ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究

文献情報

文献番号
202402003A
報告書区分
総括
研究課題名
ICD-11の適用を通じて我が国の死因・疾病統計の向上を目指すための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23AB1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 別府 志海(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
  • 石井 太(慶應義塾大学経済学部)
  • 篠原 恵美子(山田 恵美子)(東京大学 医学部附属病院)
  • 大津 唯(埼玉大学 大学院人文社会科学研究科)
  • 丸井 英二(順天堂大学 医学部)
  • 木下 博之(科学警察研究所)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院 医学系研究科 公共健康医学専攻保健社会行動学分野)
  • 野口 晴子(早稲田大学 政治経済学術院)
  • 奥山 絢子(聖路加国際大学大学院看護学研究科)
  • 成田 瑞(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所行動医学研究部)
  • 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院 統括研究官)
  • 小川 俊夫(学校法人常翔学園 摂南大学 農学部食品栄養学科公衆衛生学教室)
  • 今井 健(東京大学 大学院医学系研究科 疾患生命工学センター)
  • 今村 知明(公立大学法人奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
  • 東 尚弘(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,912,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ICD-11(国際疾病分類第11版)は2019年5月に世界保健総会で採択され,2022年1月に発効し,日本においては2027年の適用を目指し,現在移行作業が進行中である。本研究はその移行作業に資するべく,長期的,国際的に整合的で,ICD-11の詳細性,多次元性,拡張性を活用し,日本の死亡・疾病の状況を効率的に把握できる新たな死因・疾病分類表を提案し,死因統計,疾病統計,生活機能・介護関連統計の質向上を図ることを目的とする。
研究方法
研究の2年度にあたる令和6年度は,①ICD-11に対応した死因分類案・疾病分類案の作成,②長期的,国際的に整合的な死因統計・分類の整備,③死因統計に関し,老衰記載に関する質的調査,新型コロナウイルス感染症の複合死因分析,心不全,外因死の分析,④疾病統計について,NDBデータを用いた患者・傷病構造の分析,全国がん登録データを用いたがん罹患集計のICD-11適用による影響分析,⑤ICD-11 V章に関し,LIFEデータ,生活のしづらさ調査データを用い,介護分野の評価尺度の標準化の検討,難病・精神症状と生活機能との対応分析を行った。
結果と考察
①昨年度作成した死因分類と同様の方法で、既存の疾病中分類と同粒度の疾病分類を作成した。近年重要となってきた傷病を追加し、患者数の少ない分類を削除することで、疾病中分類は148分類であったところ、新分類案の項目数は151と、増加を3におさえたものとなった。血液がんはICD-11で大きく分類軸が変わったため10と11の分類対応表を作成し比較した結果、ICD-11におけるリンパ系新生物はICD-10における悪性リンパ腫が7割弱を占め、ICD-11における骨髄系新生物は、ICD-10における白血病が半分強を占める、ICD-10分類では221傷病のうち、「その他」が1/3を占め多いが、ICD-11分類ではその他は1割程度と減少した。②ICD-9からICD-10への不連続性を4桁分類で再構築し、断絶を補正し、結果をHCDデータベースに掲載した。1875年からの内務省衛生局による死因統計、1899年の人口動態統計による死因統計の全期間の推移を観察するための死因長期推移分類を作成し、1950年(ICD-6)からの年齢調整死亡率を算定した。③老衰記載に関する質的調査では、すでに老衰を死亡診断書にかくべきではないという意識は薄くなっていること、老衰は確かにあり、そのために老衰のみ死亡診断書に書くケースがあること、長く見ている患者でないと老衰とは書かないことなどの意見が聞かれ、老衰を不明確な死因として退けることは適切ではないことが示唆された。新型コロナウィルス感染症の複合死因分析により、2020年から2023にかけて新型コロナウィルス感染症がⅡ欄に記載する割合が増加したことなどが判明した。心不全について、臨床現場の治療診断とICD-11による疾病統計分類の整合性が改善した。低体温、熱中症による外因死において、薬物の関与が一定例認められ、客観的な指標が求められる。④NDBデータにより傷病構造を分析し、総傷病からみて便秘症、不眠症が、「隠れた大病」であることなどがわかった。全国がん登録データにおいて、ICD-10で単一の分類であったがんがICD-11では複数の異なる群に振り分けられる数はICD-10で12分類、8,134件 、全登録件数の0.8%であった。東京ティーンコホートのバースコホートデータ3,171人のうち、問題のあるオンラインゲーム行動が見られなかったのは392人 (24.6%)にとどまり、残りの70%以上の未成年が何らかのオンラインゲーム行動の問題を伴った。⑤ICD-11V章を活用した介護分野の評価尺度標準化を進めるため、Barthel IndexとWHODAS両尺度の得点換算表の案が作成できた。「生活のしづらさ調査」を用い、難病・精神症状と生活機能との対応を明らかにした。
結論
ICD-11に対応した死因・疾病分類案を作成し、死因統計、疾病統計、生活機能・介護に関わる統計に関する分析をそれぞれ進めた。最終年度では、複合死因・複合傷病データを用いたICD-11分類の分析、老衰の質的調査の結果による死亡診断書・死体検案書の記入マニュアル・研修モジュール改定への提言、ICD-11適用に関する国際的な動向の把握と日本の状況の発信を行う。長期的な死因統計の整備、複合死因分析、外因死分析、全国がん登録データによるICD-11適用の影響分析、精神疾患のICD-11分類別分析、ゲーム障害の実態把握、V章に関わる生活機能・介護関連統計の分析、標準病名のICD-11対応の開発も継続して進める。

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202402003Z