テレワークの常態化による労働者の筋骨格系への影響や生活習慣病との関連性を踏まえた具体的方策に資する研究

文献情報

文献番号
202322008A
報告書区分
総括
研究課題名
テレワークの常態化による労働者の筋骨格系への影響や生活習慣病との関連性を踏まえた具体的方策に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22JA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
甲斐 裕子(公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所 )
研究分担者(所属機関)
  • 中田 由夫(筑波大学 体育系)
  • 福田 洋(順天堂大学 先端予防医学・健康情報学講座)
  • 田淵 貴大(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科)
  • 金森 悟(帝京大学 大学院 公衆衛生学研究科)
  • 吉本 隆彦(昭和大学 医学部 衛生学公衆衛生学講座)
  • 渡邊 裕也(びわこ成蹊スポーツ大学 スポーツ学部)
  • 北濃 成樹(公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所)
  • 菊池 宏幸(東京医科大学 公衆衛生学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
3,304,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行(以下、コロナ禍)に伴い、テレワークを導入する企業が急増した。テレワークは感染症予防や多様な働き方に対応できる等のメリットがある一方で、身体活動量低下や筋骨格系への影響、生活習慣病リスクが懸念されている。そこで本研究では、安全衛生に配慮したテレワークを社会で推進することを目的に、課題①全国的なテレワークの状況の把握、課題②テレワークの健康影響の解明、課題③テレワーカーへの介入策の検討を行った。
研究方法
課題①では、全国の約1万8千名の勤労者および上場企業684社のデータを分析した。課題②では、首都圏在住の1000名以上の勤労者の加速度計データ、約300名の身体組成・体力・運動器疼痛に関するデータを分析した。課題③では、介入策の検討にあたり、多職種産業保健スタッフの研究会である産業保健研究会(さんぽ会)での議論を通じて、現場の課題や良好実践を収集した。加えて、先行研究や公的ガイドラインの収集・整理、勤労者へのフォーカスグループインタビュー等を行い、有効性が期待される介入要素を抽出した。介入策の有効性を検証するための研究デザインは、対象者500名を対象としたクラスターランダム化試験とし、介入期間は3カ月間とした。
結果と考察
労働者への調査から、在宅勤務環境の整備が不十分なほど身体症状を持つ者が多く、特に、集中できる場、足元のスペース、温湿度、静けさ、通信環境、気分転換の場の重要性が示唆された。事業所への調査から、テレワークが社会に定着するとともに様々な企業に広がっている一方で、テレワーク従業員に対する安全衛生対策は十分になされてない実態も明らかとなった。テレワークを行う者は、全く行わない者に比べて、強度を問わず身体活動時間が少なく、座位行動が多かった。例えば、テレワークを週5日以上行う者は、総身体活動時間が約70分/日、歩数が約4,000歩/日少なかった。同一個人でも、出勤日と比べて、テレワーク日は、1日あたり平均4,792歩(59.2%)歩数が減少していた。テレワーク頻度と骨格筋指数、体脂肪率、椅子立ち上がり回数、関節等の不調の関連について、性別や年齢別で解析したところ、一部の層でのみ関連が認めれた。コロナ禍から3年以上が経過し、企業がテレワークやオンライン会議などは残しつつも、ポストコロナに舵を切ろうとする状況が見えてきた。企業の実情や課題を踏まえ、テレワーカーへの介入要素は「テレワーク環境改善」「運動不足解消」「腰痛対策」の3つとした。社会実装の実現可能性を考慮し、メインの介入ツールは動画およびメールとした。計27個(各要素で5~12個)の動画を準備した。主に就業時間内での閲覧を想定し、動画の時間は5分以内で作成した。倫理審査委員会の承認を経て、プロトコルを臨床試験登録した。介入企業をリクルートし、複数の企業からの協力を得て、3月より介入研究をスタートさせた。
結論
テレワークは様々な企業に広がっており、社会に定着してきている。その一方で、テレワーク従業員に対する安全衛生対策は十分とは言い難い。特に、在宅勤務環境が整っていないことは身体症状の悪化につながる。また、テレワークは身体活動を低下させ、歩数については、1日4,000歩以上も減少することが明らかとなった。テレワーカーに対する介入コンテンツは、ポストコロナに向けた企業の動きを踏まえる必要があると考えられた。今後は、本研究で開発した介入手法について、有効性や実装アウトカムの視点からも評価し、社会実装を見据えた介入策の提言につなげていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-01-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202322008Z