行政と住民ネットワークの連携による孤立予防戦略の検証

文献情報

文献番号
201001006A
報告書区分
総括
研究課題名
行政と住民ネットワークの連携による孤立予防戦略の検証
課題番号
H20-政策・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 陽二(日本大学法学部)
  • 角野 文彦(滋賀県健康福祉部健康推進課)
  • 星 旦二(首都大学東京大学院・都市環境科学研究科)
  • 松本 真澄(首都大学東京大学院・都市環境科学研究科)
  • 福島 富士子(国立保健医療科学院・公衆衛生看護学部・ケアシステム開発室)
  • 小林 江里香(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 深谷 太郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 西 真理子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 野中 久美子(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
6,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)和光市追跡調査を遂行し孤立に陥る要因の同定と孤立者の予後を明らかにする。さらには地域レベルと個人レベルに分けてソーシャル・キャピタルの多寡と生活機能における予後の関係についても分析する。2)集会式体操参加者を対象として、参加者の意識・行動を介護予防活動に限定した目的から相互の見守り・孤立予防をも包含する活動へと変容させるための介入の効果を調べる。3)孤立死リスク高齢者の把握方法と対応のあり方を総括し、関係者が実用できる「見守りのポイントチェックシート」を提示する。
研究方法
1)2008年度に和光市の65歳以上を対象に行った初回調査の対象者に、2011年7?8月に追跡調査を実施し、1,782人(78.3%)より回答を得た。2)介入事業とその評価を測定するため、川崎市多摩区内で集会式介護予防体操を定期的に行っている既存の高齢者集団を対象に調査を行った。その後、介入群に対してのみ介入プログラムを提供した。3)地域包括支援センター職員に対してのヒアリングを行い、主に公的支援の受け入れを拒否する問題事例について検討した。
結果と考察
1)和光市調査からは、1.独居者の場合、孤立者は非孤立者より、死亡によって追跡調査から脱落しやすい傾向があった。2.独居男性は様々な理由で追跡調査から脱落するリスクが高く「孤立」状態にあるリスクが高かった。
2)介護予防体操対象者への調査では、体操ボランティアに対する介入が自身の行動変容を促進する直接的効果が示されたが、一般参加者の心理面や地域づくりに対する意識に及ぼす波及効果は見られなかった。
3)地域包括支援センターとの連携のためのツールとして一般住民向けおよび商店、公共機関向け3種の「見守りのポイントチェックシート」を作成した。
結論
1)独居者の場合、孤立者は非孤立者より、死亡によって追跡調査から脱落しやすい傾向があった。独居男性は様々な理由で追跡調査から脱落するリスクが高かった。初回調査時に抑うつ傾向があった人ほど追跡時の孤立のリスクは高かった。また、個人レベルの要因を排除した後も、地域レベルの要因としてのソーシャル・キャピタルにおけるいくつかの項目が生活機能低下の予知因子として残った。
2)既存の体操ネットワークを用いた介入やタイプの異なるサロンの配備により、孤立の一次予防戦略としての効果がある程度、期待できることが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201001006B
報告書区分
総合
研究課題名
行政と住民ネットワークの連携による孤立予防戦略の検証
課題番号
H20-政策・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉陽二(日本大学 法学部)
  • 角野文彦(滋賀県 健康福祉部健康推進課)
  • 星旦二(首都大学東京大学院 都市環境科学研究科)
  • 松本真澄(首都大学東京大学院 都市環境科学研究科)
  • 福島富士子(国立保健医療科学院 公衆衛生看護学部ケアシステム開発室)
  • 小林江里香( 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 深谷太郎( 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 西真理子( 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 野中久美子( 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1)和光市調査を遂行し孤立に陥る要因の同定と孤立者の予後を明らかにし、さらには地域・個人レベル別のソーシャル・キャピタルの多寡と生活機能における予後の関係について分析する。2)集会式体操参加者を対象として、参加者の意識・行動を相互の見守り・孤立予防をも包含する活動へと変容させるための介入の効果を調べる。3)孤立死リスク高齢者の把握方法と対応のあり方を総括し、関係者が実用できる「見守りのポイントチェックシート」を提示する。
研究方法
1)2008年度に和光市の65歳以上を対象に行った調査を、その追跡調査を2010年に7~8月に、それぞれ実施した。2)川崎市多摩区内で集会式介護予防体操を定期的に行っている既存の高齢者集団を対象に調査を行い、その後、介入群に対してのみ介入プログラムを提供した。3)地域包括支援センター職員に対してのヒアリングを行い、主に公的支援の受け入れを拒否する問題事例について検討した。4)多摩市、上勝町でも、補完的調査を実施した。
結果と考察
1)調査から、1.独居男性は様々な理由で追跡調査から脱落するリスクが高く「孤立」状態にあるリスクが高かった。2.孤立者は抑うつ度が高くなるが、社会参加により低下する。3. 社会参加活動を複数の場所で行うほうが孤立予防効果は高い。4.社会活動への支援は互酬的意義をもたらす。2)体操ボランティアに対する介入が自身の行動変容を促進する直接的効果が示されたが、一般参加者の心理面や地域づくりに対する意識に及ぼす波及効果は見られなかった。3)地域包括支援センターとの連携のためのツールとして一般住民向けおよび商店、公共機関向け3種の「見守りのポイントチェックシート」を作成した。
結論
1)孤立は抑うつの、抑うつは孤立の要因となりやすいが、社会との交流がその連鎖を断ち切る可能性が示唆された。そして、社会との交流も、複数の場に参加する方が孤立予防効果が高く、参加者は参加することで互酬的な意義を見出せる。また、個人レベルの要因を排除した後も、地域レベルの要因としてのソーシャル・キャピタルにおけるいくつかの項目が生活機能低下の予知因子として残った。
2)既存の体操ネットワークを用いた介入やタイプの異なるサロンの配備により、孤立の一次予防戦略としての効果がある程度、期待できることが示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201001006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
孤立死などの原因として近年注目されている社会的孤立に着目し、これまで疫学データが乏しかったこの種の研究において、地域ベースの追跡調査により社会的孤立の要因とその予後の一端を解明することができた。特に、これまで経験的に孤立のリスクが高いと考えられてきた男性独居者の実態とリスクが明らかにされた。孤立の予防策としては同じく、実証データが乏しかった住民サークルやサロンなど既存の地域資源を活用したプログラムの効果を保健学、社会学、都市計画学等学際的なアプローチにより定量的、定性的に明らかにできた。
臨床的観点からの成果
孤立者では、将来への不安や抑うつ傾向が高くなることがわかった。将来への不安や抑うつ傾向は臨床的には不審死の多くを占める孤立死や、自殺の要因となる可能性がある。さらには孤立者は健康や介護情報からも疎遠であったり、服薬管理・食事療法においてもコンプライアンスが悪い可能性がある。今後、臨床現場においては高齢患者の生活背景や生活状況を知り治療に役立てることの意義を示すことができた。また、「見守りのポイントチェックシート」を活用し地域包括支援センター等と情報を共有する糸口を提示することができた。
ガイドライン等の開発
地域包括支援センターとの連携のためのツールとして一般住民および商店、公共機関向け3種の「見守りのポイントチェックシート」を作成した(東京都大田区役所が採用し区内全域に配布予定2011年9月以降)。
その他行政的観点からの成果
研究代表者が滋賀県近江八幡市介護予防事業評価委員会の委員長を委嘱され、社会的孤立予防の視点から同市の特定高齢および一般高齢者向け介護予防事業の評価のあり方を提言した際、本研究成果の一部を活用した。
その他のインパクト
日本経済新聞の取材およびNHKニュース「おはよう日本」のVTRにおいて、本研究成果の一部を活用した。また、川崎市などで行った9回の住民見守りサポーター向け講演会においても、同様に成果の公表を行った。また、和光市民向けに、研究成果の概要を記載したパンフレットを作製した。
 本研究班の研究成果を中心に、研究分担者らと著書を執筆中(ミネルヴァ出版、2011年12月発行予定)。

