文献情報
文献番号
202413002A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄バンクドナーの提供体制強化と若年ドナーの確保・リテンションへ向けた適切な介入方法の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FF1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
- 岡本 真一郎(学校法人慶應義塾大学 医学部)
- 日野 雅之(大阪公立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
- 石丸 文彦(日本赤十字社 血液事業本部)
- 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
- 黒澤 彩子(伊那中央病院 診療部 腫瘍内科)
- 大竹 文雄(大阪大学 大学院経済学研究科)
- 下野 僚子(早稲田大学 理工学術院)
- 後藤 秀樹(国立大学法人北海道大学 北海道大学病院 検査・輸血部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,737,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究班の目的は、骨髄バンクドナーの提供体制強化と若年ドナーを継続的に確保し提供の意欲を維持・向上させるような適切な介入方法を確立することである。若年ドナーは健康上の理由による中止が少ない一方、「仕事の都合」や「家族の不同意」によるコーディネート中止が多いことが先行研究から示唆されており、ドナー都合の中止を減らす環境整備が喫緊の課題とされてきた。こうした背景のもと、行動経済学的アプローチやデジタル技術の活用、社会的理解の促進を通じて、ドナー登録から幹細胞提供までの一連のプロセスにおける提供意思の維持・向上を目指した。
研究方法
令和6年度は、主に5つの側面から包括的な介入と評価を行った。まず、ドナー休暇制度の認知度向上を目的として企業向けに作成した30秒のショート動画と5分のレギュラー説明動画をSNSや日本骨髄バンク(JMDP)ホームページなどで配信した。これにより制度導入に対する関心喚起を図るとともに、制度未導入企業からのフィードバックを収集した。次に、長期間のモチベーション維持と家族の理解や協力を得るための方策として行った若年ドナーとその家族への半構造化面接調査をもとに、JMDPのLINE公式アカウント登録者(約2.4万人)のうち20〜39歳を対象とした大規模アンケート調査を行った。加えて、若年登録者1万人を対象とした行動経済学的アンケートを基に、適合通知時のメッセージ内容がドナーの意思決定に与える影響を検証するためランダム化比較試験を行い、各メッセージが提供意向や確認検査実施率に及ぼす効果を統計学的に評価した。さらに、ドナー登録の利便性を高める取り組みとして、口腔内スワブを用いたHLA検査とオンライン登録を組み合わせたWEB登録システムのトライアルを実施した。また海外バンクにおけるオンライン登録とHLA検査に関する調査を行った。最後に、確認検査におけるドナー拘束時間を短縮し、利便性を向上させるため、5道府県においてリモートによる確認検査を試行し、従来方式との比較検証を行った。
結果と考察
企業向け動画の配信は、SNS上で従来の数倍から十倍近い反響を得て、ドナー休暇制度に関する企業からの問い合わせも年間112件にのぼった。特にレギュラー動画への評価は高く、関心喚起には一定の効果が認められた。2023年度に行われていたACジャパンの広告が2024年度はなかったものの、実際の制度導入件数は前年度比で横ばいであり、制度導入支援や事例紹介など、多面的な補完策の必要性が示された。「骨髄バンクコーディネートにおける家族同意とドナーのモチベーション保持の関連要因に関するアンケート調査」には4,473人から回答があり、うち20~39歳の解析対象者は3,484人と、本テーマに対する高い関心が確認された。行動経済学的介入研究では、「HLA型一致率の希少性」に着目したメッセージが確認検査実施率を有意に上昇させた。特に男性および再度候補となった対象者において効果が顕著であり、ナッジ型のメッセージによる行動促進の有効性が示された。海外バンクへのアンケート調査を通じて、口腔内スワブを用いたHLA検査やオンライン登録が国際的にも広く採用されていることが確認され、日本での本格的な導入に向けた基礎情報が得られた。さらに、一般ドナー登録希望者を対象とした口腔内スワブを用いたHLA検査によるWEB登録トライアルでは、初回返送率が70%を超える良好な結果を得た。リモート確認検査のトライアルでは、ドナーの拘束時間を平均95分から20分へと大幅に短縮することに成功し、JMDPの業務効率化とドナーの利便性向上の両立が図られた。
結論
本研究により、若年ドナーの確保および提供意欲の維持・向上を目的とした多面的な介入の有効性が確認された。ドナー休暇制度、家族の理解促進、行動経済学的アプローチ、WEB登録、確認検査のリモート対応といった複数の手法が有用であることが示唆された。今後は、これらの成果を統合し、デジタルツールやナッジメッセージの活用、政策的支援を含めた包括的な支援体制を整備することで、骨髄バンクドナープールの質的向上と持続的運営に資することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2026-03-16
更新日
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