで、貧血用漢方薬として代表的な四物湯類を添加培養し、細胞増殖を指標に赤血球系造血へ与える影響を検討した。
研究方法
人参養栄湯、四物湯、十全大補湯、大防風湯の4種類の漢方薬を実験に用いた。各粉末0.25gを3mLの滅菌水に加え、ボルテックスにて混合した。60℃の湯浴にインキュベートし、溶解するまで15分毎に振とうした。その後、漢方溶解液を5000rpmで5分遠心し、上清のみ0.45μm孔フィルターを通過させた。漢方溶解液の保存濃度は500 μg/mlとし4℃で保存した。骨髄細胞はC57BL/6 (B6) マウスの大腿骨から回収した。細胞はその後、27ゲージ針をゆっくり通し、2% FBS/PBSで2回洗浄した。骨髄細胞は1.0 x 107cells/mlで調整した。 Lympholyte-Mにより単核球を調整後、1x106 cell/ mlの細胞密度で48穴培養プレートに播種、37℃, 5% CO2にて培養した。培養後の細胞において、トリパンブルー染色を行い、生細胞を計測した。またフローサイトメーターにより細胞表面抗原の解析、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を行った。
結果と考察
 漢方は日本の臨床現場で、患者へ投与されている。血液学の分野では人参養栄湯、四物湯、十全大補湯、大防風湯は貧血患者へ処方されている。しかしながら、これら漢方薬の効果をもたらす分子メカニズム解明は発展途上である。この問題に取り組むため、漢方薬をin vitro培養へ添加し、IL-3, EPO, SCF等の造血サイトカインなしで培養した。4種類の漢方薬のうち、人参養栄湯は培養8日目でCD71(増殖マーカー)陽性生細胞数を増加させた。一方、十全大補湯は培養11日目でTer119(成熟赤血球マーカー)陽性細胞を増加させた。リアルタイムPCRによる赤血球造血関連遺伝子の解析で、人参養栄湯、十全大補湯添加培養後、変化が認められた。しかしながら、人参養栄湯、十全大補湯に比べ、四物湯、大防風湯添加で、細胞の表現型・遺伝子発現がわずかに変化した。今後、その分子メカニズム解明が期待される。
結論
サイトカイン非存在下において、人参養栄湯は細胞増殖を促進し、十全大補湯は赤血球分化を促進する事が明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008022Z