文献情報
文献番号
200936167A
報告書区分
総括
研究課題名
新規疾患,IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)の確立のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-難治・一般-112
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
梅原 久範(金沢医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 住田 孝之(筑波大学 医学部)
- 三森 経世(京都大学大学院 医学研究科)
- 坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
- 吉野 正(岡山大学 医学部)
- 岡崎 和一(関西医科大学 内科学)
- 川 茂幸(信州大学健康安全センター)
- 竹上 勉(金沢医科大学 総合医学研究所)
- 友杉 直久(金沢医科大学 先進医療研究部門)
- 正木 康史(金沢医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
従来、シェーグレン症候群、キャッスルマン病、自己免疫性膵炎、などと診断されてきた症例のなかに、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の組織浸潤または腫瘤形成を特徴とする疾患群が存在し、これを我々はIgG4関連多臓器リンパ増殖性症候群(IgG4+MOLPS)と命名した。当疾患の啓蒙度が低く、良性の疾患であるにも関わらず、悪性腫瘍と間違われ治療されてきた経緯がある。今回、当研究班では、IgG4+MOLPSの疾患概念の確立と診断基準の制定を目指す。
研究方法
各臨床診療科エキスパートによる(1)臨床病態解析チームを編成する。診断確定のため、(2)病理診断チームを編成する。自己免疫性膵炎がIgG4関連疾患であることを明確にするために、(3)自己免疫性膵炎チームを組織する。IgG4の病態解析、病因的意義を明らかにするために(4)IgG4病因解析チームを編成する。各年に2度の合同会議により全体の連携を取る。初年度にはIgG4+MOLPS/Miklicz診断基準(案)を設定し、次年度にその感度・特異度を解析する。当該疾患における標準的治療プロトコールを作成する。最終年度には、IgG4関連リンパ増殖性症候群の暫定的診断基準案及び標準的治療プロトコールを当研究班から提案する。
結果と考察
IgG4+MOLPSを強く疑う臨床病態として、(1)対称性の涙腺・耳下腺・顎下腺のいずれかの腫脹、(2)自己免疫性膵炎、(3)炎症性偽腫瘍、(4)後腹膜線維症、(5)生検組織病理診断で形質細胞性リンパ増殖症またはCastleman病の疑いがある。という5項目を抽出した。さらに、a)血清IgG4値>135mg以上、b)病理組織におけるIgG4陽性形質細胞/IgG陽性形質細胞>40%以上という大項目を確認した。IgG4関連自己免疫性膵炎とIgG4+MOLPSに関し、両者には相違および類似性がある。両研究班は密に連携を取り、情報交換と相互の知識の共有を行い、IgG4関連疾患の独自性あるいは同一性を明らかにする。
結論
IgG4+MOLPSは、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞の腫瘤形成あるいは組織浸潤を特徴とする新たな疾患であることが判明した。IgG4+MOLPSは全身の諸臓器に発生しうるため、現時点では単一の診断基準の確定は無理である。当面は罹患臓器毎の診断基準案を策定し、それらの診断基準の整合性の調整、統合性が必要である。また、IgG4関連疾患について、第1線の臨床医への周知が十分ではなく、診断の向上、医療の向上のためにも啓蒙が重要である。
公開日・更新日
公開日
2010-05-20
更新日
-