火葬場における有害化学物質の排出実態調査および抑制対策に関する研究

文献情報

文献番号
200942027A
報告書区分
総括
研究課題名
火葬場における有害化学物質の排出実態調査および抑制対策に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 信生(立命館大学 総合理工学研究機構 エコ・テクノロジー研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森澤 眞輔(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座)
  • 森田 章介(大阪歯科大学口腔外科学第一講座)
  • 米田 稔(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境リスク工学講座)
  • 高岡 昌輝(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座)
  • 中山 亜紀(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境リスク工学講座)
  • 大下 和徹(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,432,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成21年度は、火葬場から排出される有害物質の排出状況や、排ガス処理での除去効果について、その実態を明らかにし排出抑制策を検討することとした。
研究方法
3箇所の火葬場において、各排ガス処理プロセス前後でのダイオキシン類、クロム、水銀濃度を測定しその除去挙動を明らかにした。灰については、ダイオキシン類濃度を測定するとともに、水銀、六価クロムについて、土壌汚染対策法の19号含有量試験、溶出量試験を実施した。また、歯科患者から歯科充填物を採取し、重量や水銀濃度を分析し、経年変化を解析した。さらに、PBPKモデルにより、水銀のヒトに対する健康リスク評価を実施した。最後に、火葬炉低煙突から排出される有害物質の拡散を主にMETI-LISモデルを用いてシミュレートし、その影響を把握した。

結果と考察
排ガス中ダイオキシン類は、熱交換器で再合成が確認された。また、バグフィルターで最大85%、触媒装置で最大93%除去された。排ガス中水銀は、触媒装置、活性炭吸着設備にて70%以上の除去率が見込めるが、バグフィルターでの除去は安定性に欠けた。排ガス中クロムは、バグフィルターにて、少なくとも75%以上の除去率が見込めた。灰中の六価クロムは、ほとんどのサンプルの溶出量が基準を1.4-1,800倍超過した。
24検体の歯科充填物の分析により、アマルガム処置歯あたりの初期水銀量は91mg/本程度であり、経過年数とともに水銀が約5.5μg/dayの割合で減少していることが明らかとなった。無機水銀の健康リスク評価では、歯科アマルガムからの曝露に起因する尿中排泄量は、腎障害を懸念するレベルにはないことが推定された。
火葬場の拡散シミュレーションにおいて、火葬場建物自身や煙突遮蔽物の影響を考慮した場合、火葬場の新旧に係らず、低煙突構造により最大着地濃度が高くなるとともに、出現地点も火葬場近傍となることが明らかとなった。
結論
・ダイオキシン類の排出原単位は、加重平均を考慮し、算術平均値は2,390ngTEQ/体と算出され、従来の原単位の57%程度まで低減しており“排出削減対策指針”の効果が伺えた。
・排ガス中水銀の除去には、バグフィルター+活性炭吸着設備による除去が最も望ましいと考えられた。
・灰中クロムは炉内のステンレス架台に由来すると考えられたが、溶出抑制は現時点で困難であり、灰の処理を徹底するべきである。
・アマルガム中の水銀は、時間経過とともに減少するが、体内に移行した水銀は、健康リスクを懸念するレベルではない。
・火葬場における煙突は、有害物質の拡散を促すため、可能な限り高くし、遮蔽物を設置しないほうが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-

文献情報

文献番号
200942027B
報告書区分
総合
研究課題名
火葬場における有害化学物質の排出実態調査および抑制対策に関する研究
課題番号
H20-健危・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 信生(立命館大学 総合理工学研究機構 エコ・テクノロジー研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森澤 眞輔(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座)
  • 森田 章介(大阪歯科大学口腔外科学第一講座)
  • 米田 稔(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境リスク工学講座)
  • 高岡 昌輝(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座)
  • 中山 亜紀(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境リスク工学講座)
  • 大下 和徹(京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻環境デザイン工学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、火葬場から排出される有害化学物質の実態を明らかにし、その排出抑制策を検討することを目的とした。
研究方法
延べ11箇所の火葬場にて、排ガス、灰中のダイオキシン類、水銀などの重金属等について、その排出や、挙動を実態調査した。
また、水銀の由来とされる歯科アマルガム充填物を分析するとともに、PBPKモデルを構築して、水銀のヒトに対する健康リスク評価を実施した。
さらに、火葬炉低煙突からの有害化学物質の拡散を主にMETI-LISモデルを用いてシミュレートし、その影響を把握した。

