健康危機事象発生の検出を目的とした症候サーベイランスにおける統計解析法とその利用に関する研究

文献情報

文献番号
200942040A
報告書区分
総括
研究課題名
健康危機事象発生の検出を目的とした症候サーベイランスにおける統計解析法とその利用に関する研究
課題番号
H21-健危・若手-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 邦彦(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究分担者(所属機関)
  • 丹後 俊郎(国立保健医療科学院 技術評価部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機事象の早期検出を目的としたサーベイランスにおいて集積性の検定という統計手法が利用されている。この統計解析について一般的な研究者やユーザーが容易に解析を行えるソフトウェアとしてSaTScanと我々のFleXScanの2つが世界的に利用されている。本研究ではFleXScan法の更なる改良に関する理論的研究とともにアプリケーションによる解析ツールの提供、サーベイランスならびに関連分野における実際の適用と、その普及に向けた検討を行う。
研究方法
まずニューヨーク市保健局の担当者らと共同で、提案法FleXScanを用いニューヨーク市で実施されている救急病院におけるインフルエンザ様症状(ILI)での受診者数サーベイランスデータを解析し、2009年4月の新型インフルエンザA(H1N1)の発生地域の検出を行い、SaTScan法との比較を行った。次にアプリケーションソフトFleXScanについて国内外の利用者から寄せられる要望等に応じ随時改良を行った。さらに国内でのFleXScanの利用促進に向け、解析に必要な位置情報・隣接情報データの作成、公開を行った。
結果と考察
ニューヨーク市の4月20-28日の間のILI患者データの解析では4月26日にFleXScan、SaTScanの両手法によってアウトブレイクが検出された。同定された地域は若干異なっていたがFleXScanの方がより多くのA(H1N1)の確定患者を含んでいた。実際、このアウトブレイクの観測された地域はSaTScanでは同定できない非円状の地域であると予想され、FleXScanの方がより適切な結果であると考えられた。次にアプリケーションFleXScan V3の英語版のマニュアルを作成し公開した。国内外の利用者からの問い合わせや報告をもとに修正を重ね、随時公開を行っている。また本アプリケーションでの解析に必要な位置情報・隣接情報データとして平成21年現在の市区町村、2次医療圏および保健所管轄の位置・隣接情報を作成しweb上で公開した。
結論
今年度の研究においてFleXScanの有用性を確かめ、またその改善、普及につとめた。今後引き続き国内外の研究者や実務者らと情報交換を進めながら、アプリケーションFleXScanの改良をめざす。同時にサーベイランスに向けた適切なモデル化に基づく解析手法の理論的検討、サーベイランス以外の保健医療分野における問題への適用などの検討も行っていきたい。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
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