「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及び食薬区分リストの整備に関する研究

文献情報

文献番号
202324019A
報告書区分
総括
研究課題名
「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及び食薬区分リストの整備に関する研究
課題番号
21KC2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 美千穂(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 袴塚 高志(日本薬科大学 薬学部)
  • 大塚 英昭(安田女子大学薬学部)
  • 増本 直子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 政田 さやか(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人が経口的に服用する物について医薬品に該当するか否かの判断は、薬機法に照らして行われるが、その判断に資するよう、「無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日薬発第476号)」(46通知)において「医薬品の範囲に関する基準」が示され、その例示が「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト(専医リスト)」及び「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト(非医リスト)」に掲げられている。本研究の目的は、専ら医薬品たる成分本質を適切に判断するための調査・分析を行い、また、既存の例示リストの見直し・整備を行うことで、無承認無許可医薬品の流通を防止し、国民の健康と安全を確保することである。
研究方法
食薬区分では、その名称で規定される成分本質がどれであるのかを特定すること、またその成分本質についての安全性に関するデータや食経験についての情報等が重要な検討材料となる。各分担研究者は、それぞれの研究対象について、各種の文献、公定書やデータベースなどから情報を抽出してとりまとめ、検討材料とした。グレーゾーンの成分本質についての研究では、文献調査に加えて、必要に応じてLC-MSやNMR等を用いた成分研究を実施した。
結果と考察
「食薬区分の判断に関する検討」として、我が国の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に例示される成分であるかどうか、依頼のあった化学物質等2品目の本質について文献調査等を行った。その結果、両品目について、医薬品の成分本質ワーキンググループでの議論が重要と考えられ、その旨を調査結果と共に報告した。
「グレーゾーンの植物体に関する研究」として、ツツジ科スノキ属のギイマ(Vaccinum wrightii)の成分検討において、毒性を有すると考えられるジテルペン類は得られず、さらなる研究としてEtOAc可溶画分の精査を行う必要があると思われた。毒性の高いナフトキノン類の定量分析法の確立を試みたが、ユグロンやプルンバギンの化合物の構造はMSによる定量分析に適していない可能性が示唆され、更なる検討が必要と考えられた。
「諸外国における食薬区分制度に関する研究」として、専医リスト及び非医リストの成分本質の特性を考慮すると、シンガポールでは保健科学庁(HSA)が所管する中国薬、伝統薬、健康サプリメント、ならびに食品庁(FSA)が所管する食品の特性をもち食事を補うためのサプリメントとして扱われる可能性が高かった。ただし、食品の一種である後者については法的な定義や枠組みはなく、利用されている原材料の種類を把握することはできなかった。そのため、原材料の種類のみではシンガポールの法的な枠組みにおいて何の製品として扱われるのかを判断することは難しいと考えられた。
「食薬区分リストの整備に関する研究」として、キョウチクトウ及びユズリハについて含有成分や健康被害情報、各国での規制状況などを精査し、非医リストから専ら医リストへの移行の必要性を検討した。
結論
研究成果は、厚生労働省医薬局 監視指導・麻薬対策課長よりの通知として公表されるリスト改正のための検討に活用され、グレーゾーン植物体研究の成果は、専ら医・非医薬品成分本質例示リスト整備作業に情報提供され、活用される。

