統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究

文献情報

文献番号
200935033A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-こころ・一般-010
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
水野 雅文(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 道雄(富山大学大学院 医学薬学研究部 神経精神医学講座)
  • 下寺 信次(高知大学 医学部 神経精神科学教室)
  • 松岡 洋夫(東北大学大学院 医学系研究科 医科学専攻神経・感覚器病態学講座 精神神経学分野)
  • 小澤 寛樹(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 精神神経科学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学 医学 部社会医学講座 医療政策・経営科学分野)
  • 岸本 年史(奈良県立医科大学 精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は我が国における統合失調症の未治療期間(DUP)を明らかにするとともに、その予後との関連を検討することを目的としている。これにより、精神科医療サービスの充実のみならず、公衆衛生学的視点からも施策の立案に活用される。また副次的に、初回エピソード統合失調症の治療戦略についての基礎的資料を得ることも期待されている。
研究方法
東京(東邦大学大森病院、同大橋病院、東京武蔵野病院など)、仙台(東北大学病院など)、富山(富山大学付属病院など)、奈良(奈良医科大学付属病院など)、高知(高知大学付属病院など)、長崎(長崎大学付属病院など)の各都市において、統合失調症の生涯初診患者の精神病未治療期間(DUP)を測定し、その長期予後との関連を検討する。
結果と考察
本報告書執筆時点において、登録症例数は全体で156例(昨年度同時点38例)、このうち追跡研究にも同意を得られている者は60例となった。DUP検討156名(男78名)の背景は、発症年齢30.43±9.9歳、初回受診時年齢32.08±10.3歳、GAF平均36.5±14.5であった。対象症例のうち初診時点において16名が自殺未遂の既往があったこと、図1に示されるようにDUPが治療臨界期を超える36-59月の者が14.3%、60ヶ月以上が8.4%を占めていたことが、特筆される。平均DUPは17.3月、中央値は2.5月であった。
このうち追跡研究にも登録されている60例については、プロトコールに従って6ヶ月時点のアセスメントが実施されている(n=28, 男16名)。結果を表2に示す。DUPを8ヶ月で2分して比較すると、8ヶ月以下の19例(男9例)では、6ヶ月間にPANSS陽性症状スコアの合計点が13.4点改善したのに対し、8ヶ月以上の長期群では改善は4.4にとどまり、DUP短期群で有意な改善が認められた(図2)。今後も初発エピソード統合失調症患者の心性や、前向き研究における登録漏れなどに配慮し工夫しながら研究を進めていく必要がある。
結論
早急に適切な早期受診を確立するためにはDUPや受診経路に関する基礎的資料が必須であり、今後わが国にあっても深い議論とその元となるエビデンスの集積が欠かせない。ここまでの研究でも、対象症例のうち初診時点において約1割である16名が自殺未遂の既往があったこと、報告書内図1に示されるようにDUPが治療臨界期を超える36-59月の者が14.3%、60ヶ月以上が8.4%を占めていたことが、特筆される。

公開日・更新日

公開日
2010-08-31
更新日
-