文献情報
文献番号
202323003A
報告書区分
総括
研究課題名
野生鳥獣由来食肉の食中毒発生防止と衛生管理ガイドラインの改良に資する研究
課題番号
21KA1003
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
前田 健(国立感染症研究所 獣医科学部)
研究分担者(所属機関)
- 壁谷 英則(日本大学生物資源科学部)
- 杉山 広(国立感染症研究所 寄生動物部)
- 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
- 宇根 有美(麻布大学獣医学部)
- 鈴木 康規(北里大学 獣医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
18,938,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、1)野生鳥獣が保有する食中毒の病因物質並びに血液等を介する病原体の汚染状況と異常個体・臓器の病理学的検索に関する研究、2)HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の確立に向け、処理施設での工程毎に健康被害に繋がる恐れのある原因調査と汚染防止・低減に関する研究、3)食品製造や調理段階での食品リスク軽減に関する研究を実施する。
研究方法
本研究班は細菌・ウイルス・寄生虫感染症と病理学、公衆衛生学、食中毒の専門家から構成され、全国の関係自治体・団体を含めた研究協力者の支援を得て、3年間で、1)イノシシとシカにおける病原体汚染状況、並びに抗体保有状況調査、2)狩猟・捕獲・解体の際に発生する様々な食中毒・人獣共通感染症(主に寄生虫)並びに異常個体の探知に資するカラーアトラスの作成、3) 解体処理施設の衛生実態調査並びに衛生管理手法の平準化に必要な事項の整理と改善策の検証、4) 食品製造加工・調理段階での衛生管理実態の把握並びに危害工程の抽出と多彩な調理法に伴う微生物消長を定量的に検証する。本研究成果は野生鳥獣由来食肉における病原体汚染の実態調査等を通じ、その危害防止のための知見を収集し、HACCP制度化に対応した衛生管理手法の確立に資する情報を提供する。
結果と考察
1)イノシシ・シカにおけるE型肝炎ウイルス、SFTSウイルス、SARS-CoV-2の感染状況を調査した。更に、それらをもとに注意喚起のための資料を作成した。また、シンポジウムの開催、講演会、講習会等を通じて野生鳥獣肉に係る情報提供を行った。2)わが国の野生鳥獣肉処理施設で処理された鹿、ならびに猪枝肉の枝肉拭き取り調査を実施した。熟成肉の細菌叢解析による衛生評価を行った。表皮付き熟成の衛生評価のための基礎的研究を行った。3)旋毛虫症、肺吸虫症、マンソン孤虫症という3種類の寄生虫性食中毒を例として取り上げ、その発生状況に関して、2016年以降に食中毒統計に収載されている事例数とレセプト解析に基づく事例数を比較した。わが国で孤虫症を引き起こす条虫は、Spirometra erinaceieuropaeiであるという従来の学説は誤りであり、原因種はSpirometra mansoniとSpirometra asiana(新種)の2種であることが明らかにした。4)野生カモにおけるカンピロバクターの分布実態調査,および本菌をカモ肉に接種しての低温加熱調理による消長の定量的評価を実施した.5)ジビエのカラーアトラス あぶない異常・気をつける異常の作製し、講習会で提示した。協力者より病変の提供を受けてカラーアトラスコンテンツの充実を図った。6)野生鳥獣及び解体後食肉からの黄色ブドウ球菌及び薬剤耐性菌の分離とゲノム解析の実施した。
結論
本研究では、野生鳥獣が保有する食中毒の病因物質並びに血液等を介する病原体の汚染状況と異常個体・臓器の病理学的検索に関する研究として、①野生鳥獣が保有する病原体(ウイルス)の汚染状況に関する研究、②野生鳥獣が保有する食中毒細菌の汚染状況と薬剤耐性に関する研究、③野生鳥獣が保有する病原体(寄生虫)の汚染状況に関する研究、④異常個体の病理組織学的検索とカラーアトラスの充実、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の確立に向け、処理施設での工程毎に健康被害に繋がる恐れのある原因調査と汚染防止・低減に関する研究として、⑤処理施設における解体処理工程での微生物汚染防止に関する研究、食品製造や調理段階での食品リスク軽減に関する研究として、⑥食品製造や調理段階における食品リスクの軽減に関する研究を実施し、それぞれ成果を得た。また、得られた成果を、カラーアトラス、感染症対策資料としてまとめ、関係者に情報提供するとともに、シンポジウム・講演会・研修会等で情報提供とともに対策の重要性を伝えた。
公開日・更新日
公開日
2024-09-04
更新日
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