文献情報
文献番号
202308026A
報告書区分
総括
研究課題名
若年女性のやせ形成と健康障害の主要因を抽出するための基礎的研究~文献レビュー、実態調査、生理学的解明における包括的調査~
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FA1023
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
緒形 ひとみ(国立大学法人広島大学 大学院 人間社会科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 清野 健(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
- 永井 成美(兵庫県立大学 環境人間学部)
- 能瀬 さやか(小倉 さやか)(ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター スポーツ医学・研究部 スポーツクリニック)
- 吉村 英一(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 栄養・代謝研究部)
- 畑本 陽一(国立健康・栄養研究所 栄養代謝研究部 )
- 木村 桃子(萱場 桃子)(筑波大学 医学医療系保健医療政策学研究室)
- 矢島 克彦(城西大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,880,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究課題では、摂食障害に陥る前段階のやせに焦点を当て、見た目だけを重視したやせ体型の女性が、どのような心理・生理学的な問題を抱えているのかについて明らかにすることを目的とする。
研究方法
1.文献レビュー:若年やせ女性と疾患
2.文献レビュー:若年やせ女性が形成される要因
3.インターネット調査:女子中高生
4.インターネット調査:18~49歳女性
5.生活習慣と体格および月経を含む健康との関係
6.学校保健統計調査のデータ解析
2.文献レビュー:若年やせ女性が形成される要因
3.インターネット調査:女子中高生
4.インターネット調査:18~49歳女性
5.生活習慣と体格および月経を含む健康との関係
6.学校保健統計調査のデータ解析
結果と考察
1.日本語47本、英語62本が採択され、東アジアの報告が最も多かった。ICD10に基づき分類した結果、5章が最も多かった。若年期のやせは初経年齢の遅延や月経困難症に影響するだけではなく、成人期以降においても骨密度・骨量の低下や高血圧などに関連することが確認された。
2.日本語48本、英語69本が採択され、東アジアの報告が最も多かった。やせの要因として東アジアではボディイメージの報告が最も多く、その他の国では環境要因の報告が最も多かった。
3.中高生を肥満度に基づいて分類した結果、やせの者7.8%、標準体型の者87.6%、肥満者4.6%、国際基準のBMIに基づいて分類した結果、やせの者20.6%、標準体型の者74.2%、肥満者5.2%であった。初経年齢は平均12.14歳、アンケート実施時に月経周期異常の者の割合は28.1%、月経困難症の者の割合は26.6%、過多月経の者の割合は11.6%、月経前症候群の者の割合は13.8%であった。無月経の者の割合は26.1%、そのうち婦人科を受診した者の割合は5.5%、月経が止まった期間は3年以上の者も3.1%いた。
4.やせは全体の23.6%、18〜19歳の26.3%、20歳代の27.4%、30歳代の23.0%、40歳代の19.9%にみられた。いずれの年代でも減量希望は60%以上、主観的健康観が低い者は70%以上、四肢などの冷え感ありは40〜50%おり、食生活の情報源としてインターネット上の情報発信者やソーシャルメディアが最も多かった。
5.現在運動習慣のない若年女性を対象に月経4サイクルにわたる日常生活下のモニタリング調査を実施した。骨密度はYAM値と比べ100%未満の人の割合が多く、中学校時代に運動部に所属していた者は有意に骨密度が高かった。睡眠に何らかの問題がある人は、やせ体型で多い傾向、起立性調節障害が疑われる人もいることを見出した。二重標識水法を用いて総エネルギー消費量(TEE)を測定した結果、標準体型者はやせ体型者に比べてTEEは高値であったが、体重あたりのTEEは両者に違いは認められなかった。尿メタボローム解析を行った結果、痩せ体型に特徴的な尿メタボロームが見出され、栄養素摂取状態やエネルギーバランスを評価する客観的指標の確立につながる知見を得た。月経1サイクルにおける睡眠評価を行った結果、やせは不眠や黄体期のメラトニン分泌低下と関連する可能性が示唆された。
6.学校保健統計調査の大規模データを①スケーリング特性を分位点回帰を用いて評価した結果、男性では5~13歳、女性では5~11歳において顕著な多重スケーリング性が見られることを見いだした。②国際肥満タスクフォースが設定したBMIに基づく体格評価基準と、我が国の学校保健統計調査おいて用いられている体格評価基準について、その評価結果の特徴を調べた。その結果、低体重の評価においてIOFT基準を適用した場合、男性11~13歳、女性10~11歳において、顕著な身長依存性が見られた。BMIを用いた判定では、同性、同年齢の群において、身長が下位25%の子どもは、上位25%の子どもと比べて、5倍も多い割合で低体重に分類された。
