ナノマテリアルの健康影響評価手法の総合的開発および体内動態を含む基礎的有害性情報の集積に関する研究

文献情報

文献番号
200941024A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの健康影響評価手法の総合的開発および体内動態を含む基礎的有害性情報の集積に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 総合評価研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 津田 洋幸(名古屋市立大学 津田特任教授研究室)
  • 西村 哲治(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 変異遺伝部)
  • 樋野 興夫(順天堂大学 医学部 病理・腫瘍学)
  • 佐藤 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 薬理部)
  • 奥 直人(静岡県立大学 薬学部 医薬生命化学教室)
  • 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 機能生化学部)
  • 宮澤 薫一(物質・材料研究機構 ナノテクノロジー基盤萌芽ラボ フラーレン工学グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
54,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
産業用ナノマテリアルの物理化学的特性を考慮した有害性評価手法の開発が国内外で急務となっていることを受け、本研究では20年度までの研究で得られた成果を基盤としての慢性影響を標的とした評価法開発研究と、国際貢献としてのOECDスポンサーシッププログラムに対応するための基礎的な有害性情報収集の実施を行うことを目的としている。
研究方法
21年度は、慢性影響評価研究として、繊維状粒子による中皮腫誘発の用量と形状依存性に関する研究と動脈硬化促進作用、発がんプロモーション作用に関する研究を行った。基礎的有害性情報の収集としては、体内動態解析の分析感度の向上と皮膚刺激性試験、染色体異常試験を行うと共に、カーボンナノチューブ(CNT)等のマクロファージや神経系細胞に及ぼす影響について検討を行った。
結果と考察
慢性影響研究としては、多層CNT(MWCNT)による中皮腫誘発の用量依存性を病理学的に確認すると共に、ラットN-ERCの有効性確認とマウスELISA系の開発を行った。また、中皮腫誘発の繊維長依存性を検討するために、C60ナノウィスカ(C60NW)を熱処理して、鉄のない長短2種類の非晶質カーボンファイバーを作成した。一方、C60の腹腔内投与により病理学的腎障害の増強の可能性を示したが、単層CNTで報告された動脈硬化促進作用はMWCNTにおいては再現されず、肺発がんプロモーション作用中期検索法においてMWCNTの明確な発がんプロモーション作用は認められなかった。しかし、MWCNT暴露の初代培養マクロファージの培養上清は、肺胞上皮系細胞の増殖を促進した。基礎的有害性情報の収集に関して、体内のC60検出感度を著しく向上させた他、MWCNTによる皮膚刺激性試験の陰性結果と、長いMWCNTによる倍数性細胞の誘発性を確認した。また、CNT懸濁液の調整時に得られる上清にはマクロファージや神経系細胞に対して細胞毒性作用のあることが示された。未熱処理のC60NWは長期培養により細胞内で生分解を受けることが示唆された。
結論
慢性研究では繊維長に依存する中皮腫誘発性とERCマーカや遺伝毒性指標による検討を行える体制が整った。一方、中皮腫以外の慢性影響や急性影響に関して明確な有害影響は検出されていないところであるが、in vitro研究からは培養上清や試料調整中に生成したと思われる成分に間接的な有害作用のあることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-30
更新日
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