発表件数

原著論文(和文)
29件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
35件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
近江八幡市介護予防事業評価委員会の委員長を委嘱され、同市の特定高齢および一般高齢者向け介護予防事業の評価のあり方を提言
その他成果(普及・啓発活動)
11件
マスコミ2件、講演会9件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
稲葉陽二、藤原佳典
少子高齢化時代におけるソーシャル・キャピタルの政策的意義-高齢者医療費の視点からの試論
行動計量学 , 37 (1) , 39-52  (2010)
原著論文2
斉藤雅茂、藤原佳典、小林江里香他
首都圏ベッドタウンにおける世帯構成別にみた孤立高齢者の発現率と特徴
日本公衆衛生雑誌 , 57 (9) , 785-795  (2010)
原著論文3
國上佳代、余錦芳、松本真澄他
多摩ニュータウン諏訪・永山地区における高齢者のための居場所形成とその利用・認知に関する分析
日本建築学会計画系論文集 , 76 (663) , 973-981  (2011)
原著論文4
斉藤雅茂、藤原佳典、小林江里香、深谷太郎、西真理子、新開省二
同居者のいる住民基本台帳上の一人世帯高齢者の特性
老年社会科学 , 33 (4) , 527-537  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2016-06-29

収支報告書

文献番号
201001006Z