新しい生活様式における適切な健診実施と受診に向けた研究

文献情報

文献番号
202308004A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい生活様式における適切な健診実施と受診に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科/大学院スポーツ・健康科学研究科予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 塩見 美抄(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 鈴木 正人(日比谷国際クリニック)
  • 髙谷 典秀(医療法人社団同友会)
  • 立道 昌幸(東海大学 医学部)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 原 聖吾(MICIN)
  • 平尾 磨樹(大東文化大学スポーツ・健康科学部健康科学科)
  • 福田 洋(順天堂大学 先端予防医学・健康情報学講座)
  • 武藤 繁貴(聖隷福祉事業団 聖隷健康診断センター 医務部)
  • 村上 正巳(群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は健康増進法に基づく健康診査において、特に課題として挙げられているオンライン診療・指先検診を含めた『新しい生活様式』に対応した健診項目・健診のあり方に関するエビデンスを収集・構築し、その実行可能性のある方策を整理することにある。
研究方法
最終年度は、3カ年の研究成果を複眼的な視点から班全体で俯瞰し、新しい生活様式に対応した健診項目・健診のあり方に関して実行可能性のある方策を論点整理(「オンライン健診」及び「指先微量血液検査」)を行った。さらに、分担研究を進めた。
結果と考察
○「指先健診キット」を利用した重症化予防対策サービスを行っている企業団体からデータ提供を受け、利用状況等の現状などの特徴を検討した。特定健診の未受診者を理由別に①医療機関に受診中である、②時間が取れない、都合がつかない、③費用がかかる、④健康だから、面倒だから、⑤その他の5群に分け、これらの群別に効果的な「指先健診キット」の配布方法を検討した。未受診者対策として「指先健診キット」の検査結果値が「みなし健診」の仕組みに利用できる環境を整備することで特定健診の受診率の向上を実現できる可能性が示唆された。
〇COVID-19により特定健診を2年間受診控えしたことによる影響を調査した。男性では、空腹時血糖値、HbA1cが、2年連続受診控え群に対して4年連続受診群で上昇が有意に抑えられていた。女性でも、HbA1cは4年連続受診群で有意な上昇抑制を認めた。また、女性ではLDLコレステロールが、4年連続受診群で有意な減少を認めた。特定健診における問診内容の2019年度と2022年度の前後比較では、2年連続受診控え群に対して4年連続受診群では、間食や甘いものを摂取する頻度が減った者が増加し、週2回以上、1回30分以上の運動習慣や日常生活と同等の身体活動を行う者が増加し、禁煙率が増加し、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の薬物治療を受けている者の割合が高い傾向にあった。2年連続で受診を控えたことにより、糖代謝、脂質異常といった検査データの悪化の抑制、生活習慣の改善が停滞することが示めされた。
〇職場で健診を受ける機会が無い被扶養者・自営業者における健診受診の実態と健診方法の選好を調査した。健診受診の頻度は、組合健保や共済組合に比べ協会けんぽや国民健康保険に非受診が多いほか、女性、40-64歳、自営業、中学・高校卒業、未婚、離別・死別が非受診になりやすい一方、医療機関に通院している者や健康意識が高い者は毎年受診が多いことが示された。健診方法の選好は、毎年受診の者は従来健診を望む者が過半数(61%)であったが、非受診や数年毎受診の者はオンライン健診を望む者(25%、26%、対12%)やどちらとも言えない者(46%、36%、対27%)が相対的に多くみられた。
〇オンライン健診・保健指導に関する保健指導実施者の意見を明らかにすることを目的に,保健指導実施者を対象にしたwebフォームによるアンケート調査(271名)を実施した。大半はオンライン健診に関する知識をほとんど持っていなかった。保健指導実施者が考えるオンライン健診に適した対象は,検体エラーが生じにくく検査値の誤差が問題になりにくい人なのに対し,オンライン保健指導に適した対象はコミュニケーション力が高く多忙な人と、対象像が異なっていた。オンライン健診は健診精度の面で課題はあるものの,未受診者対策としては有用との意見が得られた。
結論
「オンライン健診」論点整理では、1)オンライン健診は、施設健診を代替するものではない、2)医師による診察には限界がある、3)血液検査については「指先微量血液検査」の実施可能性の議論が必要である 、4)オンライン健診は、施設健診が様々な事由から困難であり、受診機会を逸している対象者に対して、機会を少しでも増やすことを目的として実施可能性を検討することが望ましい、5)保健師等による医療職によるオンライン健診の実施は、生活習慣の偏りを是正する良い機会となり得る。
「指先微量血液検査」論点整理では、1)多くの検査項目で静脈血と手指血に高い相関関係を認めた。臨床的許容誤差範囲等の基準から検討した結果、HDLコレステロール、AST、γGPT、HbA1cに偏りが認められたが、4者について補正式を作成した、2)手指血の遠隔地搬送における影響はなかった、3)指先健診キットの検体エラーは自己採血操作の不慣れが原因の大部分を占めた。自己採血操作方法を解説するパンフレットや動画改訂などの環境改善により検体エラーは大きく改善した、4)指先健診キットの利用にあたっては、受診者目線での使用方法を周知させる環境整備の対策(検査リテラシーの向上など)が同時に重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202308004B
