文献情報
文献番号
200942007A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における健康危機に対応するための地方衛生研究所機能強化に関する研究
課題番号
H19-健危・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
研究分担者(所属機関)
- 長井忠則(北海道立衛生研究所)
- 小沢邦寿(群馬県衛生環境研究所)
- 織田肇(大阪府立公衆衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は健康危機発生時に対応するため、原因を迅速に同定する手法を確立するとともに、地研の疫学機能の強化を図ることを目的とする。
研究方法
細菌、ウイルス、化学の各部門で前年度までに確立した検査法について検証等を行った。リアルタイムPCR法を用いた食水系感染症原因菌の検査法について、その検証を実施するとともに、24菌種を同時に検出できる系を開発し、食中毒事例の検体を用いて検証を加えた。ウイルス部門では、呼吸器系ウイルス9属、約230種を検出するマルチプレックスPCR法と、エンテロウイルスを主な対象とするPCR法を、実際の事例について応用した。化学部門では、重金属(ヒ素、カドミウム、鉛、水銀)を対象とし、種々の試料に適用できる標準的な分析法をすでに確立したので、そのマニュアルを作成した。疫学部門では、地衛研における疫学機能についての調査結果を解析するとともに、平時と新型インフルエンザ対応時において地方感染症情報センターに必要な機能について、地方自治体の本庁・保健所・地衛研の職員に対して質問し、結果を集計した。
結果と考察
細菌部門の検査法を検証した結果、従来法である培養法とほぼ同等の結果が得られ、検査時間を短縮できた(5~7日→1日)。次に、呼吸器系ウイルスを検出するためのマルチプレックスPCR法は、従来の細胞培養法と同程度の検出率であるが、検査時間を短縮でき(5-10日→1-2日)、また、分離が困難なウイルスの検出も可能であった。また、脳炎脳症疑い事例について、エンテロウイルス検出PCR法を適用したところ、アデノウイルス検出系の導入により、原因判明率が向上した。重金属の迅速検出法については、マニュアルを作成し、地衛研全体への普及を図った。一方、疫学部門の現状は、自治体間で多様な格差が存在していることが分かり、平時と新型インフルエンザ対応時に感染症疫学部門に求められる業務内容に、大きな相違は特定されなかった。
結論
この研究で確立した、それぞれの網羅的迅速検査法は、従来の手法に比べると大幅に検査時間を短縮でき、早急な原因の特定により住民の健康被害の拡大を防ぐことを期待できる。また、地方衛生研究所の疫学機能の検討から、実施すべき疫学機能の標準的モデルを提示することにより、本庁・保健所にその重要性の認識を高めることが必要であることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2010-06-14
更新日
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