療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究

文献情報

文献番号
202417028A
報告書区分
総括
研究課題名
療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1014
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(学校法人梅村学園 中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
  • 岡田 俊(公立大学法人 奈良県立医科大学 精神医学講座)
  • 本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
  • 上野 修一(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 精神神経科学)
  • 内山 登紀夫(福島学院大学)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究・人材養成部)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
  • 伊藤 大幸(お茶の水女子大学 生活科学部)
  • 浜田 恵(名古屋学芸大学ヒューマンケア学部)
  • 明翫 光宜(中京大学心理学部)
  • 高柳 伸哉(愛知東邦大学 人間健康学部)
  • 山根 隆宏(国立大学法人神戸大学 人間発達環境学研究科)
  • 村山 恭朗(金沢大学 人間社会研究域 人間科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
14,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年度は、本研究の最終年度にあたる。したがって、本年度の研究目的は、以下の二点に集約される。 第一に、療育手帳の判定および交付に関する現状を把握するとともに、知的発達症に関する精神医学的診断基準や心理テスト論等に関する先行研究の知見を総合的に整理・検討し、療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドラインを提案することである。
第二に、療育手帳の判定現場において、実用的かつ標準的に使用できる知的機能および適応行動の検査ツールである ABIT-CV(Adaptive Behavior and Intelligence Test – Clinical Version)を開発し、その標準化(ノルムの設定)を行うとともに、信頼性および妥当性の検証を通じて、当該ツールの科学的根拠に基づく有用性を明らかにすることである。
研究方法
 療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドライン作成に関しては、ICD11との対比の中で、これまでの専門的知見と施策の推移を総合的に分析し、専門家間のコンセンサスが得られたものをあげた。
 実用的かつ標準的に使用できる知的機能および適応行動の検査ツールである ABIT-CVの開発に関しては、2023 年度から2024 年度にかけて、1 歳から69歳までの計741名を対象とした調査を実施した。調査参加者は、知的障害や発達障害の診断や疑いの指摘を受けたことのない「定型発達群」(476名)、知的障害の診断を有する「知的障害群」(192名)、知的障害の診断を持たないものの、知的障害の疑いを指摘された、もしくは、知的障害以外の発達障害の診断や疑いの指摘を受けたことのある「その他群」(73名)の3群の対象者の協力のもと、ABIT-CV と、ウェクスラー式知能検査および VinelandII 適応行動尺度を実施した。
結果と考察
 療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドライン作成は、専門家の議論の基、暫定的なガイドラインを作成することができた。
 ABIT-CVの開発に関しては、ABIT-CVは知的機能および適応行動を評価する尺度として、信頼性・妥当性ともに高い水準であることが確認された。項目分析の結果、多くの項目が有効に機能し、月齢に応じた標準得点のノルムも構築された。特に、2歳未満では適応行動尺度によるスクリーニングの活用が推奨され、知的機能検査は2歳以降に導入すべきとされた。4歳未満の重症度判定においても適応行動尺度が主に用いられ、4歳以降での確定判定が望ましいとされた。全体的に、ABIT-CVは短時間で実施可能でありながら、高い判別精度を維持し、発語困難な幼児にも対応可能であるなど、実用性の高い評価ツールとしての有効性が示された。
結論
本研究の成果は、以下の二点に集約される。第一に、療育手帳の判定および交付に関する現状を把握するとともに、知的発達症に関する精神医学的診断基準や心理テスト論等に関する先行研究の知見を総合的に整理・検討し、療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドラインを提案した。
第二に、療育手帳の判定現場において、実用的かつ標準的に使用できる知的機能および適応行動の検査ツールである ABIT-CV(Adaptive Behavior and Intelligence Test – Clinical Version)を開発し、その標準化(ノルムの設定)を行うとともに、信頼性および妥当性の検証を通じて、当該ツールの科学的根拠に基づく有用性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2025-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
総括研究報告書
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-07-04
更新日
-