報告書区分
総合
研究課題名
新しい生活様式における適切な健診実施と受診に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FA1005
研究年度
令和5(2023)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科/大学院スポーツ・健康科学研究科予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 塩見 美抄(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 鈴木 正人(日比谷国際クリニック)
  • 髙谷 典秀(医療法人社団同友会)
  • 立道 昌幸(東海大学 医学部)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 原 聖吾(MICIN)
  • 平尾 磨樹(大東文化大学スポーツ・健康科学部健康科学科)
  • 福田 洋(順天堂大学 先端予防医学・健康情報学講座)
  • 武藤 繁貴(聖隷福祉事業団 聖隷健康診断センター 医務部)
  • 村上 正巳(群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、健康増進法に基づく健康診査において、特に課題として挙げられているオンライン診療・指先検診を含めた「新しい生活様式に対応した健診項目・健診のあり方」に関するエビデンスを収集・構築し、その実行可能性のある方策を検討することを目的とした。
研究方法
令和3年度(初年度)から3カ年にわたって、<オンライン健診・保健指導等の可能性に係る調査と分析>、<コロナ禍における「健診受診控え」の要因と影響の検討>などを行った。前者では新しい生活様式に適した健診・保健指導の可能性として、「指先微量血液検査(郵送健診)」を利用して、健診フィールドにおける実証研究と分析を実施し、その可能性及び限界について検討した。後者では、コロナ禍における健診受診控えの要因調査(令和3年度)に参加した2,052 人を追跡し、COVID-19の5類移行後においての令和5年度の健診受診状況と対象者の特性を比較検討した。また、特定健診を2年間受診控えしたことによる影響について検討した。
結果と考察
・指先微量血液検査(郵送健診)については、静脈血と手指血の関係について、臨床的許容誤差範囲等の基準から検討した結果、HDL コレステロール、AST(GOT)、GGT(γGT)、HbA1c に偏りが認められた。この4者について補正式を作成した。なおGluは静脈血より手指血で高い結果が得られた。また手指血の遠隔地搬送における影響はなかった。手指血の検体採取エラー率については、200個を配布して、提出回収率80%、検体エラー率約7%であり、原因は「採血キットの操作の不慣れ」によるものが多くを占めた。採血方法についてパンフレット改修や動画による説明を行ったところ、検体エラー率が先行報告結果(13〜19%)に比べ大きく改善した。
・未受診群の関連要因として、男性で「睡眠で休養とれない」、女性で「18歳未満の子がいる」のオッズが高く、逆に、男性で「既婚」「高世帯収入」「朝食抜かない」、女性で「高世帯収入」「職業あり」が継続受診につながっていた。また国民健康保険加入者では、男女とも「身体活動不足」が未受診に関連していた。
・また、特定健診を2年間受診控えしたことによる影響については、男性では、空腹時血糖値、HbA1cが、2年連続受診控え群に対して4年連続受診群で上昇が有意に抑えられていた。女性ででも、HbA1cは4年連続受診群で有意な上昇抑制を認めた。また、女性ではLDL コレステロールが、いずれも4 年連続受診群で有意な減少を認めた。特定健診における問診内容の2019 年度と2022 年度の前後比較では、2 年連続受診控え群に対して4 年連続受診群では、間食や甘いものを摂取する頻度が減った者が増加し、週2回以上、1回30 分以上の運動習慣や日常生活と同等の身体活動を行う者が増加し、禁煙率が増加し、高血圧症、糖尿病、脂質異常症の薬物治療を受けている者の割合が高い傾向にあった。2年連続で受診を控えたことにより、糖代謝、脂質異常といった検査データの悪化の抑制、生活習慣の改善が停滞することが示唆された。
結論
以上の複眼的な調査結果を踏まえて、『新しい生活様式』に対応した健診項目・健診のあり方に関して実行可能性のある方策を俯瞰し論点整理した。
「オンライン健診」論点整理
1)オンライン健診は、施設健診を代替するものではない、2)医師による診察には限界がある、3)血液検査については「指先微量血液検査」の実施可能性の議論が必要である 、4)オンライン健診は、施設健診が様々な事由から困難であり、受診機会を逸している対象者に対して、機会を少しでも増やすことを目的として実施可能性を検討することが望ましい、5)保健師等による医療職によるオンライン健診の実施は、生活習慣の偏りを是正する良い機会となり得る。
「指先微量血液検査」論点整理
1)多くの検査項目で静脈血と手指血に高い相関関係を認めた。臨床的許容誤差範囲等の基準から検討した結果、HDLコレステロール、AST、γGT、HbA1cに偏りが認められたが、4者について補正式を作成した、2)手指血の遠隔地搬送における影響はなかった、3)指先健診キットの検体エラーは自己採血操作の不慣れが原因の大部分を占めた。自己採血操作方法を解説するパンフレットや動画改訂などの環境改善により検体エラーは大きく改善した、4)指先健診キットの利用にあたっては、受診者目線での使用方法を周知させる環境整備の対策(検査リテラシーの向上など)が同時に重要である。

公開日・更新日

公開日
2025-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2025-04-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202308004C

収支報告書

文献番号
202308004Z