2.日本語48本、英語69本が採択され、東アジアの報告が最も多かった。やせの要因として東アジアではボディイメージの報告が最も多く、その他の国では環境要因の報告が最も多かった。
3.中高生を肥満度に基づいて分類した結果、やせの者7.8%、標準体型の者87.6%、肥満者4.6%、国際基準のBMIに基づいて分類した結果、やせの者20.6%、標準体型の者74.2%、肥満者5.2%であった。初経年齢は平均12.14歳、アンケート実施時に月経周期異常の者の割合は28.1%、月経困難症の者の割合は26.6%、過多月経の者の割合は11.6%、月経前症候群の者の割合は13.8%であった。無月経の者の割合は26.1%、そのうち婦人科を受診した者の割合は5.5%、月経が止まった期間は3年以上の者も3.1%いた。
4.やせは全体の23.6%、18〜19歳の26.3%、20歳代の27.4%、30歳代の23.0%、40歳代の19.9%にみられた。いずれの年代でも減量希望は60%以上、主観的健康観が低い者は70%以上、四肢などの冷え感ありは40〜50%おり、食生活の情報源としてインターネット上の情報発信者やソーシャルメディアが最も多かった。
5.現在運動習慣のない若年女性を対象に月経4サイクルにわたる日常生活下のモニタリング調査を実施した。骨密度はYAM値と比べ100%未満の人の割合が多く、中学校時代に運動部に所属していた者は有意に骨密度が高かった。睡眠に何らかの問題がある人は、やせ体型で多い傾向、起立性調節障害が疑われる人もいることを見出した。二重標識水法を用いて総エネルギー消費量(TEE)を測定した結果、標準体型者はやせ体型者に比べてTEEは高値であったが、体重あたりのTEEは両者に違いは認められなかった。尿メタボローム解析を行った結果、痩せ体型に特徴的な尿メタボロームが見出され、栄養素摂取状態やエネルギーバランスを評価する客観的指標の確立につながる知見を得た。月経1サイクルにおける睡眠評価を行った結果、やせは不眠や黄体期のメラトニン分泌低下と関連する可能性が示唆された。
6.学校保健統計調査の大規模データを①スケーリング特性を分位点回帰を用いて評価した結果、男性では5~13歳、女性では5~11歳において顕著な多重スケーリング性が見られることを見いだした。②国際肥満タスクフォースが設定したBMIに基づく体格評価基準と、我が国の学校保健統計調査おいて用いられている体格評価基準について、その評価結果の特徴を調べた。その結果、低体重の評価においてIOFT基準を適用した場合、男性11~13歳、女性10~11歳において、顕著な身長依存性が見られた。BMIを用いた判定では、同性、同年齢の群において、身長が下位25%の子どもは、上位25%の子どもと比べて、5倍も多い割合で低体重に分類された。
結論
1.若年やせ女性の問題は東アジアに多く、内分泌・栄養および代謝疾患や精神および行動の障害など、さまざまな疾患に関連していた。
2.我が国における若年やせ女性の形成は、ボディイメージに起因する可能性が示唆された。
3.中高生のやせとその関連要因、また、生活習慣や健康問題の実態について明らかになった。やせの早期対策、また総合的な支援が必要である。
4.若い世代の女性で多くの健康・栄養上の課題が認められ、年代を考慮した支援の必要性が示唆された。健康観や体型認識改善にも訴えるアプローチが必要である。
5.やせが原因で生じる可能性のある月経、骨、耐糖能、体力、食生活という点での健康問題は少ない可能性があるが、やせ体型群では心拍数の低下と睡眠の質の低下がみられるため、体格と健康問題が関連している可能性がある。
6.①子どもの適切な痩身評価のために、従来のBMIとは異なる体格評価指標が求められる。②同年齢において、相対的に低身長や高身長の場合は、従来基準を用いた判定結果のみに頼るのではなく、他の検査結果を踏まえた慎重な判断が必要である。
2.我が国における若年やせ女性の形成は、ボディイメージに起因する可能性が示唆された。
3.中高生のやせとその関連要因、また、生活習慣や健康問題の実態について明らかになった。やせの早期対策、また総合的な支援が必要である。
4.若い世代の女性で多くの健康・栄養上の課題が認められ、年代を考慮した支援の必要性が示唆された。健康観や体型認識改善にも訴えるアプローチが必要である。
5.やせが原因で生じる可能性のある月経、骨、耐糖能、体力、食生活という点での健康問題は少ない可能性があるが、やせ体型群では心拍数の低下と睡眠の質の低下がみられるため、体格と健康問題が関連している可能性がある。
6.①子どもの適切な痩身評価のために、従来のBMIとは異なる体格評価指標が求められる。②同年齢において、相対的に低身長や高身長の場合は、従来基準を用いた判定結果のみに頼るのではなく、他の検査結果を踏まえた慎重な判断が必要である。
公開日・更新日
公開日
2025-04-23
更新日
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