文献情報

文献番号
202417028B
報告書区分
総合
研究課題名
療育手帳の交付判定及び知的障害に関する専門的な支援等に資する知的能力・適応行動の評価手法の開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1014
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(学校法人梅村学園 中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
  • 岡田 俊(公立大学法人 奈良県立医科大学 精神医学講座)
  • 本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
  • 上野 修一(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 精神神経科学)
  • 内山 登紀夫(福島学院大学)
  • 大塚 晃(上智大学 総合人間科学部)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究・人材養成部)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
  • 伊藤 大幸(お茶の水女子大学 生活科学部)
  • 浜田 恵(名古屋学芸大学ヒューマンケア学部)
  • 明翫 光宜(中京大学心理学部)
  • 高柳 伸哉(愛知東邦大学 人間健康学部)
  • 山根 隆宏(国立大学法人神戸大学 人間発達環境学研究科)
  • 村山 恭朗(金沢大学 人間社会研究域 人間科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
療育手帳制度は、知的発達症(知的障害)を示す児者への福祉の増進を目的として、昭和48年(1973年)に都道府県知事および指定都市長宛になされた厚生事務次官通知(厚生省発児第156号)に基づき、現在まで運用されている。先行研究において、都道府県・指定市間に認められる基準のバラつきは当事者やその家族への負担、知的発達症を持たない児者への手帳交付、都道府県・指定市間の不公平を引き起こしていることが示されている。そのため、本研究は療育手帳の判定・交付基準の全国統一化を図るため、国際的な診断基準に準拠する療育手帳の判定・判定基準を開発・提案することを目的とする。
研究方法
療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドライン作成に関しては、ICD11との対比の中で、これまでの専門的知見と施策の推移を総合的に分析し、専門家間のコンセンサスが得られたものをあげた。
 実用的かつ標準的に使用できる知的機能および適応行動の検査ツールである ABIT-CVの開発に関しては、2023 年度から2024 年度にかけて、1 歳から69歳までの計741名を対象とした調査を実施した。調査参加者は、知的障害や発達障害の診断や疑いの指摘を受けたことのない「定型発達群」(476名)、知的障害の診断を有する「知的障害群」(192名)、知的障害の診断を持たないものの、知的障害の疑いを指摘された、もしくは、知的障害以外の発達障害の診断や疑いの指摘を受けたことのある「その他群」(73名)の3群の対象者の協力のもと、ABIT-CV と、ウェクスラー式知能検査および VinelandII 適応行動尺度を実施した。
結果と考察
 療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドライン作成は、専門家の議論の基、暫定的なガイドラインを作成することができた。
 ABIT-CVの開発に関しては、ABIT-CVは知的機能および適応行動を評価する尺度として、信頼性・妥当性ともに高い水準であることが確認された。項目分析の結果、多くの項目が有効に機能し、月齢に応じた標準得点のノルムも構築された。特に、2歳未満では適応行動尺度によるスクリーニングの活用が推奨され、知的機能検査は2歳以降に導入すべきとされた。4歳未満の重症度判定においても適応行動尺度が主に用いられ、4歳以降での確定判定が望ましいとされた。全体的に、ABIT-CVは短時間で実施可能でありながら、高い判別精度を維持し、発語困難な幼児にも対応可能であるなど、実用性の高い評価ツールとしての有効性が示された。
結論
本研究の成果は、以下の二点に集約される。第一に、療育手帳の判定および交付に関する現状を把握するとともに、知的発達症に関する精神医学的診断基準や心理テスト論等に関する先行研究の知見を総合的に整理・検討し、療育手帳の交付判定における実効性のあるガイドラインを提案した。
第二に、療育手帳の判定現場において、実用的かつ標準的に使用できる知的機能および適応行動の検査ツールである ABIT-CV(Adaptive Behavior and Intelligence Test – Clinical Version)を開発し、その標準化(ノルムの設定)を行うとともに、信頼性および妥当性の検証を通じて、当該ツールの科学的根拠に基づく有用性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2025-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
総合研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
分担研究報告書

公開日・更新日

公開日
2025-07-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202417028C

成果

専門的・学術的観点からの成果
療育手帳の交付判定を目的として、知的機能および適応行動を評価するノルム化された標準化検査を新たに開発した。本検査は、知的障害の鑑別精度に優れるだけでなく、現場での実施を想定した簡便な手順を備えている。知的機能と適応行動の両面を同時かつ効率的に評価できる検査は、国際的にも極めて稀であり、本検査の意義は大きい。
臨床的観点からの成果
本研究で開発した、知的機能および適応行動を簡便かつ信頼性高く評価できるノルム化検査を活用することで、療育手帳の交付判定を効率的かつ客観的に実施できるようになる。これにより、知的発達症の国際的診断基準と整合した形での判定が可能となり、判定の質と公平性の向上が期待される。
ガイドライン等の開発
療育手帳の交付判定基準には、都道府県および政令指定都市間で顕著なばらつきが見られる。この状況を踏まえ、知的発達症に関する臨床的知見、心理検査に関する先行研究、これまでに指摘されてきた判定基準の課題等を総合的に検討し、療育手帳の交付判定に関するガイドラインを作成した。
その他行政的観点からの成果
療育手帳の交付判定基準には、都道府県および政令指定都市間で顕著なばらつきが認められ、当事者やその家族に不利益をもたらすだけでなく、神経発達症のある者への支援において自治体間の不公平・不平等を生じさせている。本研究で開発・作成した標準化検査およびガイドラインは、こうした判定基準の地域差の是正を促進し、支援の質の公平化に資するものである。
その他のインパクト
従来の知能検査や適応行動検査は国外製に依存してきたが、本研究で開発したノルム化検査は、両面を包括的に評価する国内初の画期的な検査である。その意義は極めて大きく、すでに複数の国内学会で高い注目と称賛を受けている。これにより、国内の臨床心理学研究の水準向上と実践的支援の質的飛躍を促す重要な一歩となる。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
ガイドライン作成
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ガイドラインに関するリーフレットを作成

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
村山恭朗・浜田恵・明翫光宜・髙柳伸哉・山根隆 宏・小林真理子・辻井正次
療育手 帳の交付児者を対象としたウェクスラー式知 能検査と田中ビネー知能検査/新版K式発達 検査の関連
児童青年精神医学とその近接領 域 , 65 , 147-161  (2024)

公開日・更新日

公開日
2025-07-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
202417028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,200,000円
(2)補助金確定額
16,196,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,434,408円
人件費・謝金 4,391,091円
旅費 1,542,268円
その他 6,029,042円
間接経費 1,800,000円
合計 16,196,809円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-07-04
更新日
-