分析ガイドラインの改定に向けた費用対効果評価における方法論およびツール等の開発に関する研究

文献情報

文献番号
202401016A
報告書区分
総括
研究課題名
分析ガイドラインの改定に向けた費用対効果評価における方法論およびツール等の開発に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24AA2003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 赤沢 学(明治薬科大学 公衆衛生・疫学)
  • 池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部 公衆衛生学)
  • 石田 博(山口大学大学院医学系研究科 医療情報判断学)
  • 大寺 祥佑(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 佐藤 大介(藤田医科大学 医学部 医療政策情報学)
  • 齋藤 信也(岡山大学大学院 学術研究院保健学域 医療倫理学)
  • 下妻 晃二郎(学校法人立命館 立命館大学 総合科学技術研究機構)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
  • 田倉 智之(東京大学大学院 医学系研究科医療経済政策学)
  • 能登 真一(新潟医療福祉大学 医療技術学部)
  • 森脇 健介(立命館大学 生命科学部 生命医学科)
  • 古元 重和(北海道大学 大学院医学研究院 社会医学分野 医療政策評価学教室)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医薬品・医療機器等の費用対効果評価については中央社会保険医療協議会(中医協)の議論の結果、令和元年度から制度的に導入された。企業側の分析、公的分析ともに「中央社会保険医療協議会における費用対効果評価の分析ガイドライン」に基づいて分析が実施される。分析ガイドラインは、共通手法をまとめたものであり、費用対効果評価に関する最新の学術的な見解に基づいて作成される。本研究においては、我が国で実施された費用対効果評価の実例・経験の蓄積、諸外国における分析ガイドラインの動向の調査、最新の学術的な動向、我が国における最新の研究結果等を踏まえて、ガイドライン改定を実施し、そのための費用対効果評価に関する方法論やツールの開発を行うことが目的である。
研究方法
本研究では、1.我が国における費用対効果評価の実例、2.諸外国の動向、3.我が国における学術的な検討(3-1方法論に関するもの、3-2評価ツールに関するもの)といった観点に基づき分析ガイドラインに関する課題を検討し、これを踏まえて分析ガイドラインの改定方針の取りまとめを行う。
結果と考察
1.我が国における費用対効果評価の実例
費用対効果評価制度において分析結果が公表されている計32品目について、健康効用値の取扱いの実態と課題についてまとめた。企業は12の品目における分析で、EQ-5Dで測定した結果を使用し、うち日本人を対象とした測定結果を使用した例は2件であった。他の8品目では、主に日本人ではない対象で測定されたEQ-5Dから得られた回答スコアを一般日本人の価値観に変換するために開発されたアルゴリズムを用いて算出した値が用いられていた。また、プロファイル型尺度で測定されたPROスコアからのmappingにより計算された値を分析に用いている例は、企業では8件あったが、公的分析ではその多くについて、実際には利用可能なEQ-5Dで測定された効用値があるとしてそれが再分析に用いられていた。
2.諸外国の動向
疾患の「重症度」の定量的な捉え方として、海外の制度におけるQALYショートフォール指標に基づく閾値緩和の仕組みを整理した上で、日本において費用対効果評価が実施された品目について試算した。日本の「配慮あり」に該当するがん、希少疾患、小児疾患用の品目がNICEはQALYショートフォールの定量的評価と概ね整合的であることが明らかになった。
また、有効性評価において重要な患者関連エンドポイントに代わる代替エンドポイントの取扱いの現状について海外主要国の医療技術評価機関の評価方法ガイドラインやマニュアルとその関連の文書等を中心に調査、確認した。
3.我が国における学術的な検討
3-1方法論に関するもの
人工知能を費用対効果評価に応用する可能性について検討した。SRの実施や経済評価モデル構築を支援する有力なツールとなる一方で、人間の専門家に完全に取って代わるのではなく、それを補強しサポートする立場にあることを理解する必要がある。また、リアルワールドデータの活用に向けて、データベース研究を客観的に評価するチェックリストを作成し、国内のデータベースを用いた薬剤疫学論文を用いて、そのリストの評価を行った。
介護費用の推計に関しては、NDBと介護DBの連結可能性等について検討し、一定程度は可能であることが示唆されたが、さらに詳細な検証が必要である。
3-2評価ツールに関するもの
国のナショナルデータベース(NDB)を用いて、診療エピソードの推移から対象医薬品の使用に伴って変化する医薬品や診療行為の資源投入量から、比較対照医薬品を推定する方法を検討した。
また、家族などインフォーマル・ケアラーの介護負担を考慮すべき疾患について、費用対効果評価の際に介護者への影響を含めることの議論がある。諸外国のHTA機関においては、ガイドラインに明記されていても、実際の事例はまだ少なく、対応策を決めかねている状況であると理解された。
また、以前の研究で開発した国内で調査されたQOL値に関する論文のデータベースのアップデートを実施した。
 その他の検証として、QALYと障害者・高齢者差別について検討した。また、臨床経済的な観点から、薬剤選択と要介護度の進展との関係を整理した。さらに、我が国における費用対効果評価を実施するための専門人材の育成の状況を検討した。
結論
本研究では、費用対効果評価の学術的な課題について、これまでの評価結果や諸外国の同様の制度における最近の取り組み、さらに分析方法やツールの検討などを行った。これらの検討を踏まえて、次年度研究において、分析ガイドラインの改定作業を行い、提案する予定である。

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-06-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
202401016Z