医療保険者による特定健診・特定保健指導が医療費に及ぼす影響に関する研究

文献情報

文献番号
201001008A
報告書区分
総括
研究課題名
医療保険者による特定健診・特定保健指導が医療費に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H20-政策・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡山 明(公益財団法人結核予防会第一健康相談所 生活習慣病予防研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座・公衆衛生学部門)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 岡村 智教(慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 日高 秀樹(滋賀医科大学医学j部内科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年度からの医療法改正では保険者の保健事業が義務化され、保健事業の有効性を医療費から評価することが求められている。今後円滑な事業実施のためには一般的な保健事業での有効性とその要因を明らかにする必要がある。
研究方法
保健事業実施計画の基礎となる健診受診率や医療費情報、現状に基づく保健事業計画、特定健診・保健指導の実施実績および実施後の医療費を収集する。このデータを利用して国保・被用者保険別の解析により、健診受診、健診成績と医療費の関連を分析する。更に実施対象の個人の医療費について保健事業により改善効果が得られたかを明らかにする。
結果と考察
国保加入者は約23万人で、そのうち全期間加入しており、医療費分析可能な対象者は218650名であった。被雇用者は215万人であり、分析対象者は2093282名となった。分析対象の国保と被用者保険加入者の合計は2311932名であった。国保と被用者保険を比較すると国保の方が医療費が多い傾向が見られた。もっとも大きな差は入院医療費で見られ、差は若い年齢層で著明であった。総医療費が国保の方が多いのは入院医療費によるものと考えられた。階層化で積極的支援となった者は77912名であった。一部の保険者では積極的支援対象者となったものに原則として訪問して支援を行い、継続的支援に結びつかなかった対象者を脱落としていた。各保険者での脱落者の考え方が大きく異なるため、すべての保険者での支援を受けたものの定義を最終支援結果のあるものとした。支援を受けた人と比較して、支援受けなかった人では年齢がやや若い傾向が見られ、外来、総医療費共に多い傾向が見られた。その結果支援を受けたものは2108名となった。積極的支援では支援により総医療費で年間3300点少なく、外来総医療費でも752点少なかった。平成20年の血圧値、血糖値などの検査結果や年齢、性別、喫煙習慣を考慮しても有意であった。また国保被用者別の解析結果も同様であった。
結論
特定健診保健指導制度を医療費分析により生活習慣、治療状況によって医療費に大きな差が見られること、体重変化が医療費に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。
また特定保健指導の積極的支援の実施によって医療費が有意に減少することが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201001008B
報告書区分
総合
研究課題名
医療保険者による特定健診・特定保健指導が医療費に及ぼす影響に関する研究
課題番号
H20-政策・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡山 明(公益財団法人結核予防会第一健康相談所 生活習慣病予防研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 克之(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 安村 誠司(福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座)
  • 坂田 清美(岩手医科大学医学部衛生学公衆衛生学講座)
  • 岡村 智教(慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学)
  • 日高 秀樹(滋賀医科大学医学部内科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成20年度からの医療法改正では保険者の保健事業が義務化され、保健事業の有効性を医療費から評価することが求められている。この保健事業が成功するには保険者の健診・保健指導の実施体制のうち、どのような要素が医療費の適正化に結びつくかを明らかにすることが緊急の課題である。本保健事業では各保険者は所定の書式で実施計画を作成することが義務づけられており、実施計画と実績を統一的な手法で評価することが可能である。個人単位での保健事業実施状況がその個人の医療費にどのような影響を与えるかを明らかにする。
研究方法
平成20年度には個別データの収集が可能な19保険者を募集し、個別データの収集体制を整備し、平成21年度には実際に医療費、特定健診実施実績、特定保健指導実施実績を保険者の協力を得て収集した。レセプトデータから年間医療費を求め、健診成績と医療費、保健指導の有無と医療費の伸びについて検討し、保健事業の有効性を検討した。
結果と考察
国保加入者は約23万人であり、そのうち全期間加入しており、医療費分析可能な対象者は218650名であった。被雇用者は215万人であり、分析対象者は2093282名となった。分析対象の国保と被用者保険加入者の合計は2311932名であった。全体では男性で20%、女性で27.3%であった。被用者保険では賛成の受診率は40-44?55-59歳まではほとんど変化がなく36.9%?34.4%であり、更に年齢が高くなるにつれ受診率は低くなった。70-74歳では17.4%と最も低かった。女性でも傾向は同様であった。女性の70-74歳では受診率は9.8%にとどまった。国保と被用者保険で、受診率と年齢階級との関連が異なったのは、被用者保険では被保険者本人の受診率が高く、被扶養者の受診率が低くとどまっているためと考えられた。
収集したデータの分析により、健診受診者と未受診者では医療費の伸びが異なる可能性があること、特定健診結果に基づく階層化結果が同じで保健指導を受けなかった者に対する、保健指導を受けたものの医療費が有意に少ないことが明らかになった。

結論
特定健診保健指導制度にもとづく健診結果と医療費の分析により生活習慣、治療状況によって医療費に大きな差が見られること明らかとなった。
また特定保健指導の積極的支援の実施によって医療費が有意に減少することが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
230万人を超えた医療費データベースの作成、60万人の特定健診受診者の医療費分析が可能なデータセットの作成を行うことができた。健診受診状況と医療費の関連が分析可能となった。また従来は分析がきわめて困難であった現在治療中のものの年齢階級別の医療費の分析や、生活習慣との関連を明らかにするデータセットが作成できた。また保健事業を医療費から評価可能なデータセットが始めて作成されたことは画期的と考える。
臨床的観点からの成果
高血圧などの治療中のものの健康状態や医療費との関連を明らかにすることは、医療費の適正化の観点からきわめて重要と考えられる。本研究では高血圧、糖尿病の治療中のものについて肥満度や運動実施状況別に医療費を比較したところ、検査成績ばかりでなく医療費が密接に関連する事を明らかにできた。この結果、治療中のものであっても生活習慣をできるだけ改善することで検査成績の改善と共に医療費も適正化される可能性が示された。
ガイドライン等の開発
保健指導の有効性は主に従来検査成績の改善のみで示されてきた。また保健事業で行われたものの医療費から見た評価はほとんどなされていない。今回の研究によって、生活習慣と医療費が密接な関連があり、治療中のものであっても同様であることが明らかになったこと、保健指導によって医療費が改善することが明らかになったことから、今後の生活習慣病治療のガイドラインを考える際の重要なエビデンスを明らかにできた。
その他行政的観点からの成果
 現在公開準備中である特定健診保健指導と医療費データベース(いわゆるナショナルデータベース)の分析は概念として可能でも実際のデータのクリーニングや年間医療費への変換など活用するためには多くのハードルを越える必要があると考えられる。本データセットを作成した経験はこれらのハードルを越える際のきわめて重要なノウハウとなる。今後はナショナルデータベース分析を行う研究者に対してこうしたノウハウを提供できる状況となった。
その他のインパクト
 年間医療費を高血圧の治療状況別に分析した結果、国民医療費の大きな部分を高血圧治療が占めていることが改めて明らかとなった。高血圧対策がきわめて重要であり、これらの対策には予防が最も重要で、治療が必要な場合には生活習慣改善によって医療費をできるだけ適正化することも重要である事を示した。今後これらの結果が学会発表や論文によって公表されれば大きな注目を集めると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
健診受診状況と医療費、高血圧治療のインパクト、治療中者の肥満度と医療費
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-06-09

収支報告書

文献番号
201001008Z