新規生理活性ペプチドにより分化を抑制したヒト造血幹細胞増幅法の開発

文献情報

文献番号
201006017A
報告書区分
総括
研究課題名
新規生理活性ペプチドにより分化を抑制したヒト造血幹細胞増幅法の開発
課題番号
H21-再生・若手-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 大介(九州大学大学院医学研究院 SSP造血幹細胞分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞の生理的増幅部位であるマウス胎仔肝臓に発現するタンパク質を元に、分化を抑制する新規生理活性ペプチドKS-13を考案した再生医療分野におけるKS-13の有効性と危険性を評価するため、以下の研究を推進した。
Aim1:KS-13を用いたヒト臍帯血造血幹細胞作製・増幅法の開発及び安全性の評価
Aim2:KS-13作用メカニズムの解析
研究方法
Aim1
多能性幹細胞への応用検討。
(1)造血幹細胞分化誘導のためのiPS細胞株種の選定。
(2)新規造血幹細胞発生マーカーの同定。
(3)造血幹細胞分化誘導のための外因的制御因子の同定と機能解析。
(4)多能性幹細胞からの造血幹細胞分化誘導。
*他の組織特異的幹細胞への応用検討。
(1)マウス間葉系幹細胞における効果。
Aim2:MudPIT 法によるKS-13伝達経路の解析。
(1)マウス造血幹細胞においてKS-13に結合するタンパク質を同定する。
*赤血球造血におけるHmgn2の役割検討。
*リン酸化アレイによるKS-13シグナルの解析
(1)Phospho-Kinase Array Kit (Human), Proteome Profilerによるヒト臍帯血CD34陽性細胞の解析
*抗KS-13抗体の確立と応用性検討
結果と考察
多能性幹細胞の造血能比較検討を通じて、株間により差がある事が明らかになり、多能性幹細胞から造血幹細胞を作製する際には適切な多能性幹細胞株を選択する必要がある事が示唆された。AGM領域の造血幹細胞発生機構の解析より、造血幹細胞作製の際、CD45がその指標になる事が明らかになった。また、胎盤の造血幹細胞発生•制御機構の解析より、細胞刺激因子SCFがその制御機構に重要である事が示唆された。これらの知見を新しい造血幹細胞作製法へ応用し、報告者は、遺伝子導入法を用いずに造血幹細胞を作製する事に成功した。MudPit法によるKS-13シグナルの解析から、Hmgn2を同定した。Hmgn2の異所性発現によりin vitroでのマウス赤芽球分化を抑制した。
抗KS-13モノクローナル抗体を樹立し、KS-13あるいはKS-13前駆体の発現解析を行った。白血病細胞株は単一細胞由来であるにも関わらず、抗KS-13抗体により性質の異なる2つの細胞群に分類可能な事が明らかになった。
結論
KS-13はAktとp53をリン酸化する。KS-13の生理活性を応用し、マウス多能性幹細胞から造血幹細胞を作製する事に成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201006017B
報告書区分
総合
研究課題名
新規生理活性ペプチドにより分化を抑制したヒト造血幹細胞増幅法の開発
課題番号
H21-再生・若手-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 大介(九州大学大学院医学研究院 SSP造血幹細胞分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血幹細胞の分化を抑制する新規生理活性ペプチドKS-13を考案した。再生医療分野におけるKS-13の有効性と危険性を評価するため、Aim1:KS-13を用いたヒト臍帯血造血幹細胞作製・増幅法の開発及び安全性の評価、Aim2:KS-13作用メカニズムの解析、の研究を推進した。
研究方法
Aim1:マウス細胞を用いたコロニーアッセイによる培養条件の最適化。脂肪酸修飾体を用いた効果の検討。ヒト臍帯血CD34陽性細胞への添加培養。多能性幹細胞への応用検討。他の組織特異的幹細胞への応用検討。Aim2:MudPITによるKS-13結合タンパクの解析と造血幹細胞増幅メカニズムの解析。ビオチン標識KS-13を用いた取り込み機序検討。赤血球造血におけるHmgn2の役割検討。リン酸化アレイによるKS-13シグナルの解析。抗KS-13抗体の確立と応用性検討。
結果と考察
KS-13の至適濃度は50-100microg/mLだった。ビオチン標識KS-13による染色より、KS-13はEndocytosisにより細胞内に取り込まれる事が示唆された。ミリスチン酸修飾体はオリジナルのKS-13と少なくとも同等の効果を持つ事が示唆された。しかしながら、KS-13のN末端、C末端より1アミノ酸削除した改変体では効果は認められなかった。ヒト細胞における検討では、骨髄球系細胞の分化・増殖抑制が認められた。 多能性幹細胞の造血能比較検討を通じて、株間により差がある事が明らかになった。AGM領域の造血幹細胞発生機構の解析より、造血幹細胞作製の際、CD45がその指標になる事が明らかになった。また、胎盤の造血幹細胞発生制御機構の解析より、細胞刺激因子SCFがその制御機構に重要である事が示唆された。これらの知見を新しい造血幹細胞作製法へ応用し、遺伝子導入法を用いずに造血幹細胞を作製する事に成功した。 MudPit法によるKS-13シグナルの解析から、Hmgn2を同定した。Hmgn2の異所性発現によりin vitroでのマウス赤芽球分化を抑制した。 抗KS-13モノクローナル抗体を樹立し、KS-13あるいはKS-13前駆体の発現解析を行った。白血病細胞株は単一細胞由来であるにも関わらず、抗KS-13抗体により性質の異なる2つの細胞群に分類可能な事が明らかになった。
