難治性炎症性腸管障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
200936001A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
H19-難治・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 守(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 三雄(九州大学大学院医学研究院)
  • 坪内 博仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 今井 浩三(札幌医科大学)
  • 佐々木 巌(東北大学大学院医学系研究科)
  • 上野 文昭(大船中央病院)
  • 藤山 佳秀(滋賀医科大学 )
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学医学部)
  • 岡崎 和一(関西医科大学 )
  • 杉田 昭(横浜市立市民病院)
  • 高後 裕(国立大学法人旭川医科大学)
  • 鈴木 康夫(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 千葉 勉(京都大学大学院医学研究科)
  • 味岡 洋一(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 渡邉 聡明(帝京大学医学部)
  • 松本 譽之(兵庫医科大学)
  • 武林 亨(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
複数のプロジェクトを設定し、我が国における潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の難病克服のための調査研究をおこなった。
研究方法
1) 国民・患者・一般医家への啓発を促進し診療体系の質的向上をはかる、2) 総括的疫学解析により疾患構造変化を追究し多因子疾患としての病因を明らかにする、3) 臨床プロジェクトとして、重症度分類および診断・治療ガイドラインの再整備による診療体系の最新化と、質の高い日本発の臨床研究を推進する、4)患者QOL向上に直結する新しい診断・治療法の開発を目指した基礎研究を推進する、ためのプロジェクトを設定し研究をすすめた。
結果と考察
平成21年度においても着実な進展が得られた。すなわち、啓発・広報・専門医育成プロジェクトでは、国民・患者・一般臨床医・医療従事者に向け本班の研究成果の社会的認知を高めることができた。総括的疫学解析プロジェクト では、我が国におけるIBD基礎疫学指標、および重症度分布や手術率重症度の経時変化の最新値を明らかにしたのみならず、潰瘍性大腸炎のリスク因子として新規のものを明らかにする臨床研究が進展した。多施設間情報ネットワークプロジェクトでは、研究者の連携による多施設臨床研究を複数開始し、CDに対する各種治療の長期効果の評価を目指した研究や、インフリキシマブ製剤のCD手術例に対する術後緩解維持効果の検討など複数の多施設臨床試験がおこなわれた。臨床プロジェクトでは、診断基準や重症度基準、治療指針や診療ガイドラインなどの作成・改訂作業は予定通り期間内に終了した。また、内科的治療の工夫、外科的治療の工夫、新しいデバイスを用いる診療の工夫など、次世代の診療の質的向上のためのシーズ探索と調査研究をおこなった。基礎研究プロジェクトでは、前年度まで推進した「日本人特有の疾患関連遺伝子解析」、「免疫異常機構の解析」、「組織再生修復の解析と治療応用」、「腸内細菌の関与追求」、「炎症による発癌メカニズム解析」の5プロジェクトに、新しく「疾患特異的バイオマーカーの探索」を加え研究が進められた。
結論
研究代表者・分担研究者が協調的研究体制を築くことにより調査研究を包括的に推進することができた。目的に沿った研究成果が確実に挙げられたが、今後のさらなる研究の推進によって、難治性患者に対し、QOLの向上・対費用効果の高い医療の提供を目指した研究が継続されることが強く望まれる。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200936001B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性炎症性腸管障害に関する調査研究
課題番号
H19-難治・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 守(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 三雄(九州大学大学院医学研究院)
  • 坪内 博仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 今井 浩三(札幌医科大学)
  • 佐々木 巌(東北大学大学院医学系研究科)
  • 上野 文昭(大船中央病院)
  • 藤山 佳秀(滋賀医科大学 )
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院)
  • 日比 紀文(慶応義塾大学医学部)
  • 岡崎 和一(関西医科大学 )
  • 杉田 昭(横浜市立市民病院)
  • 高後 裕(国立大学法人旭川医科大学)
  • 鈴木 康夫(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 千葉 勉(京都大学大学院医学研究科)
  • 味岡 洋一(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 渡邉 聡明(帝京大学医学部)
  • 松本 譽之(兵庫医科大学)
  • 武林 亨(慶応義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
