文献情報
文献番号
200933025A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎の核酸アナログ薬治療における治療中止基準の作成と治療中止を目指したインターフェロン治療の有用性に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H21-肝炎・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田中 榮司(国立大学法人 信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 義之(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 肝臓センター)
- 新海 登(名古屋市立大学大学院医学研究科)
- 平松 直樹(大阪大学 大学院医学研究科)
- 豊田 成司(JA北海道厚生連 札幌厚生病院)
- 柘植 雅貴(広島大学 自然科学研究支援開発センター)
- 今関 文夫(千葉大学 医学部)
- 髭 修平(北海道大学病院)
- 八橋 弘(国立病院機構 長崎医療センター)
- 齋藤 正紀(兵庫医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
32,640,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、核酸アナログ薬はB型肝炎治療の中心であるが、同治療はHBVを完全に駆除することはできない。このため、治療中止後の肝炎再燃が問題となっている。本研究班では核酸アナログ薬治療例を対象とし、治療中止基準の作成および治療中止を目指したインターフェロン治療の有用性を検討する。
研究方法
H21年度は後ろ向き研究による核酸アナログ薬中止基準の検討を行った。各施設から登録された136例中、治療中止時HBV DNA 陰性で中止後少なくとも6ヶ月以上経過観察可能であった112例を解析対象とした。血中HBV DNA量、HBe抗原・抗体などの基本的マーカーに加え、HBコア関連抗原量、HBs抗原量、HBV RNA量、HBV遺伝子型、HBV遺伝子変異などの特殊マーカーも検討した。
結果と考察
後ろ向き研究による暫定的な核酸アナログ薬の中止基準を検討した結果、以下の点が明らかになった。(1)HBe抗原陽性例ではHBV DNAが陰性化しても治療を継続すべきである。(2)治療中止後にALT値が80 IU/L以上、またはHBV DNA値が5.8 log copy/ml以上となる場合は再治療を考慮すべきである。(3)中止時にHBe抗原陰性かつHBV DNA陰性の症例では、治療期間、HBコア関連抗原量、HBs抗原量が治療中止後の再燃と有意に関連していた。(4)中止を考える場合の最低必要治療期間の検討が今後必要である。(5)HBe抗原陰性かつHBV DNA陰性の条件を満たしてもHBコア関連抗原またはHBs抗原が高値の場合は治療を継続すべきである。(6)HBe抗原陰性かつHBV DNA陰性の条件を満たし、さらにHBコア関連抗原とHBs抗原が十分低値の場合は比較的効率的に治療を中止できる可能性が示唆された。(7)HBe抗原陰性かつHBV DNA陰性の条件を満たし、さらにHBコア関連抗原とHBs抗原が中間値の群では、今後さらに中止の条件を検討すべきである。個別研究では、中止基準となり得る新しいマーカーの検討が行われ、超高感度HBV DNA測定法、HBV RNA量、ウイルスの遺伝子変異などについてその可能性が報告された。また、核酸アナログ薬とインターフェロンのシークエンシャル治療の検討が開始された。
結論
後ろ向き研究による核酸アナログ薬中止例の解析結果を基に、中止基準作成のための基礎データを得た。今後、暫定的な中止基準作りでは、ウイルスマーカーだけではなく、年齢・性別、肝線維化などの宿主側の要因も加味する必要がある。
公開日・更新日
公開日
2011-06-02
更新日
-