難治性血管炎に対する血管再生療法の多施設共同研究

文献情報

文献番号
200936006A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性血管炎に対する血管再生療法の多施設共同研究
課題番号
H19-難治・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 弘明(京都府立医科大学 大学院医学系研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 簑田 清次(自治医科大学 医学部)
  • 天野 純(信州大学 医学部)
  • 相澤 義房(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 石ヶ坪良明(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 宮本 正章(日本医科大学 大学院)
  • 藤本 和輝(国立病院機構 熊本医療センター心臓血管センター)
  • 堀江 卓(特定医療法人北楡会札幌北楡病院 外科)
  • 高橋 将文(自治医科大学 分子病態治療研究センター バイオイメージング研究部)
  • 伊澤 淳(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性血管炎は従来の治療法が無効であり、重症例では虚血性壊疽を来して指趾切断に至ることもある。本研究では、バージャー病や膠原病・リウマチ性疾患に関連する難治性血管炎を対象として、自己骨髄または末梢血由来の単核球移植による血管再生療法の有効性と安全性を検証することを目的として多施設臨床研究を行った。
研究方法
  平成19年度より実施されている全国9施設における多施設臨床試験を継続した。今年度新たに治療した16例(22肢)は、バージャー病 11肢、強皮症 3肢、結節性多発動脈炎 3肢、顕微鏡的多発血管炎 1肢、慢性関節リウマチ 2肢、その他 2肢である。治療後の改善度は、臨床症状(しびれ、冷感、疼痛レベル)、潰瘍サイズ、足関節上腕血圧比、指尖毛細血管顕微鏡、サーモグラフィー、経皮酸素分圧や皮膚組織灌流圧などを指標として各施設において評価した。
結果と考察
 今年度の観察期間中には全ての新規症例で治療効果が認められた。また昨年度までの施行例の評価を継続し、特に強皮症において高い有効性を確認した。また自己末梢血由来単核球を用いた血管再生療法も、骨髄単核球とほぼ同等の有効性が示された。今年度に観察された有害事象は、治療後の軽度の発熱、めまいや悪心と局所の腫脹など軽微であり、いずれも治療を要することなく自然軽快した。閉塞性動脈硬化症およびバージャー病の血管新生療法が既に先進医療の適用とされているが、新たに膠原病(特に強皮症)に合併する難治性血管炎に対する血管再生療法の臨床応用が期待される。
結論
 バージャー病や膠原病・リウマチ性疾患に併発する難治性血管炎による重症虚血肢を有する患者に対して、自己骨髄または末梢血由来の単核球移植による血管再生療法の多施設臨床試験を行い、その有効性と安全性が評価できた。平成19年度より3年間の研究成果をまとめて報告する予定である。特に強皮症に合併する難治性皮膚潰瘍には有効性が高く、新規血管再生治療としての確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
200936006B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性血管炎に対する血管再生療法の多施設共同研究
課題番号
H19-難治・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 弘明(京都府立医科大学 大学院医学系研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 簑田 清次(自治医科大学 医学部)
  • 天野 純(信州大学 医学部)
  • 相澤 義房(新潟大学 医歯学総合研究科)
  • 石ヶ坪良明(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 宮本 正章(日本医科大学 大学院)
  • 藤本 和輝(国立病院機構熊本医療センター 心臓血管センター)
  • 堀江 卓(特定医療法人北楡会札幌北楡病院 外科)
  • 高橋 将文(自治医科大学 分子病態治療研究センター バイオイメージング研究部)
  • 伊澤 淳(信州大学 大学院医学系研究科 循環器病態学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性血管炎は従来の治療法が無効であり、重症例では虚血性壊疽を来して指趾切断に至ることもある。本研究では、バージャー病や膠原病・リウマチ性疾患に関連する難治性血管炎を対象として、自己骨髄または末梢血由来の単核球移植による血管再生療法の有効性と安全性を検証することを目的として多施設臨床研究を行った。
研究方法
 全国9施設における多施設臨床試験を継続し、これまでに班員施設で計144例 (153肢)の難治性血管炎患者(バージャー病 74例[79肢]、膠原病関連指趾虚血 70例[74肢])に自己骨髄または末梢血由来単核球移植療法を施行した。膠原病の内訳は、強皮症24例[25肢]、全身性エリテマトーデス12例[13肢]、慢性関節リウマチ6例、混合性結合組織病5例、CREST症候群2例、結節性多発動脈炎5例、顕微鏡的多発血管炎2例、アレルギー性肉芽腫性血管炎2例、その他12例であった。評価項目としては、臨床症状(しびれ、冷感、疼痛レベル[VAS])や潰瘍サイズなどについて検討してその改善度を判定した。