複数のプロジェクトを設定し、我が国における潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)克服のための調査研究をおこなった。
研究方法
1) 国民・患者・一般医家への啓発を促進し診療体系の質的向上をはかる、2) 総括的疫学解析により疾患構造変化を追究し多因子疾患としての病因を明らかにする、3) 診療体系を最新化し、かつ質の高い臨床研究を推進する、および4)患者QOL向上に直結する基礎研究を推進する、ためのプロジェクトを設定し研究をおこなった。
結果と考察
啓発・広報・専門医育成プロジェクトでは、本班の研究成果公表のための広報・啓蒙活動をおこなった。各地で市民公開講座や一般医向け教育講座が実施されたほか、炎症性腸疾患患者に社会支援制度や助成制度を解説した冊子や一般医教育のための冊子が配布され、本班の研究成果の社会的認知を高めることができた。総括的疫学解析プロジェクトでは、全国レベルでの患者情報登録・予後追跡データベースシステムを構築し、これを利用した疫学解析・多施設臨床研究をおこなった結果、基礎疫学指標につき最新の推定値が得られた。多施設間情報ネットワークプロジェクトでは研究者連携とデータベース情報共有がすすみ、多施設臨床研究が複数開始された。臨床プロジェクトでは、診療レベル向上をはかるためのコアプロジェクトが精力的にすすめられ当初の計画がほぼ終了した。さらに内科的治療・外科的治療の工夫、新しいデバイスを用いる診療の工夫など、次世代診療の質的向上のためのシーズ探索と調査研究をおこなった。特に、日本独自の技術を利用した診断システム、癌サーベイランスシステムの開発に向けても調査研究が進んだ。基礎研究プロジェクトでは、新規診断・治療法開発を目標としたプロジェクトにつき精力的な研究が進められた。「日本人特有の疾患関連遺伝子解析」、「免疫異常機構の解析」、「組織再生修復の解析と治療応用」、「腸内細菌の関与追求」、「炎症による発癌メカニズム解析」、「疾患特異的バイオマーカーの探索」について、世界的に評価の高い学術誌に多数の論文発表がおこなわれ、成果を広く発信できた。
結論
総括的疫学解析・基礎研究・臨床研究を包括的に推進し、本研究班の成果を基礎としさらなる研究の発展を図ることにより、日常生活までもが制限される難治性患者に対し、QOLの向上・対費用効果の高い医療の提供を目指した研究が継続されることが期待されるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200936001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
総括的疫学解析では、臨床調査個人票改訂と患者情報データベース構築をおこない、これを用いた疫学解析と臨床研究を実施した。この結果、基礎疫学指標の最新値が得られ、また研究班主導の多施設臨床研究が複数スタートした。基礎研究では、「日本人特有の疾患関連遺伝子解析」、「免疫異常機構の解析」、「組織再生修復の解析と治療応用」、「腸内細菌の関与追求」、「炎症による発癌メカニズム解析」、「疾患特異的バイオマーカーの探索」につき研究が進められ、多数の論文発表がおこなわれるなど、調査研究の成果を広く発信できた。
臨床的観点からの成果
診断基準・重症度基準の改訂、エビデンスとコンセンサスに基づく治療指針の整備など、全国規模での診療レベルの質的向上と均一化をさらに推進するためのコアプロジェクトを計画した。また内科治療の工夫、外科治療の工夫、診療ガイドライン作成、癌サーベイランス法の確立新しいデバイスを用いる診療の工夫など、次世代の診療の質的向上と我が国独自の先端技術利用を図るための調査研究をおこなった。
ガイドライン等の開発
診療の均一化と質的向上のため以下を実施した。1)診断・重症度基準の改変では、診断・治療の選択指針を改良するための調査研究をすすめた。クローン病診断基準の改定は、平成21年度に終了した。2)治療指針案は、設置したワーキンググループで議論を重ね改訂した。3)ガイドラインについては、CDの診療ガイドラインは改訂し、日本消化器病学会より公表された。UC診療ガイドラインも2010年度に公表が予定されている。これらを広く公開することで、標準治療の周知促進とともに、医療費の抑制にも貢献することが期待される。
その他行政的観点からの成果
国民・患者・一般臨床医への診断・治療・管理知識の普及を目的とした広報活動をおこなった。平成19-21年度に北海道、兵庫県、福岡県、滋賀県、東京都、徳島県で研究成果報告会を開催し、調査研究の現状を報告した。また北海道地区では、医師会との共催で一般臨床医向けの研究成果報告会も開催した。さらに、患者向けに社会支援・助成制度を解説した冊子「皆さんを支える社会制度とその他の支援」を作成し、一般臨床医向けには内視鏡アトラスと診療指針を総合した冊子「潰瘍性大腸炎・クローン病の鑑別診断アトラス」を編集した。
その他のインパクト
NHK きょうの健康「クローン病 治療の最新事情」、ラジオNIKKEI「医学講座」クローン病の最近の話題、テレビ東京「日医生涯教育協力講座「話題の医学」増加している炎症性腸疾患の最近の話題(特に内科的薬物療法の進歩)」、朝日新聞健康欄、日本経済新聞健康欄、毎日新聞健康欄に、病気に関すること及び研究成果に関して公表した。

発表件数

原著論文(和文)
76件
原著論文(英文等)
207件
その他論文(和文)
326件
その他論文(英文等)
15件
学会発表(国内学会)
524件
学会発表(国際学会等)
157件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
253件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okamoto R, Tsuchiya K, Watanabe M, et al.
