食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究

文献情報

文献番号
200939048A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介したダイオキシン類等の人体への影響の把握とその治療法の開発等に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-014
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
古江 増隆(九州大学 大学院医学研究院皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 赤羽 学(奈良県立医科大学 健康政策医学講座)
  • 内 博史(九州大学病院 油症ダイオキシン研究診療センター)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 赤峰 昭文(九州大学 大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯内疾患制御学研究分野)
  • 石橋 達朗(九州大学 大学院医学研究院眼科学分野)
  • 岩本 幸英(九州大学 大学院医学研究院整形外科学分野)
  • 古賀 信幸(中村学園大学 栄養科学部)
  • 栄 信孝(九州大学 大学院医学研究院神経内科学分野)
  • 月森 清巳(福岡市立こども病院・感染症センター 周産期医療企画部)
  • 辻 博(北九州津屋崎病院 内科)
  • 徳永 章二(九州大学病院 医療情報部)
  • 中西 洋一(九州大学 大学院医学研究院呼吸器内科分野)
  • 中山 樹一郎(福岡大学 医学部皮膚科)
  • 長山 淳哉(九州大学 大学院医学研究院保健学部門)
  • 松本 主之(九州大学病院 消化管内科)
  • 山田 英之(九州大学 大学院薬学研究院分子衛生薬学専攻分野)
  • 清水 和宏(長崎大学 医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野)
  • 隈上 武志(長崎大学 医学部歯学部附属病院眼科)
  • 吉村 俊朗(長崎大学 医歯薬学総合研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
200,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
油症患者に残存する症状を把握し、ダイオキシン類が生体に及ぼす慢性の影響、その排泄法、症状緩和法を開発する。
研究方法
油症患者の症状、および生体内のダイオキシン類濃度の推移を調べた。コレスチラミドの内服試験とアダパレンの外用試験を行った。また、実験動物や培養細胞を用いて基礎研究を行った。
結果と考察
全身倦怠感、関節痛、面皰、ざ瘡など油症特有の症状は今なお残存していた。血中PeCDF濃度の推移を調べたところ、男性では年齢が高いほど、女性では体脂肪割合が高いほどPeCDFが減少しがたい傾向にあった。血中半減期レベルは6-34年で、一部の対象者では減少が見られなかった。油症児のダイオキシン類TEQ濃度は母親と比して有意に低値で、正常健常人の値と有意差はなかった。また、油症患者の母親から1970-73年に生まれた胎児性油症患児の保存臍帯血中のPCB類濃度は、健常人の児より数倍高濃度であった。
基礎的研究では、TCDD誘導肺傷害マウスモデルにて、マウス肺組織でのSP-D産生が亢進しており、TCDDによる肺胞上皮の傷害を反映していると考えられた。たばこに含まれるbenzo(a)pyrne (BaP)はヒト表皮細胞に作用し、arylhydrocarbon recepotor (AhR)シグナル経路によって生じたreactive oxygen species (ROS)によってIL-8の産生を増加した。抗真菌剤のケトコナゾール(ketoconazole:KCZ)はヒト表皮細胞のAhRシグナルを活性化し、酸化・電化ストレスを軽減するのに重要なタンパクであるNuclear factor-erythroid 2-related 2 (Nrf2)の発現を誘導し、BaPによって誘導されるIL-8とDNA障害のマーカーである8-OhdGの産生を抑制した。さらにBaPは、ヒト気道上皮細胞にも作用してムチンの産生を増加し、患者の咳や痰症状に関与すると考えられた。α-リポ酸はダイオキシン類によって惹起される酸化的ストレスに対しては用量依存的な軽減効果を示した。
結論
2009年度は新たに14名が油症患者と認定された。患者のダイオキシン濃度の推移と母体胎児間の移行動態が明らかになった。ダイオキシンが肺、皮膚表皮細胞に及ぼす影響が明らかにし、ケトコナゾールがダイオキシン類の毒性を軽減する有用な薬剤となりうることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-24
更新日
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