結果と考察
ダイオキシン類の大気への排出原単位は、1,000-2,390 ngTEQ/体と算出された。特にバグフィルター、触媒装置等での除去効果は高いが、熱交換器では再合成が生じるため、注意が必要である。水銀は、大気への排出原単位は31.4-36.9mg/体と算出された。歯科アマルガム由来と考えられる高濃度Hgのピークが幾つかの火葬でみられた。灰中の六価クロムは、ほとんど全てのサンプルの溶出量が基準を1.4-1,800倍超過した。
歯科充填物の分析より、アマルガム処置歯の初期水銀量は約91mg/本であり、経過年数とともに水銀が約5.5μg/dayで減少していることが示唆された。これを元に、歯科治療歴から求めた水銀の大気排出量を見直し、排ガス測定により求めた大気排出量との整合性を確認した。無機水銀の健康リスク評価では、歯科アマルガムからの曝露に起因する尿中排泄量は、腎障害を懸念するレベルにはないことが推定された。
火葬場排ガスの拡散シミュレーションにおいて、火葬場建物自身や煙突遮蔽物の影響を考慮した場合、火葬場の新旧にかかわらず、低煙突により最大着地濃度が高くなるとともに、出現地点も火葬場近傍になることが明らかとなった。
結論
・ダイオキシン類の排出原単位は、加重平均を考慮し、1,000-2,390 ngTEQ/体と算出され、従来の原単位の57%程度まで低減しており“排出削減対策指針”の効果が伺えた。
・アマルガムに由来する高濃度水銀排出のケースを含め排ガス中水銀の除去には、バグフィルター+活性炭吸着設備によるプロセスが最も望ましいと考えられた。
・灰中のクロムは炉内のステンレス架台に由来すると考えられたが、溶出抑制は現時点では、困難であり、灰の処理を徹底するべきである。
・歯科アマルガム中の水銀は、時間経過に伴い減少するが、体内に移行した水銀は、健康リスクを懸念するレベルではない。
・火葬場における煙突は、有害物質の拡散を促すため、可能な限り高くし、遮蔽物を設置しないほうが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2010-08-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
火葬場におけるダイオキシン類、水銀、クロム等の排出挙動、形態に関して基礎データを得ることができた。特に、1.形態別連続水銀分析装置を用いて、水銀は0価で排ガス中に移行し、歯科アマルガム由来の水銀が無視できないこと、2.火葬灰中のクロムのX線吸収分光分析により、灰中のクロムは金属状あるいは6価で存在することを明らかにした。
火葬場からの有害物質排出状況は、特に、水銀、六価クロムについて世界的にもデータが不足しており、国際的にも貴重な知見が得られており、今後国外への情報発信を積極的に行っていく。
臨床的観点からの成果
ダイオキシン類、水銀、クロムに関しては、大気への排出量、灰への排出量を算出した。またそれを基に低煙突からの有害物質排出の拡散シミュレーションを実施した。これらのデータは、それらの健康リスクへの影響や、環境リスク問題を提起し、低減対策に繋げることができる。
また、口腔内歯科充填物に由来する無機水銀の健康リスク評価をPBPKモデルを構築することにより実施し、現時点では、人体への健康影響は懸念されるレベルではないことが明らかとなったが、このモデルを他の有害化学物質へ援用することも可能である。
ガイドライン等の開発
本研究で得られた成果のうち、調査結果により試算された火葬場からのダイオキシン類の排出インベントリーは平成12年以降のダイオキシン類排出削減ガイドラインの効果を示す基礎データであり、現在公表されている値を見直す一つのデータとなる。本研究では、厚生労働省が実施したアンケート結果と、実測データを用いて類型別に加重平均により求めており、より厳密な値を算出することが可能となった。
水銀の排出インベントリーにおいても、国内の水銀インベントリーを見直す最新のデータであり、有用な活用が期待される。
その他行政的観点からの成果
総合報告書の最後に、本研究での全ての成果をまとめ、主に、ダイオキシン類、水銀、六価クロム、低煙突構造に関して、現時点における“火葬場からの有害物質排出抑制に関する対応策”を作成し、掲載した。今後、全国の火葬場にて、この対応策が参考とされれば、有害物質の排出抑制がより一層進むものと考えられる。
その他のインパクト
2009年1月19日(月)読売新聞夕刊に、本研究の成果の一部が掲載された。また2009年11月18日には、環境新聞にて、本研究に関する特集が組まれた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
武田信生、高岡昌輝、大下和徹
火葬炉から排出される有害物質の実態調査とその抑制対策
環境工学研究論文集 , 45 , 259-270  (2008)
原著論文2
武田信生、高岡昌輝、大下和徹、江口正司
火葬場から排出される六価クロムの実態と由来の調査および排出抑制対策
環境工学研究論文集 , 46 , 377-388  (2009)
原著論文3
M. Takaoka, K. Oshita, N. Takeda, S. Morisawa
Mercury emission from crematory in Japan
Atmospheric Chemistry and Physics , 10 , 3665-3671  (2010)
原著論文4
M. Takaoka, N. Takeda, K. Oshita, S. Eguchi
PCDDs/DFs and PBDDs/DFs Emissions from Crematory
Organohalogen Compounds , 71 , 848-853  (2009)

公開日・更新日

公開日
2017-08-03
更新日
-