暑熱作業時の必要水分補給量に関する研究

文献情報

文献番号
200938009A
報告書区分
総括
研究課題名
暑熱作業時の必要水分補給量に関する研究
課題番号
H20-労働・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 晋一(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 哲(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 人間工学・リスク管理研究グループ )
  • 東郷 史治(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 研究企画調整部)
  • 榎本 ヒカル(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 作業条件適応研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
種々の暑熱条件別の体水分喪失量に応じた必要水分補給モデルの開発を行い、気象データから夏期屋外作業者の暑熱負担を予測するとともに、モデルの妥当性と有効性を実験室実験と現場調査により検証する。これらの結果をもとに各種暑熱作業条件に応じた必要水分補給量のガイドラインを提案する。
研究方法
今年度は、温熱環境の国際規格(ISO7933)に採用されている暑熱曝露時の暑熱負担予測のための数値モデルPredicted Heat Strain(PHS)を用いて、
(1) 日本の夏期気象データをもとに暑熱ストレス指数であるWBGT値別に屋外・屋内作業者の暑熱負担と総水分喪失量の予測、
(2) 15種類の異なる温熱特性をもつ作業服に対する1時間作業におけるWBGT別、代謝率別、暑熱馴化有無別の予測最大総水分喪失量の算出、
(3) 夏期建設業現場労働者の暑熱負担と総水分喪失量の評価、
(4) 人工環境室での被験者実験による必要水分補給量予測モデルとしてのPHSの妥当性の検証、
を実施した。
結果と考察
(1) 日本の夏期の気象データをもとに暑熱ストレス指数であるWBGT値ごとに屋外作業者の暑熱負担と体水分喪失量を予測すると、作業服の断熱性が高いほどWBGTが高い条件では予測深部体温が低下した。作業服の透湿性が低いほどWBGTが高い条件で、予測深部体温が上昇傾向にあった。屋外の気象条件から屋内の温熱環境を推定した結果、屋外の暑熱負担が屋内よりも高かった。
(2) 15種類の異なる温熱特性をもつ作業服に対して、1時間の作業におけるWBGT別、代謝率別、暑熱馴化有無別の予測最大総水分喪失量を算出し、その値をもとづいて暑熱条件別の必要水分補給量の推定表を作成した。
(3)夏季建設作業者の全水分喪失量に対する水分摂取の割合は、推奨値を満足するものではなく、より多量な水分摂取の必要性が認められた。最も暑熱ストレスが高かった時間の平均総水分喪失量は、PHSによる予測水分補給量にほぼ一致した。
(4) 人工環境室での被験者実験により必要水分補給量予測モデルとしてのPHSの妥当性の検証を実施したところ、PHSモデルで予測される水分補給を行うことにより無飲水条件に比べ生理的・心理的負担の軽減が認められた。またPHSモデルは暑熱負担を実測値より安全側に予測していた。ただし、PHSモデルでは、米国政府労働衛生専門家会議(ACGIH)が推奨する飲水条件に比べて心臓血管系の負担軽減効果が低い場合があることも示唆された。
結論
PHSモデルは必要水分補給量の目安として有用だが、さらなる妥当性の検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200938009B
報告書区分
総合
研究課題名
暑熱作業時の必要水分補給量に関する研究
課題番号
H20-労働・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
澤田 晋一(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 国際情報・研究振興センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上野 哲(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 人間工学・リスク管理研究グループ)
  • 東郷 史治(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 研究企画調整部)
  • 榎本 ヒカル(独立行政法人 労働安全衛生総合研究所 作業条件適応研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
種々の暑熱条件別の体水分喪失量に応じた必要水分補給モデルの開発を行い、気象データから夏期屋外作業者の暑熱負担を予測するとともに、モデルの妥当性を実験室実験と現場調査により検証する。これらの結果をもとに各種暑熱作業条件に応じた必要水分補給量のガイドラインを提案する。
研究方法
1年次は、暑熱環境評価の国際規格ISO7933に採用されている暑熱負担予測モデル(PHS)の改良版(PHSm)を作成した。これを用いて、気象データによる夏期屋外作業時の暑熱負担予測とPHSmモデルの妥当性検証の予備的被験者実験を行った。
2年次は、 現行のPHSモデルを用いて、(1)日本の夏期気象データによる屋外・屋内作業者の暑熱負担の予測、(2)15種類の異なる温熱特性をもつ作業服に対する暑熱条件別の予測最大総水分喪失量の算出、(3)夏期建設作業者の暑熱負担と総水分喪失量の評価、(4)人工環境室での被験者実験による必要水分補給量予測モデルとしてのPHSの妥当性の検証、を行った。
結果と考察
1年次は、PHSmによる暑熱作業条件別必要水分補給量の暫定予測表を作成し、被験者予備実験によりPHSmの妥当性が一部確認された。
2年次は、(1) 日本の夏期の気象データをもとにWBGT指数別に屋外作業者の暑熱負担を予測すると、作業服の断熱性が高いほど、WBGTが高い条件で予測深部体温が低下し、作業服の透湿性が低いほど、WBGTが高い条件で予測深部体温が上昇した。 (2) 15種類の異なる温熱特性をもつ作業服に対して予測総水分喪失量を算出し、暑熱条件別の必要水分補給量の予測表を作成した。その結果、水分補給しても体温上昇を防止できない暑熱作業条件の存在が示唆された。(3)夏季建設作業者の水分摂取量は不十分で、より多量な水分摂取の必要性が認められた。最も暑熱ストレスが高かった時間の平均総水分喪失量は、PHSによる予測水分補給量にほぼ一致した。(4)被験者実験によりPHSモデルの妥当性を検証したところ、PHSモデルによる水分補給は無飲水条件に比べ暑熱負担を軽減させた。ただし、PHSモデルによる飲水量では、米国政府労働衛生専門家会議(ACGIH)が推奨する飲水量に比べて心臓血管系の負担軽減効果が低い場合もあった。 また、厚生労働省の平成21年通達にある水分摂取量の目安は概ね妥当であると考えられた。
結論
PHSモデルによる必要水分補給量の暫定ガイドラインを作成した。PHSモデルは水分補給量の目安として有用だが、ACGIHの推奨飲水量より効果が低い場合があり、今後さらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2010-06-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200938009C