地域の社会情報及び地理情報を加味した健康危機情報の分析と支援システムに関する調査研究

文献情報

文献番号
200942005A
報告書区分
総括
研究課題名
地域の社会情報及び地理情報を加味した健康危機情報の分析と支援システムに関する調査研究
課題番号
H19-健危・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 泰司(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 郡山 一明(財団法人 救急振興財団 救急救命九州研修所)
  • 有川 正俊(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康危機情報分析の支援システムとして、非定型書式のデータをアドレスマッチングして空間情報化する空間ドキュメント管理システム(SDMS)の、ユーザビリティの向上、可視化機能の充実、アノテーション機能および自動情報収集機能の追加などの拡張を行う。また、地形的制約を加味した感染症アウトブレイク図を作製する。さらに、インフルエンザ流行の空間的傾向を発見する分析手法の開発を行う。
研究方法
支援システム:地図データキャッシュ機能、プロジェクト管理機能、空間アノテーション機能について利用実験を通して検討した。ウェブ上の健康危機ニュース情報の自動収集・自動マッピング機能の検討と実装を行った。RSS機能の拡張ならびに、自動通知と自動更新の機能の高度化と、システムの全体の完成度の向上開発を行った。
健康危機情報分析:北九州市の市立小学校を対象として、欠席状況の学校間較差を検討した。また、インフルエンザの流行時空間モデルを構築し、各小学校の欠席数を用いて、地域間の影響の強度となる接触パラメータなどについて、本モデルから非線形最小二乗問題として推計した。
結果と考察
支援システム:地図表示スピードは約10倍程度速くなった。ウェブ上の健康危機ニュース情報の実証実験では、H-CRISISのウェブページに集まる健康危機ニュース群の地図化の自動化を試みた。RSSで情報発信しているサイトから情報を定期的に収集し、ユーザに知らせる機能を実現することができた。
健康危機情報分析:地形を考慮したクリギング図では、区分されたスポット毎に欠席理由が異なっていることが分かった。「標準化欠席比」の有用性を確認した。また、流行モデルでは、影響が強い地域のペアの存在を確認した。また、鉄道で移動可能な地域は、隣接地域間と比較して影響はさほど多くなく、流行拡大には距離的な要因が強いことが判明した。
結論
支援システム: SDMSの完成度を上げ、実利用に耐えうるものに仕上げた。また、RSSの枠組みを用いたウェブ上の健康危機ニュース情報を自動収集・自動通知・自動マッピングの機能の実現と実証実験を行った。
健康危機情報分析:小学校欠席状況による感染症の地域アウトブレイクの把握は可能であることが示された。また、流行の空間的傾向を把握するにあたり、他地域の流行状況を考慮したインフルエンザの時空間流行モデルを構築し、流行における地域間の影響度を分析した。

