文献情報
文献番号
202325013A
報告書区分
総括
研究課題名
室内空気汚染化学物質の標準試験法の開発・規格化および国際規制状況に関する研究
課題番号
21KD2002
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
酒井 信夫(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
- 神野 透人(名城大学 薬学部)
- 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所)
- 香川 聡子(横浜薬科大学 薬学部)
- 田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部)
- 金 ヒョンテ(久留米工業大学 建築・設備工学科)
- 伊藤 一秀(九州大学大学院 総合理工学研究院)
- 東 賢一(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
39,821,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
室内濃度指針値既設13物質の代替化学物質による室内空気環境汚染が数多く報告されるようになり,厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課化学物質安全対策室を事務局とする「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会(以下,シックハウス検討会)」では,室内濃度指針値指針値の採用を新たに検討すべき化学物質が提案されている。
室内濃度指針値を策定する際には,対象化学物質の詳細な曝露評価を行うために,妥当性の評価・確認された標準試験法を通知(提示)する必要がある。現在,シックハウス検討会が示す室内空気中化学物質の採取方法と測定方法は,2001年に通知(医薬発第828号 平成13年7月25日付 厚生労働省医薬局長通知)された方法であり,サンプリング・分析機器等の技術進展に応じた測定方法のリバイスが必要である。また,シックハウス検討会では,室内空気環境汚染実態調査等の結果に基づいて,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質が継続的に示されることになっており,これら化学物質の標準試験法についても行政対応していく必要がある。
室内濃度指針値を策定する際には,対象化学物質の詳細な曝露評価を行うために,妥当性の評価・確認された標準試験法を通知(提示)する必要がある。現在,シックハウス検討会が示す室内空気中化学物質の採取方法と測定方法は,2001年に通知(医薬発第828号 平成13年7月25日付 厚生労働省医薬局長通知)された方法であり,サンプリング・分析機器等の技術進展に応じた測定方法のリバイスが必要である。また,シックハウス検討会では,室内空気環境汚染実態調査等の結果に基づいて,室内濃度指針値の採用を新たに検討すべき化学物質が継続的に示されることになっており,これら化学物質の標準試験法についても行政対応していく必要がある。
研究方法
本研究課題では,① 先行研究(H30-化学-指定-002; 室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の策定およびリスク低減化に関する研究:研究代表者 酒井 信夫)を引き継いで,汎用性の高い室内濃度指針値既設・代替化学物質の標準試験法を開発し,多機関バリデーション試験によりそれらの妥当性を検証する。② ①で開発した標準試験法について,国内および国際規格化を推進する。③ 室内環境汚染化学物質の曝露濃度評価の為のin silico予測モデルを開発した上で,標準試験法に基づいた化学物質濃度測定結果とin silico予測モデルを併用して経気道曝露濃度ならびに経皮曝露濃度を定量的に予測する技術を確立する。また,諸外国における室内空気汚染化学物質に関する最新の規制状況等を調査する。
結果と考察
既存の室内濃度指針値策定物質の測定法について,策定から長い年月が経過していることから,最新の分析技術を基に汎用性の高い標準試験法を新たに開発し,それらについて国内・国際規格化を推進した。今年度の特筆すべき研究成果としては,本研究課題で開発した室内空気中の化学物質の標準試験法をとりまとめて,「室内空気中化学物質の測定マニュアル(統合版)」を作成した。室内空気中のフタル酸エステル類の標準試験法について,現行の国際規格(ISO 16000-33)に組み込むためのDIS(国際規格原案)が2023年8月25日に可決され,FDIS(国際規格最終原案)のステージに移行した。室内環境汚染化学物質の曝露濃度評価の為のin silico予測モデルの開発し,経気道ならびに経皮曝露濃度の定量予測技術を確立した。また,厚生労働省シックハウス検討会におけるリスク評価の際に鍵となる重要なハザード情報をとりまとめた。
結論
新型コロナウイルス感染症の蔓延によって新しい生活様式が定着し,これまで以上に室内空気質が重要視されている。本研究課題は,標準試験法の開発・規格化に卓越した研究者により構成され,室内空気質の実測データの精度と信頼性を高めるため必須となる標準試験法を整備し,室内濃度指針値が策定された際に「公定法」として直ちに提示することにより,タイムラグのない行政施策に貢献した。確立した標準試験法は国内・国際規格化することによって,室内空気環境測定に係る公定法として認知され,広く活用されることが期待される。特に,国際標準化は,室内環境科学分野における国際的貢献のみならず,技術先行性から国際市場で優位に立てるメリットが期待できる。他方,行政施策に直結する指定研究に地方衛生研究所の研究員を積極的に登用することで,標準試験法の実効性を担保する。さらに,若手研究者を積極的に登用し,室内環境科学分野の次世代を担う研究者の育成に貢献した。
本研究課題により得られた成果の行政的利活用として「室内空気中化学物質の測定マニュアル(統合版)」を第27回 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会に提供する予定となっている。標準試験法を用いた詳細曝露評価は,シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会の議論を加速化するものであり,室内空気質の向上に係る行政施策を通じて国民の安心・安全な生活の実現に大きく寄与できる。
本研究課題により得られた成果の行政的利活用として「室内空気中化学物質の測定マニュアル(統合版)」を第27回 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会に提供する予定となっている。標準試験法を用いた詳細曝露評価は,シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会の議論を加速化するものであり,室内空気質の向上に係る行政施策を通じて国民の安心・安全な生活の実現に大きく寄与できる。
公開日・更新日
公開日
2024-10-03
更新日
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