結果と考察
 班員施設での治療例におけるバージャー病の有効率は91.1%(79肢中72肢)、膠原病関連指趾虚血の有効率は82.4%(74肢中61肢)と高い治療効果を認めた。特に強皮症で有効率が高く、91.6%(24例中22例)で症状の改善を認めている。また自己末梢血由来単核球を用いた血管再生療法も、骨髄単核球とほぼ同等の有効性が示された。本治療法による有害事象は、治療後の軽度の発熱、めまいや悪心と局所の腫脹など軽微であり、いずれも治療を要することなく自然軽快した。閉塞性動脈硬化症およびバージャー病の血管新生療法が既に先進医療の適用とされているが、新たに膠原病(特に強皮症)に合併する難治性血管炎に対する血管再生療法の臨床応用が期待される。
結論
 バージャー病や膠原病・リウマチ性疾患に併発する難治性血管炎による重症虚血肢を有する患者に対して、自己骨髄または末梢血由来の単核球移植による血管再生療法の多施設臨床試験を行い、平成19年度より3年間の観察によってその有効性と安全性が評価できた。特に強皮症の難治性皮膚潰瘍には有効性が高く、新規血管再生治療としての確立が期待される。

公開日・更新日

公開日
2010-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 難治性血管炎に対する自己骨髄または末梢血単核球移植による血管再生療法の有効性と安全性を多施設共同研究により検証した。計144例(153肢)の難治性血管炎患者(バージャー病 79肢、膠原病 74肢)に本治療法を施行した。有効性はバージャー病で91.1% (79肢中72肢)、膠原病関連指趾虚血で82.4% (74肢中61肢)と高く、安全性にも問題はなかった。本治療法は自己細胞を用いるため認容性に優れ、有効性も高く、難治性血管炎による重症虚血肢に対する新たな治療法として期待される。
臨床的観点からの成果
 難治性血管炎による重症虚血肢は、薬物治療やカテーテルによる血行再建では治療困難で、虚血による疼痛や潰瘍のため患肢切断に至り、日常生活が障害されることが少なくない。自己骨髄または末梢血単核球移植治療は閉塞性動脈硬化症やバージャー病による重症虚血肢に有効であり、既に先進医療の適用を受けているが、今回の多施設共同研究により強皮症などの膠原病関連血管炎による重症虚血肢にも本治療法が有効かつ安全であることを世界で初めて明らかにした。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
2008年6月、市民公開講座(松本市)を開催し、本研究による血管再生療法を紹介した。2008年第2336号の医療タイムス(長野県版)に本治療法の記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
30件
原著論文(英文等)
73件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
特許公開:(2002-171965)、(2003-250820)、(2006-028085)、(2006-115771)、(2007-001923)
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
 各施設において、膠原病・アレルギー性疾患に合併する難治性血管炎の患者に対し、本治療法を積極的に情報提供した。インターネット上に本研究班のホームページを作成して公開した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Morimoto H, Takahashi M, Ikeda U. et al.
Bone marrow-derived CXCR4+ cells mobilized by M-CSF participate in the prevention of cardiac dysfunction and remodeling after myocardial infarction in mice.
Am J Pathol , 171 , 755-766  (2007)
原著論文2
Ito T, Takahashi M, Ikeda U, et al.
Interleukin-10 expression mediated by an adeno-associated virus vector prevents monocrotaline-induced pulmonary arterial hypertension in rats.
Circ Res , 101 , 734-741  (2007)
原著論文3
Ito T, Takahashi M, Ikeda U. et al.
Adenoassociated virus-mediated prostacyclin synthase expression prevents pulmonary arterial hypertension in rats.
Hypertension , 50 , 531-536  (2007)
原著論文4
Shiba Y, Takahashi M, Ikeda U. et al.
