個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究

文献情報

文献番号
200932033A
報告書区分
総括
研究課題名
個別施策層(とくに性風俗に係る人々・移住労働者)のHIV感染予防対策とその介入効果に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
東 優子(大阪府立大学 人間社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榎本てる子(関西学院大学 神学部)
  • 野坂祐子(大阪教育大学学校危機メンタルサポートセンター)
  • 青山薫(京都大学文学研究科 GCOE)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究が対象とする「性風俗に係る人々」および「滞日外国人」については、共にエイズ対策における「個別施策層」であり、「人権に配慮した特別な施策を要する人々」とされながらも、法的問題を主な理由として、当事者ニーズに対応する具体的かつ有効な施策が取られていない。本研究(3年計画)の目的は、当該集団の直面するリスクの実態と感染への脆弱性の諸要因を把握し、介入とその評価を踏まえて、HIV対策の「谷間」を埋める新規モデルを提唱することにある。
研究方法
課題1「性風俗に係る人々のHIV感染予防・介入手法」では、SW当事者団体「SWASH」などを研究協力者に迎え、性風俗業態の今日的主流となっている非店舗型性産業(通称「デリヘル」)従業員女性を対象とする量的調査を実施した(N=377)。課題2「生活困難を抱える女子の性の健康」では、全国の児童自立支援施設の入所児童を対象としたアンケート調査(N=236)を実施した。課題3「関西圏の外国人(とくにSW)のHIV感染予防と介入に関する研究」では、関西圏の外国人コミュニティへのアウトリーチ、留学生対象の量的調査(N=361)を実施した。課題4「SWとの協働による予防介入プログラムの開発と普及に関する研究」では、外国人SWを対象に、予防介入の端緒となるアウトリーチワークと、ドイツ、イギリス、オーストラリアの類似活動および研究に係る人びとからの活動内容・展開方法に関する聞き取りを実施した。
結果と考察
課題1では「非ホンバン系」産業におけるコンドーム不使用の実態とその理由、SWが望む労働環境などが明らかになった。課題2では、児童の性的健康および精神健康に関する調査結果を踏まえ、女子を対象とした介入プログラムを試行的に実施した。課題3では、留学生の性感染症に関する知識の低さ、医療へのアクセスの悪さなどが示唆され、留学生受け入れ計画を実施する日本における支援システムの構築・整備の必要性が明らかとなった。課題4では、そもそもSW当事者が研究者(ひいては厚生労働省エイズ対策研究事業)と、協働する予防介入が有効かつ広く現実のものとなるための課題が把握された。
結論
当該集団のHIV感染脆弱性を高める要因、および本研究を実施するにあたって経験された様々な「困難」は、国際社会でも指摘されている様々な禁止政策や法律など、社会的環境が生み出す阻害要因と一致するものである。SW・外国人当事者を中心とした異職種間・学際的協働による、「当事者参加型」の介入実践の重要性が再確認された。

公開日・更新日

公開日
2010-08-16
更新日
-