認知症の病態の進行に影響する重症化因子の特定と進行予防への効果的な介入方法の確立のための研究

文献情報

文献番号
202416006A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の病態の進行に影響する重症化因子の特定と進行予防への効果的な介入方法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23GB1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
川勝 忍(公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松田 圭悟(名古屋大学 大学院情報学研究科複雑系科学専攻)
  • 小林 良太(山形大学 医学部)
  • 鈴木 匡子(東北大学 大学院医学系研究科高次機能障害学)
  • 林 博史(福島県立医科大学 保健科学部作業療法学科)
  • 伊関 千書(東北大学病院 リハビリテーション部)
  • 井原 一成(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科 大学院医学研究科社会医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,178,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症の種類、病期を考慮した認知症の病態の進行に影響する重症化因子と保存されやすい症状を、国内外の知見を踏まえて、精神症状、神経症状、神経心理学的症状、神経画像検査などの臨床検査所見と遺伝的危険因子を調査し、神経病理学的検索を含めた後方視的検討と、前方視的検討を組み合わせて明らかにする。これらのデータベースの構築と、それを応用して、認知症疾患医療センター等における多職種連携、IoTに活用できる介入方法について提案する。
研究方法
認知症患者の経時的な臨床症状評価、介護負担度、サービス利用状況とMRI画像データ収集し、実臨床に基づいた進行度予測のためのデータを集積し、解析用のデータベースを構築中である。これらのデータから統計モデル等で解析し,病型分類や進行予測のデータ解析のモデル化を実施した。 令和6年度は、前方視的および後方視的研究として認知症症例726例をエントリーし、経時的変化を調査中であり、半年毎の認知機能検査と臨床評価、年1回のMRI検査を実施継続中である。過去の実施MRI検査も含めて、2回以上の2ポイントでの実施例が328例になっている。同日にASLとSPECTを実施した認知症患者15例(アルツハイマー病AD9名、レビー小体型認知症DLB2名、軽度認知障害MCI4名)で中心前回、頭頂葉、側頭葉、後頭葉における視察的な左右差を評価するとともに、両検査における脳血流SPECT用の自動解析ソフトによる自動ROIで算出した定量値を用いて、各脳領域における左右差〈(R-L)/(R+L)〉、左右比〈R/L〉、前後比を相関解析した。アミロイドPET撮影例約252例におけるアミロイド集積の定量値としてセンチロイド解析を行った。DLB患者30例についてデイサービスの利用と精神症状が介護負担感の変化に影響するかどうかを調べた。後部皮質萎縮症(PCA)純粋型16例の臨床画像特徴を検討した。正常圧水頭症12例の特徴を解析した。認知症の日常生活自立の悪化因子について文献検索を行った。認知症の累積剖検例78例の臨床画像病理特徴を検討した。
結果と考察
MRI-ASLによる血流評価はSPECTには劣るが、スクリーニング検査としての意義はあると思われた。MRI画像からAD関連指標を予測する機械学習モデルの構築として、灰白質画像からMMSEを予測するモデルで真値と予測値のR2が0.467と比較的高い精度での予測が可能であった。今後より多数例での検討を予定している。
アミロイドPETのセンチロイドスケール解析で、視覚判定では陰性だったが、解析後に陽性判定となった症例を252例中8例に認めた。DLBでは、アミロイドの蓄積は加速度的に増加する傾向があった。DLBでデイサービス利用者は6ヶ月後の介護負担感が有意ではないが減少し、精神症状では患者の不安、アパシーが持続あるいは新たに出現した患者では介護負担感が有意に増加していた。後部皮質萎縮症の背景疾患はアルツハイマー病が多いが記憶障害よりも視覚症状が優位のため診断の遅れが問題であった。正常圧水頭症では、認知症重症因子としてADやDLBの合併が指摘できた。また、これまでの認知症病理解剖例の類型は78例でうち19例についてはPiB-PETが実施された例であった。うち陽性例9例(AD5例、DLB4例)、PiB陰性10例(うちTDP4例、タウ病理4例などであった)。PiB陽性例ではすべてアミロイド病理が確認された。陰性例でも剖検時には軽度のアミロイド病理を約半数で伴っていた。病理学的な検討として診断が難しい非定型ADの病変分布が神経心理学的症状と合致すること、TDP-43病理を伴うアルツハイマー病、嗜銀顆粒性認知症では、迂回回を含む側頭葉内側前部の病変が目立ち、臨床的にMRI画像でも捉えうる可能性がある。
結論
MRI画像、アミロイドPETなどによる認知症疾患類型ごとに重症化因子は異なるため、これらの病態の特徴を踏まえて、重症化を抑制する介護サービスなどの利用方法を明らかにしていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202416006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,736,000円
(2)補助金確定額
15,719,000円
差引額 [(1)-(2)]
17,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,359,639円
人件費・謝金 3,988,968円
旅費 1,425,678円
その他 5,396,734円
間接経費 3,548,580円
合計 15,719,599円

備考

備考
人件費の支出にて、オーバーできないため日数を削るしかなく、結局、割り切れない部分が残高として残ったため。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-