M-CSF accelerates neointimal formation in the early phase after vascular in jury in mice: The critical role of the SDF-1−CXCR4 system.
Arterioscler Thromb Vasc Biol , 27 , 283-289  (2007)
原著論文5
Tatsumi T, Ashihara E, Matsubara H. et al.
Intracoronary transplantation of Non-Expanded peripheral blood-derived mononuclear sells promotes improvement of cardiac function in patients with acute myocardial infarction.
Circ J , 71 , 1199-1207  (2007)
原著論文6
Nomura T, Ashihara E, Matsubara H, et al.
Skeletal myosphere-derived progenitor cell transplantation promotes neovascularization in δ-sarcoglycan knockdown cardiomyopathy.
Biochem Biophy Res Comm , 352 , 668-674  (2007)
原著論文7
Yajima N, Takahashi M, Ikeda U. et al.
Critical Role of Bone Marrow Apoptosis-Associated Speck-Like Protein, an Inflammasome Adaptor Molecule, in Neointimal Formation After Vascular Injury in Mice.
Circulation , 117 , 3079-3087  (2008)
原著論文8
Murayama H, Takahashi M, Ikeda U. et al.
Deficiency of tumor necrosis factor-α and interferon-γ in bone marrow cells synergistically inhibits neointimal formation following vascular injury.
Cardiovasc Res , 80 , 175-180  (2008)
原著論文9
Morimoto H, Hirose M, Ikeda U. et al.
MCP-1 induces cardioprotection against ischaemia/reperfusion injury: role of reactive oxygen species.
Cardiovasc Res , 78 , 554-562  (2008)
原著論文10
Saito Y, Sasaki K, Murohara T, et al.
Effect of Autologous Bone-Marrow Cell Transplantation on Ischemiv Ulcer in Patients With Buerger’s Disease.
Circ J , 71 , 1187-1192  (2007)
原著論文11
Kajiguchi M, Kondo T, Murohara T. et al.
Safety and Efficacy of Autologous Progenitor Cell Transplantation for Therapeutic Angiogenesis in Patients With Critical Limb Ischemia.
Circ J , 71 , 196-201  (2007)
原著論文12
Inoue N, Kondo T, Murohara T. et al.
Therapeutic Angiogenesis Using Novel Vascular Endothelial Growth Factor-E/Human Placental growth Factor Chimera Genes.
Arterioscler Thromb Vasc Biol , 27 , 99-105  (2007)
原著論文13
Watanabe R, Hanawa H, Aizawa Y. et al.
Gene expression profiles of cardiomyocytes in rat autoimmune myocarditis by DNA microarray and increase of regenerating gene family.
Transl Res , 152 , 119-127  (2008)
原著論文14
Kojima S, Fujimoto K, Ogawa H. et al.
Future adverse cardiac events can be predicted by persistently low plasma adiponectin concentrations in men and marked reductions of adiponectin in women after acute myocardial infarction.
Atherosclerosis , 194 , 204-213  (2007)
原著論文15
高橋将文
膠原病関連血管炎に対する血管再生療法
血栓止血誌 , 18 , 344-346  (2007)
原著論文16
Shiba Y, Takahashi M, Ikeda U. et al.
Bone marrow CXCR4 induction by cultivation enhances therapeutic angiogenesis.
Cardiovasc Res , 81 , 169-177  (2009)
原著論文17
Takahashi M, Izawa A, Ikeda U. et al.
Therapeutic neovascularization by the implantation of autologous mononuclear cells in patients with connective tissue diseases.
Curr Pharm Design , 15 , 2778-2783  (2009)
原著論文18
Matoba S, Matsubara H.
Therapeutic angiogenesis for peripheral artery diseases by autologous bone marrow cell transplantation.
Curr Pharm Design , 15 , 2769-2777  (2009)
原著論文19
Kondo K, Shintani S, Murohara T. et al.
Implantation of adipose-derived regenerative cells enhances ischemia-induced angiogenesis.
Arterioscler Thromb Vasc Biol , 29 , 61-66  (2009)
原著論文20
Kawanaka H,Miyamoto M, Mizuno K. et al.
Therapeutic angiogenesis by controlled-release fibroblast growth factor in a patient with Churg-Strauss Syndrome complicated by an intractable ischemic leg ulcer.
Am J Med Sci , 338 , 341-342  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-