と畜・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資するための研究

文献情報

文献番号
202323022A
報告書区分
総括
研究課題名
と畜・食鳥処理場におけるHACCPの検証及び食肉・食鳥肉の衛生管理の向上に資するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
森田 幸雄(麻布大学 獣医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中馬 猛久(鹿児島大学 共同獣医学部)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻 感染症制御学講座)
  • 下島 優香子(東洋大学 食環境科学部)
  • 小関 成樹(北海道大学大学院 農学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
15,119,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国内のと畜場及び食鳥処理場では令和3年6月より「HACCPに基づく衛生管理」が本格施行となった。と畜場及び食鳥処理場の衛生管理体制は導入時のみならず、その後も衛生管理の妥当性を継続的に検証することが必須とされる。本研究では国内のと畜場・食鳥処理場における衛生管理実態や細菌汚染実態に係る調査、病原菌の性状解析等を通じ、現行の衛生実態を把握した上で、包括的なデータ解析を行い、衛生管理システムの効率的・効果的な検証方法設定に繋がる提案を行うと共に、効果的なリスク管理措置を構築するための基礎知見を集積することで、国産食肉・食鳥肉の更なる安全性確保の向上を図る。
研究方法
生産段階として①黒毛和種牛農場のHACCP導入効果、②黒毛和種牛のEHEC保菌調査を、食肉・食鳥肉等消費時の情報検索として③鶏レバーを対象にした病原菌検索、④食肉の食中毒菌の文献検索、➄新しい食品由来病原細菌として注目されているProvidencia属菌の食肉の汚染状況、⑥と畜場・食鳥処理場施設環境分析として環境モニタリングのアンケート調査と施設の協力をえて環境調査を実施した。また、⑦食肉衛生検査所が実施している外部検証データ分析を行った。さらに、⑧フィリピンのと畜場・食鳥処理場の調査を実施した。
結果と考察
黒毛和種牛肥育農場調査では①農場HACCPを導入すると食品(牛肉)の安全性だけでなく、健康的な家畜の生産につながっていること、②と畜場搬入牛のEHECの保菌率は18%(16/90頭)であったが、血清型はOg 5が最も多く6頭から、次いでOg 109が3頭、で、牛が保菌するEHECの血清型は変化している可能性が示唆された。食肉・食鳥肉等消費時の調査として③鶏レバーは55.2%がカンピロバクター陽性を示し、菌数が最も高かった検体で1.3×103 cfu/gを示したが、鶏レバー内部に存在するカンピロバクター菌数は多くはないこと、鶏レバーのサルモネラ陽性率は72.7%と高率を示したが、鶏レバー内部からはサルモネラは非分離であることから処理工程における二次汚染の可能性が高いこと、鶏レバー内部からA. hydrophila や A. sobria などが分離されることが判明した。文献調査により④鶏肉製品中のサルモネラ及びカンピロバクターの食中毒菌の汚染率は、それぞれ16.1%~58.1%及び28.6%~92.2%であること、過酢酸の食中毒菌低減効果を検証する論文が見いだされたが、過酢酸に安定剤として含まれる1-ヒドロキシエチリデン 1,1-ジホスホン酸(HEDP)が食肉に残存する可能性が示されており、過酢酸の使用時の濃度及び暴露時間等の管理をHACCPプランに含めることが外国では推奨されていることが判明した。➄ Providencia属菌の食肉79検体(鶏肉54、豚肉15、牛肉10)の汚染状況を調査したところ59検体(75%;鶏肉47、豚肉8、牛肉4)から分離され、我が国の食肉はヒトのProvidencia感染症の感染源となる可能性が示唆された。と畜場および食鳥処理場における施設環境モニタリング調査では、⑥環境モニタリングを実施した施設数は42機関中88施設(34.5%)で、検査項目は,微生物では一般生菌数が72施設(81.8%)、大腸菌群46施設(52.3%),腸内細菌科菌群38施設(43.2%)であった.作業前後の同一箇所の測定で菌数があまり変わらないこともあることが判明した。と畜場や食鳥処理場の微生物を用いた外部検証の結果から⑦と体の工程管理目標(牛、豚、鳥における一般生菌数、腸内細菌科群数の工程管理目標値として、各とたいでの基準値(通年平均+2SD)。また、食鳥と体のカンピロバクター数の工程管理目標案として、通年平均+2SD (2.4 log) あるいは 欧州基準3.0 logが妥当であると考えられた。海外調査の結果⑧フィリピンでは28日令のブロイラーが主に消費されていること、2019(平成31)年7月にアフリカ豚熱が発生したことから、国内の豚肉の消費量は減少するとともに豚と畜場の衛生状況も豚肉輸出していた時と比べて低くなっていた。
結論
農場HACCP導入効果が明らかとなった、牛が保菌しているEHEC血清型を再調査する必要がある。鶏レバーの文献調査結果及び実験からサルモネラ、カンピロバクターの汚染経路が明らかとなった。Providencia属菌の食肉の汚染実態が把握できた。HACCP導入と畜場・食鳥処理場内での環境モニタリング実態が把握できた。外部検証データ分析から食肉は通年平均±2SDが妥当であり、食鳥と体においては、カンピロバクター数の工程管理目標案として、通年平均+2SD (2.4 log) あるいは 欧州基準3.0 logが妥当であると考えられた。海外の実態を把握することができた。

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-08-29
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収支報告書

文献番号
202323022Z