文献情報
文献番号
202316004A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症者の在宅生活を維持する非訪問型の生活評価・介入システムの標準化に関する研究
課題番号
22GB1001
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(国立大学法人 大阪大学 大学院医学系研究科情報統合医学 精神医学教室)
研究分担者(所属機関)
- 中村 雅之(鹿児島大学)
- 釜江 和恵(繁信 和恵)((財)浅香山病院 精神科医局)
- 石川 智久(熊本大学大学院 生命科学研究部 神経精神科)
- 佐藤 俊介(大阪大学 大学院医学系研究科・精神医学教室)
- 松原 茂樹(大阪大学 大学院工学研究科 地球総合工学専攻)
- 田平 隆行(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系)
- 堀田 牧(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室)
- 永田 優馬(大阪大学 精神医学教室)
- 石丸 大貴(大阪大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
8,610,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、新型コロナウィルス感染蔓延期に、非訪問型の生活評価および生活指導手段として開発・試行したPhoto Assessment(PA)(Ishimaru et al, 2022)およびOnline Management(O-MGT)が、通院・訪問が困難な患者や医療・介護資源が乏しい僻地においても、非訪問型の生活支援システムとして汎用できるよう、PAとO-MGTの実施手順、効果の指標の標準化を目的としている。初年度はPAの標準化を目的に評価指標を検討した。ADLとそのADLに関わる居室をペアとし、観察項目となるADL動作と環境因子の抽出を行い、本研究用の評価モデルとなる暫定版チェックリスト(PA-ADLチェックリスト)を作成した。PA-ADLチェックリストは試行を経て概ね適性があると判断されたが、評価に必要な写真のアングルの統一や解釈を誤りやすい指示文言の改訂が課題となった。今年度は引き続きPAの標準化に向けて、①PA-ADLチェックリスト、②付随して使用する撮影の手引き、③スタッフマニュアル、の妥当性の検証を行い、指摘があった課題の修正も含めて①~③の完成版作成を目的とした。
研究方法
(PA-ADLチェックリスト、撮影の手引き、スタッフマニュアルの妥当性)
前年度の試行を経験した本研究の研究分担者・協力者23名を対象に、①PA-ADLチェックリスト、②撮影の手引き、③スタッフマニュアル、の「わかりやすさ」「有用性」(③は除く)
「使い勝手」に関するアンケートを実施し、回答のあった各項目の同意率70%以上を基準に定めて妥当性を検証した。
(PA-ADLチェックリストの表記課題)
指示表記については、前年度の試行に携わった多職種の意見より、実際に指示解釈に迷いが生じた表記・項目、および客観的な評価を妨げるおそれがある表記・項目を列挙した。PA-ADLチェックリストを作成した本研究分担者・協力者の作業療法士5名によって、評価趣旨が損なわれないことを前提に改訂作業を行った。
前年度の試行を経験した本研究の研究分担者・協力者23名を対象に、①PA-ADLチェックリスト、②撮影の手引き、③スタッフマニュアル、の「わかりやすさ」「有用性」(③は除く)
「使い勝手」に関するアンケートを実施し、回答のあった各項目の同意率70%以上を基準に定めて妥当性を検証した。
(PA-ADLチェックリストの表記課題)
指示表記については、前年度の試行に携わった多職種の意見より、実際に指示解釈に迷いが生じた表記・項目、および客観的な評価を妨げるおそれがある表記・項目を列挙した。PA-ADLチェックリストを作成した本研究分担者・協力者の作業療法士5名によって、評価趣旨が損なわれないことを前提に改訂作業を行った。
結果と考察
結果は、①PA-ADLチェックリスト(回答率60.9%):わかりやすさ79.0%、有用性100%、使い勝手86.0%、②撮影の手引き(回答率82.6%):わかりやすさ89.0%、有用性100%、使い勝手100%、③スタッフマニュアル(回答率82.6%):わかりやすさ100.0%、使い勝手89.0%、であった。PA-ADLチェックリストの「わかりやすさ」「使い勝手」はともに80%前後であった。これは、回答者層において作業療法士・理学療法士が他職種よりも多く占めており、ADL動作や関連環境に関する項目など、従来、ADL評価や住環境評価を専門としているセラピストがより理解しやすい構成だったことと、他職種においては馴染みにくかったことが影響していると考えられた。スタッフマニュアルは概ね全職種の了解を得らえていた。いずれも同意率70%以上を示したことから、修正の前段階であるPA-ADLチェックリスト、撮影の手引きおよびスタッフマニュアルに当性はあると考えられた。次に、指示表記については、「十分に」「少ない」など容量や数量の程度を問う表記、また「トイレに関係のない物が置かれている」など関係性の有無について客観的な判断を問う表記が散見された。いずれも居室写真のみでADL行為に関わる環境因子の根拠に基づいた評価・判断が難しいと考えられたため、程度を問う曖昧な表記は削除し、「トイレ動作を阻害する物が置かれている」など、ADL動作に関わる環境因子を具体的に示す表現に改訂を行った。また、それに付随して、撮影の手引きにある写真撮影の指示表記も統一されていなかったため、建築専門職と協働して居室の撮影アングルや方向、撮影に最低限必要な枚数など、撮影のフォーマットを定めた上で、撮影を行う家族介護者がわかりやすい指示文言に表記を修正した。さらに、居室の撮影順序をPA-ADLチェックリストのADLの順序に合わせて再構成を行い、撮影する各居室ページの左上にチェックボックスを設け、撮影を終えたら印を入れる構成とした。以上の修正を経て、PA-ADLチェックリスト、撮影の手引き、およびスタッフマニュアルの完成に至った。
結論
PA-ADLチェックリストは、ADL動作がその環境下で安全かつ効率的に行うことができるか、居室写真をもとにチェック・評価を行うための指標である。人の生活習慣や生活環境は個々で異なるため、評価者によって解釈に不一致を伴わせない標準的な視点が評価表には求められる。今回の改訂作業によって、PAの標準化が整ったことから、従来のO-MGTを加えた非訪問型介入の実施が可能となった。今後は、研究の対象者に向けたPA評価とZOOM介入の実施を進め、非訪問型の評価・介入システムの効果検証に向けて介入研究を継続する。
公開日・更新日
公開日
2024-06-12
更新日
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