公開日・更新日

公開日
2010-06-13
更新日
-

文献情報

文献番号
200942005B
報告書区分
総合
研究課題名
地域の社会情報及び地理情報を加味した健康危機情報の分析と支援システムに関する調査研究
課題番号
H19-健危・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
浅見 泰司(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 郡山 一明(財団法人 救急振興財団 救急救命九州研修所)
  • 有川 正俊(東京大学 空間情報科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域空間情報を的確に把握し、健康危機を瞬時に事態を把握し、その原因について推論できるソフトウェアの開発が厚生労働行政上急務である。そこで、空間ドキュメント管理システム(SDMS)を改良し、日常的にも、健康危機発生時の非常時にも利用できる汎用的なシステムを開発した。また、素早い危機兆候把握のために、小学校欠席状況による感染症のアウトブレイクの把握分析、食品災害の発生を空間的・時間的集積性から眺めた原因物質の把握、インフルエンザの空間的な流行推移の分析を行った。
研究方法
SDMSのユーザビリティ向上(地図表示速度向上、ドキュメント管理方法の改善、空間アノテーション機能の導入)、濃淡図機能の追加、情報の自動収集・自動マッピング機能や自動通知・自動更新機能の導入を行ない、実装実験により検証した。また、地形を考慮したクリギング図により異なる原因による流行が分断されていることの検証、メタミドホスが混入した餃子事件を例に受診や問い合わせの相関分析、古典的SIRモデルを空間流行モデルに拡張し実際の小学校欠席率にあてはめて検証を行った。
結果と考察
SDMSのユーザビリティの向上(地図表示速度約10倍、ドキュメント管理の改善、空間アノテーション機能による濃淡図作成の達成)を確認、健康危機の自動収集においては多くのweb構造より1段階以上深いリンクをも含めた収集に有効であることの確認、自動通知・自動更新機能はRSSリーダーの機能を加えての実現ができた。RSSによる情報提供の普及は時間の問題であり、来るべきリアルタイム健康危機情報管理の先鞭となった。また、小学校欠席状況の分析では、標準化欠席比による学校間較差が是正でき、地形を考慮することで欠席理由との対応関係が明確になった。食品災害分析では事件発生経過の空間的・時間的解析から、メタミドホス混入の場が国内流通段階以前にある可能性が示唆された。インフルエンザの流行分析では、流行拡大に大きい影響のある地区の存在、鉄道などの公共交通機関の影響などが示された。
結論
SDMSを実利用に耐えうるシステムに仕上げた。ダウンロードサイトを設けて、普及に努める。健康危機の早期対応に時空間把握は非常に有益である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200942005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
健康危機情報の支援システムの開発と健康危機情報の空間分析を行った。非定型書式のデータを高い精度でアドレスマッチングして空間情報化する空間ドキュメント管理システム(SDMS)のユーザビリティの向上、可視化機能の充実、アノテーション機能および自動情報収集機能の追加などの拡張を行ない、その有効性を確認できた。また、小学校欠席状況から地形を考慮したクリギングにより感染症の地域アウトブレイクの把握が可能であることが判明した。インフルエンザ流行の時空間流行モデルを構築し、地域間の流行影響度を推定した。
臨床的観点からの成果
標準化欠席比を用いることで、小学校の欠席状況の学校間較差を是正でき、さらに地形を考慮することで、感染原因と整合的な地域的流行状況を把握することができた。メタミドホス入り中国産餃子事件の事件発生経過の空間的・時間的解析からは、メタミドホス混入の場が国内流通段階以前にある可能性が示唆された。インフルエンザ地域的な流行状況から距離的要因および鉄道などの公共交通の要因が示唆された。
ガイドライン等の開発
郡山一明,佐藤元 (2008)『新型インフルエンザ-健康危機管理の理論と実際』や郡山一明,中谷内一也 (2010)「食品災害の危機管理:リスクの着目点と具体策」などにより、研究成果をわかりやすく伝えた。
その他行政的観点からの成果
小学校欠席状況データの地域健康危機管理への活用例として、本研究において2007年度より、小学校欠席率の分布図をクリギングによる空間補間で作成し、インフルエンザ流行地図として仙台市へ提供し、webで情報を公開している。特に平成21年度は、新型インフルエンザ対策として、例年よりも早い夏休み明けの9月より、欠席調査を開始し、新型インフルエンザの流行時期における推移の様相を捕捉することに成功した。これは、有効なサーベイランスのモデルとして、全国の都市にも応用可能な貴重な資料と位置付けられる。
その他のインパクト
空間ドキュメント管理システム(SDMS)の利用方法について、全国保健所長の研修会などで説明するなど、啓蒙にも努めた。結果として、利用者からの問い合わせも多くあり、システムのユーザビリティ向上課題の優先度の把握などに活用できた。開発されたシステムは一般にも使えるよう、webでダウンロードできるようにする。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
仙台市のwebで成果を公開
その他成果(普及・啓発活動)
2件
郡山一明,佐藤元 (2008)『新型インフルエンザ-健康危機管理の理論と実際』や郡山一明,中谷内一也 (2010)「食品災害の危機管理:リスクの着目点と具体策」

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
浅見泰司,有川正俊,白石陽,他
健康危機管理のための空間ドキュメント管理システム
保健医療科学 , 57 (2) , 137-145  (2008)
原著論文2
郡山一明,片岡裕介,竹中ゆかり,他
健康危機管理と小学校欠席状況サーベイランス
保健医療科学 , 57 (2) , 130-136  (2008)
原著論文3
Masatoshi Arikawa, Kenichi Tsuruoka, Hideyuki Fujita, et al.
Place-tagged Podcasts with Synchronized Maps on Mobile Media Players
The Journal of Cartography and Geographic Information Society , 34 (4) , 293-303  (2007)
原著論文4
Hideki Kaji, Masatoshi Arikawa
pLog: User Generated Media for Personal LBS
Journal of KSISS (Korea Spatial Information System Society) , 11 (2) , 57-64  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-11-24
更新日
-