清涼飲料水中の汚染原因物質に関する研究

文献情報

文献番号
200939028A
報告書区分
総括
研究課題名
清涼飲料水中の汚染原因物質に関する研究
課題番号
H20-食品・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
工藤 由起子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 後藤 慶一(三井農林株式会社 食品総合研究所)
  • 大西 貴弘(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安心・安全確保推進研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代では多様な種類の清涼飲料水が製造販売されており、それらの原料や製品の製造・保管方法、加えて消費のされ方も多様である。このため、清涼飲料水に関する諸問題を整理し、安全な製品が消費者に提供・消費されるための要点について検討し、情報を提示することを目的とする。
研究方法
(1)清涼飲料水の腐敗原因微生物の特定のための微生物同定方法の確立では、果汁飲料の汚染カビのひとつで形態学的同定が困難であるFusarium属菌の同定遺伝子指標を検索した。また、真菌数の定量方法として最確数(MPN)法を取り入れた方法を検討した。(2)真菌および(3)細菌の清涼飲料水の汚染と防御方法では、清涼飲料水の微生物を原因とした苦情の現象を検証するために、開封のみまたは口飲みした16種類の清涼飲料水を静置し、飲料中での微生物の発育を解析した。また、分離株を遺伝子工学的手法、形態観察などを併用して同定した。さらに、リムルス試験を清涼飲料水の細菌汚染の迅速検出に応用を試みた。
結果と考察
(1)Fusarium属菌の同定遺伝子指標を検討した結果、βチューブリン遺伝子が比較的適していた。また、真菌数の定量方法についてMPN法を改変し寒天平板培地に塗抹する平板MPN法が、簡便で迅速な優れた方法であることが明らかになった。(2)および(3)開封試験では約2割の検体で主にカビ、口飲み試験では約5割で主に細菌が発育した。口飲みでは人の常在細菌であるCandida、Staphylococcusなど、開封ではCladosporiumなどカビが多く検出された。細菌はpHが高い飲料ほど生育良い傾向だが、カビはあらゆる飲料種で生育した。昨年の苦情事例では原因微生物の約8割がカビであったことから、口飲みよりも開封による微生物の汚染が苦情の原因ではないかと考えられる。また、多くの飲料種で検体の100倍希釈によって阻害がなくリムルス試験によって測定でき細菌数が推定できた。
結論
(1)清涼飲料水の腐敗原因真菌の特定方法のひとつとして、βチューブリン遺伝子が指標となることが明らかになった。また、MPN法を用いた真菌定量方法が開発された。(2)および(3)清涼飲料水の開封時に環境からの微生物汚染が苦情の原因であることが示唆された。リムルス試験による迅速簡易な菌数測定法の可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2010-04-28
更新日
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