Requirement of Notch activation during regeneration of the intestinal epithelia.
Am J Physiol GI & Liver , 296 , 23-35  (2009)
原著論文2
Totsuka T, Kanai T, Watanabe M, et al.
RANK-RANKL signaling pathway is critically involved in the function of CD4+CD25+ regulatory T Cells in chronic colitis.
J Immunol , 182 , 6079-6087  (2009)
原著論文3
Nemoto Y, Kanai T, Watanabe M, et al.
Long-Lived colitogenic CD4+ Memory T Cells residing outside the intestine participate in the perpetuation of chronic colitis.
J Immunol , 183 , 5059-5068  (2009)
原著論文4
Onizawa M, Nagaishi T, Watanabe M, et al.
Signaling pathway via TNFα/NFκB in intestinal epithelial cells may be directly involved in colitis-associated carcinogenesis.
Am J Physiol GI & Liver , 296 (4) , 850-859  (2009)
原著論文5
Tomita T, Kanai T, Watanabe M, et al.
MyD88-dependent pathway in T cells directly modulates the expansion and survival of colitogenic CD4+ T cells in chronic colitis.
J Immunol , 180 , 5291-5299  (2008)
原著論文6
Tomita T, Kanai T, Watanabe M, et al.
Systemic, but not intestinal, IL-7 is essential for the persistence of chronic colitis.
J Immunol , 180 , 383-390  (2008)
原著論文7
Nemoto Y, Kanai T, Watanabe M, et al.
Negative feed back regulation of colitogenic CD4+ T cells by increased granulopoiesis.
Inflamm Bowel Dis , 14 , 1491-1503  (2008)
原著論文8
Fujii F, Kanai T, Watanabe M, et al.
FTY720 suppresses the development of colitis in lymphoid-null mice by modulating the trafficking of colitogenic CD4+ T cells in bone marrow.
Eur J Immunol , 38 , 3290-3303  (2008)
原著論文9
Araki A, Tsuchiya K, Watanabe M, et al.
Single-operator method for double-balloon endoscopy: a pilot study.
Endoscopy , 40 , 936-938  (2008)
原著論文10
Yoshioka A, Okamoto R, Watanabe M, et al.
Flagellin stimulation suppresses IL-7 secretion of intestinal epithelial cells.
Cytokine , 44 , 57-64  (2008)
原著論文11
Tomita T, Kanai T, Watanabe M, et al.
Continuous generation of colitogenic CD4+ T cells in persistent colitis.
Eur J Immunol , 38 , 1264-1274  (2008)
原著論文12
Totsuka T, Kanai T, Watanabe M, et al.
Immunosenescent colitogenic CD4+ Tcells convert to regulatory cells to suppresscolitis.
Eur J Immunol , 38 , 1275-1286  (2008)
原著論文13
Aragaki M, Tsuchiya K, Watanabe M, et al.
Proteasomal degradation of Atoh1 by aberrant Wnt signaling maintains the undifferentiated state of colon cancer.
Biochem Biophys Res Commun , 368 , 923-929  (2008)
原著論文14
Ito Y, Kanai T, Watanabe M, et al.
Blockade of NKG2D signaling prevents the development of murine CD4+ T cell-mediated colitis.
Am J Physiol GI & Liver , 394 , 199-207  (2008)
原著論文15
Kawamura YI, Toyota M, Dohi T, et al.
DNA hypermethylation contributes to incomplete synthesis of carbohydrate determinants in gastrointestinal cancer .
Gastroenterology , 135 , 142-151  (2008)
原著論文16
Endo Y, Marusawa H, Chiba T, et al.
Activation-induced cytidine deaminase links between inflammation and the development of colitis-associated colorectal cancers.
Gastroenterology , 135 , 889-898  (2008)
原著論文17
Nanno M, Kanari Y, Hibi T, et al.
Exacerbating role of γδ T cells in chronic colitis of T-cell receptor alpha mutant mice.
Gastroenterology , 134 , 481-490  (2008)
原著論文18
Tsuchiya K, Nakamura T, Watanabe M, et al.
Reciprocal targeting of Hath1 and β-catenin by Wnt glycogen synthase kinase 3β in human colon cancer.
Gastroenterology , 132 , 208-220  (2007)
原著論文19
Nemoto Y, Kanai T, Watanabe M, et al.
Bone marrow retaining colitogenic CD4+ T cells may be a pathogenic reservoir for chronic colitis.
Gastroenterology , 132 , 176-189  (2007)
原著論文20
Chinen H, Matsuoka K, Hibi T, et al.
Lamina propria c-kit+ immune precursors reside in human adult intestine and differentiate into natural killer cells.
Gastroenterology , 133 , 559-573  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-