DPCデータを用いた入院医療の評価・検証及びDPCデータベースの利活用に資する研究

文献情報

文献番号
202401019A
報告書区分
総括
研究課題名
DPCデータを用いた入院医療の評価・検証及びDPCデータベースの利活用に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 ベンジャミン光一(学校法人 国際医療福祉大学 大学院医学研究科 赤坂心理・医療福祉マネジメント学部 医療マネジメント学科)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 阿南 誠(川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部)
  • 康永 秀生(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学)
  • 藤森 研司(東北大学 大学院医学系研究科 公共健康医学講座医療管理学分野)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 堀口 裕正(独立行政法人国立病院機構 本部 総合研究センター診療情報分析部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
DPC/PDPS(診断群分類包括評価)は、日本の急性期入院医療における中心的な評価制度であり、令和4年4月時点で全国1,764病院が対象、急性期病床の約85%をカバーしている。DPCデータを提出する病院は5,500を超え、回復期・慢性期医療にも広がっている。制度は2年ごとに見直され、迅速なデータ解析が求められている。また、令和4年度の健保法改正により、NDBや介護DBとの連結解析が開始され、令和6年度からは共通ハッシュIDによる個人単位での連結が可能となった。これらを踏まえ、本研究では以下の3点を目的とした。①診断群分類の検証・見直しを含むDPC/PDPSの安定的な運用のための研究、②DPCデータを活用した入院医療の評価体系の検証に資する研究、③他データベースとの連結を含むDPCデータベースの適切な運用・活用に資する研究である。令和6年度は課題整理やデータ提案、連結解析の検討を進め、令和7年度には制度改善案の提案を目指す。
研究方法
約1,300病院と個別契約を結び、過去10年間・約8,000万件のDPCデータをクラウド上で構築・分析した。必要に応じて第三者提供による集計や追加データも取得した。①の研究では令和6年度改定前データを用い、臨床専門家の意見を反映しながら、次期(令和8年度)改定に向けた課題整理と検討を実施。CCPマトリックスや医療機能評価方法の見直しを行った。②では急性期・回復期・慢性期を対象に、DPCデータによる疫学的・質的評価を実施し、評価指標や入力負荷の見直しを含むデータ精緻化を図った。③では、共通ハッシュID(ID5)を活用し、NDBや介護DBとの連結解析に関する技術的課題と安全性を検討し、HICを通じたサンプリングデータの作成、安全な運用手法も整備した。
結果と考察
①の研究では、ICD-10からICD-11への移行に伴う影響を評価し、上位分類では問題ないが、様式1対応には課題が残った。定義テーブルやコーディングの影響分析も行われ、システムベンダーや審査支払機関を含む広範な対応の必要性が示された。クラウド環境を活用し、分析に適したデータセット整備が進められた。②の研究では、DPCデータを用いて全国的な医療実態や治療効果、医療資源の活用状況を分析。ロタウイルスワクチン接種率上昇に伴う胃腸炎入院の減少、癒着防止材の有効性、抗菌薬の適正使用、高齢者肺炎に対するホスピタリストや早期リハビリの効果などが示された。2024年には31本の英文原著論文が発表され、関節リウマチにおけるMTXのリスク因子、大腸癌診療のCOVID-19下での変化、寄生虫症の地域差、高齢女性股関節骨折での低栄養の影響など、多様な知見が得られた。③の研究では、延べ300人が受講したセミナーで、BIツールを用いた実習やマスターコード整備が行われ、医療の質向上に貢献した。また、高齢者の入院パターン分析では、自宅群は男性・がん・併存疾患が多く、施設群は女性・認知症・要介護度が高い傾向があった。認知症患者では誤嚥性肺炎などの臨床アウトカムが不良で、在院日数や医療費が増加していた。正常分娩に関しては、欧州諸国と同等の医療費ながら在院日数が長く、保険適用に向けては地域差是正が課題とされた。
結論
本研究は令和6~7年度に実施され、令和8年度以降のDPC制度改定に活用される見込みである。診断群分類の統合・精緻化やコード体系の整備、医療の質評価指標の充実が検討された。ICD-11対応には、標準病名マスターの再整備や多対多のコーディング対応ツールの開発が求められた。地域医療機能評価では、人的資源や医療提供体制を考慮した新たな指標が提案された。また、個人情報保護に配慮しつつ、共通IDを活用した連結解析と安全なデータ提供体制の確立が重要課題として認識された。本研究は、DPC制度の基盤強化と入院医療の質向上、ならびに臨床疫学の発展に大きく貢献する成果を示した。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

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2025-06-27
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収支報告書

文献番号
202401019Z