結論
KS-13はマウス・ヒト造血細胞に作用し、特に骨髄球系細胞への分化・増殖を抑制する。KS-13はAktとp53をリン酸化する。KS-13の生理活性を応用し、マウス多能性幹細胞から造血幹細胞を作製する事に成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201006017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
造血幹細胞の生理的増幅部位であるマウス胎仔肝臓より新規生理活性ペプチドKS-13を考案し、KS-13を応用した造血幹細胞作製法の開発、造血幹細胞増幅法の開発、KS-13シグナルの解析、抗KS-13抗体の有効性検討を行った。研究成果の一部を現在論文投稿中である。また、研究成果の蓄積により、KS-13及び抗KS-13抗体は幹細胞研究試薬として注目を浴びつつある。
臨床的観点からの成果
KS-13を応用した再生医療における革新的治療技術の開発を目指し、研究を推進した。KS-13を添加培養する事で、遺伝子導入法を用いずにマウス多能性幹細胞から造血幹細胞を作製する事に成功した。本法をヒトへ応用可能であれば、新しい造血幹細胞移植技術の開発が見込める。また、マウス、ヒト造血・間葉系幹細胞の増幅に一定の効果を認めた。KS-13添加培養後のマウス細胞を移植したところ、腫瘍の発生は確認されておらず、ヒトサンプルにおける安全性の確認を経て、臨床応用可能なシーズになる事が期待される。
ガイドライン等の開発
本研究提案ではガイドライン等の開発を行っていない。
その他行政的観点からの成果
KS-13の有効性と危険性に関する検討結果は、再生医療の実用化促進へ波及する。
その他のインパクト
Axis Research Mind社発行のレポートによると、世界の幹細胞市場は2010年215億USドルに達し、2015年には638億USドルに達する見込みである。中国、インド、ギリシャ、スペイン、スウェーデン、ドイツ及び米国では、2015年までに27%以上の年間成長率を見込んでいる。よって、KS-13が幹細胞研究用試薬として販売されれば、成長著しい幹細胞市場への貢献が見込める。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
3件
その他成果(特許の取得)
1件
造血幹細胞または造血前駆細胞の分化を抑制するペプチド及びその用途(出願番号:PCT/JP2010/067011)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugiyama D,Inoue T, Kulkeaw K,et al.
Variation in Mesodermal and Hematopoietic Potential of Adult Skin-derived Induced Pluripotent Stem Cell Lines in Mice.
Stem Cell Reviews and Reports(in press)  (2011)
原著論文2
Sugiyama D,Kulkeaw K, Ishitani T,et al.
Cold exposure down-regulates zebrafish pigmentation.
Genes to Cells , 16 (4) , 358-367  (2011)
原著論文3
Sugiyama D,Inoue T,Kurita R,,et al.
APOA-1 is a novel marker of erythroid cell maturation from hematopoietic stem cells in mice and humans.
Stem Cell Reviews and Reports , 7 (1) , 43-52  (2011)
原著論文4
Sugiyama D,Sasaki T, Mizuochi C,et al.
Regulation of hematopoietic cell clusters in the placental niche through SCF/c-Kit signaling in embryonic mouse.
Development , 137 (23) , 3941-3952  (2010)
原著論文5
Sugiyama D,Kulkeaw K, Mizuochi C,et al.
Hepatoblasts comprise a niche for fetal liver erythropoiesis through cytokine production.
Biochem Biophys Res Commun(in press)  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201006017Z