公開日・更新日

公開日
2024-08-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-08-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202324019B
報告書区分
総合
研究課題名
「専ら医薬品」たる成分本質の判断のための調査・分析及び食薬区分リストの整備に関する研究
課題番号
21KC2001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 美千穂(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 袴塚 高志(日本薬科大学 薬学部)
  • 大塚 英昭(安田女子大学薬学部)
  • 内山 奈穂子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 増本 直子(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 政田 さやか(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
  • 登田 美桜(国立医薬品食品衛生研究所  安全情報部第三室)
  • 辻本 恭(東京農工大学 工学府)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
人が経口的に服用する物について医薬品に該当するか否かの判断は,薬機法に照らして行われるが,その判断に資するよう,「無承認無許可医薬品の指導取締りについて(昭和46年6月1日薬発第476号)」(46通知)において「医薬品の範囲に関する基準」が示され,その例示が「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト(専医リスト)」及び「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト(非医リスト)」に掲げられている.本研究の目的は,専ら医薬品たる成分本質を適切に判断するための調査・分析を行い,また,既存の例示リストの見直し・整備を行うことで,無承認無許可医薬品の流通を防止し,国民の健康と安全を確保することである.
研究方法
「食薬区分の判断に関する検討」では,1) 名称,他名等,部位等,備考,2) 学名,基原植物和名等,生薬名,英名等,3) 医薬品としての使用実態,4) 毒性データ,5) アルカロイド,毒性タンパク,毒薬劇薬指定成分等の含有,等の調査項目について検討した.
「グレーゾーンの植物体に関する研究」では,各種クロマトグラフィーによる分画とNMRスペクトルによって成分の単離同定(イヌホオズキ及びギイマ),LC/MS/MSによる定量分析(ツルニチニチソウ及びナフトキノン類),文献調査及び各種データベースを用いた調査(キンコナ属及びレミジア属植物)を行った.「諸外国における食薬区分制度に関する研究」では,各国の公的機関の公表資料を参考に,医薬品と食品の定義,食薬区分に関連した法的な枠組み,ガイドライン等について調査し,概要をまとめた.「食薬区分リストの整備に関する研究」では,令和3年度~5年度にわたり,計10品目について含有成分や健康被害情報、各国での規制状況などを精査した.
結果と考察
「食薬区分の判断に関する検討」として,我が国の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に例示される成分であるかどうか,令和3年度~5年度に依頼のあった22品目について文献調査等を行い,医薬品の成分本質ワーキンググループでの議論が重要と考えられた品目について、その旨を調査結果と共に報告した.
「グレーゾーンの植物体に関する研究」として,イヌホウズキ液果を含む地上部のブタノール可溶画分の検索を行い,スピロ型ステロイドが単離されたが、アルカロイドの単離には至らなかった.
さらに、ツツジ科ギイマの葉と材の成分検索を行った.材からは特段の成分は得られなかったが,葉のブタノール可溶画分からは多くの直鎖型ジテルペン,ノルジテルペンの配糖体が得られ,配糖体化でジテルペンが環化する生合成経路から逸脱したものと思われた.また、LC-MS/MSを用いて,キニーネ産生植物,ツルニチニチソウに含まれるアルカロイド類の定性定量分析を行った.毒性の高いナフトキノン類の定量分析法の確立には至らなかった.
「諸外国における食薬区分制度に関する研究」として,専医リスト及び非医リストの成分本質が,が,EU,カナダ,オーストラリア,米国,シンガポールの制度下ではどのように扱われる可能性があるのかについて調査した.その結果,医薬品制度のもとEUではハーブ医薬品,カナダではナチュラルヘルス製品,オーストラリアでは補完医薬品,米国では植物薬(特にOTC薬),シンガポールでは中国薬,伝統薬、健康サプリメントとして扱われる可能性があった.ただし,一概には判断できず医薬品として扱われているか否かを個別に確認する必要があった.一方,医薬品に該当しない場合には,いずれの国/地域でも食品に分類された.しかし,中には医薬品と食品の両方に用いられているものもあり,通常,食品はリスト化やデータベースが整備されていないため,そのようなグレーゾーン(境界)に入るものの扱いについては正確に把握するのは難しいと考えられた.
「食薬区分リストの整備に関する研究」として、シンキンソウ、イボツヅラフジ、ノゲイトウ、ヒメツルツルニチニチソウ、ツルニチニチソウ,ハクトウスギ、コウトウスギ、ウンナンコウトウスギ、キョウチクトウ及びユズリハについて含有成分や健康被害情報、各国での規制状況などを精査し,非医リストから専ら医リストへの移行の必要性を検討した.
結論
本研究の成果は,都道府県衛生主管部(局)長宛「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示の一部改正について」のリスト改正の検討用資料として活用された.グレーゾーン植物体に関する研究の成果は,並行して進めている専ら医・非医薬品成分本質例示リスト整備作業に情報提供され,活用された.

公開日・更新日

公開日
2024-08-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2024-08-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202324019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
令和3年度~5年度に厚生労働省に医薬品該当性の判断の依頼のあった22品目の本質について文献調査等を行い,サラシア・オブロンガ,インドハマユウ等,医薬品の成分本質ワーキンググループでの議論が重要と考えられた品目について,その旨を調査結果と共に報告した.
臨床的観点からの成果
従来、「医薬品的効能効果を標榜しない限り専ら医薬品と判断しない成分本質」の扱いであったセンソウトウ,イボツヅラフジ,シンキンソウ,ノゲイトウ,ヒメツルニチニチソウについて,最新の知見を調査した結果,劇薬相当の強い毒性を有する成分を含有することが明らかにし、これらの結果から,これら5品目を非医から専医に移行する改正案を食薬区分WGに提出した。
ガイドライン等の開発
本研究における調査結果は以下の食薬区分WG(令和3年6月22日,同11月8日,令和4年2月22日,同6月14日,同9月2日,同12月13日,令和5年6月26日,同12月19日)にて審議の参考にされた。
その他行政的観点からの成果
本研究の成果を基礎に食薬区分WGにて議論された結果、以下の通知において「食薬区分における成分本質(原材料)の取扱の例示」の一部改正が行われた。
令和3年11月1日薬生監麻発1101第2号
令和4年2月25日薬生監麻発0225第1号
令和4年10月24日薬生監麻発1024第2号
令和4年12月19日薬生監麻発1219第1号
令和5年2月17日薬生監麻発0217第1号
その他のインパクト
令和5年11月17日(金)に神奈川県にて日本食品化学学会 第39回食品化学シンポジウム「いわゆる食薬区分とそのまわり」を主催し、5人の演者がそれぞれの立場から食薬区分について講演した。100名以上が参加し、活発な討論が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
講演8件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-08-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
202324019Z