水の摂取・利用が健康障害の予防及び健康増進効果に及ぼす影響について

文献情報

文献番号
200942024A
報告書区分
総括
研究課題名
水の摂取・利用が健康障害の予防及び健康増進効果に及ぼす影響について
課題番号
H20-健危・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 芳照(東京大学 大学院教育学研究科(研究院))
研究分担者(所属機関)
  • 長岡 裕(東京都市大学 都市工学科)
  • 福島 美穂(水と健康スポーツ医学研究所)
  • 高杉 紳一郎(九州大学病院 リハビリテーション部)
  • 上岡 洋晴(東京農業大学 総合研究所)
  • 岡田 真平(身体教育医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,016,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は水の摂取・利用という観点から、国民の健康づくりに資する実践的な科学的知見と教育啓発資材を提示することを目的とした。
研究方法
【研究1水道設備に関する調査研究】小学校における給水方式の実態調査を行うとともに、児童の水分摂取の手段と影響因子に関するアンケート調査を行った。【研究2水分の摂取不足に伴う健康障害、事故に関する文献調査】新聞記事検索データーベースにより、A.中高年、運動・スポーツ、死亡、脱水等 B.中高年、温泉・入浴、死亡、脱水等をキーワードに検索し、水分不足を関連づける記事を収集・整理した。【研究3A水中運動の効果に関する文献調査】水中運動による治療効果について、非ランダム化比較試験(nRCT)のシステマティック・レビュー(SR)を行い、エビデンスの整理と、各研究の質を評価した。【研究3B水中運動の効果に関する実験研究】中高年女性の水中での前方歩行、側方歩行、各々3段階の運動強度で、酸素摂取量等の生理学的指標を測定した。
結果と考察
【研究1】調査小学校のうち、直結給水方式が約35%であり、うち約14%が主に大都市圏において2000年以降に直結化されていた。児童の水分摂取量のうち約70%が蛇口からの水道水、約30%が家から持参した水筒であった。水筒依存率の高い学校のほとんどで水道水を飲む必要がないと考えており、水道水に対する学校の意識を変える必要性が示唆された。【研究2】記事内容から中高年の運動・スポーツ、温泉・入浴中の重大事故は、飲酒及びそれに伴う利尿による水分喪失と水分補給の不足が強く関与していることが示唆された。飲酒後の運動・スポーツの抑止、飲酒後の温泉入浴の抑止について、社会への教育啓発を一層強くすることが必要と考えられた。【研究3A】適格基準に合致した21編の対象疾患は、膝および股関節の変形性関節症等であり、1つ以上の主要あるいは副次的アウトカムの有意な効果を示していたが、チェックリストでの質評価では、多くの課題が見られた。【研究3B】体重あたり酸素摂取量、15mに要した歩行時間と15mに要した歩数で、歩行方向による差が認められた。
結論
飲水行動は水道施設・設備の状況が影響すること、飲水不足によるとみなされる運動・スポーツや温泉・入浴、飲酒に伴う重大事故は、無理と無知が背景にあることが明らかになった。水中運動は、文献的には運動器疾患の症状軽減に効果があるが一層の質の高い研究が必要であること、実験的には水中歩行の特性、特に歩行方向による運動生理学的差異をよく理解した上で処方・実践する必要があることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2010-06-14
更新日
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