慢性寄生虫感染症の侵入監視及びその健康管理体制の確立

文献情報

文献番号
200931007A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性寄生虫感染症の侵入監視及びその健康管理体制の確立
課題番号
H19-新興・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮平 靖(防衛医科大学校 国際感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 赤尾 信明(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 大西 健児(東京都立墨東病院 感染症科)
  • 高本 雅哉(信州大学大学院 医学系研究科)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
12,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 在留外国人の慢性寄生虫/原虫症罹患状況の実態を把握しその監視体制を確立する。
(2) 輸血行政等に対する国民の先入観や根拠の無い不安の払拭に寄与する。
(3) 健康管理/教育体制の整備は予測外の感染事例の未然防止、作成ガイドラインは本事案に対する先駆的な対策マニュアルとなることを目指す。
(4) 新規診断手法、予防/治療的免疫療法の開発研究では、遅滞する本研究領域の発展に寄与し、本領域に留まらず他領域の制御手法へも応用する。
研究方法
(1) 健診実施による実態調査研究:教育施設、非営利団体組織 (NPO)、在留外国人の診察を行う医療機関を介し、群馬県太田市、茨城県常総市にて健診実施。
(2) 神奈川県藤沢市、大和市、横浜市において慢性寄生虫感染症教育講演会を実施。
(3) 本健康事案に対処するためのガイドライン作成。
(4) 新規予防/治療的免疫療法の開発を目的とした基盤研究の推進。
結果と考察
(1) 平成21年9月6日の健診では92名(男40名、女性52名)、11月29日には89名(男性36名、女性53名)の受診者があり、受診者総数は181名(男性76名、女性105名)であった。
(2) 血清診断では在留外国人の8.7%の方々、糞便検査では6.1%の方々が寄生虫感染症を現症として、または既往として罹患可能性があることを示唆した。
(3) 教育講演会では、リーシュマニア症、シャーガス病、食べ物やペットから感染する寄生虫感染症、サナダムシ・マラリア、日和見感染症・下痢症について啓発。
(4) ガイドラインを作成し終え、全国自治体および教育研究機関へ送付した。
(5) 慢性寄生虫感染症の迅速診断キットを開発し、免疫療法の基礎となる知見を得た。
結論
(1) 在留外国人の慢性寄生虫/原虫症の罹患状況の実態を明らかにし、行政施策の立案を可能にする監視、健康管理体制のガイドラインを作成した。
(2) 実態解明により在留外国人に対する感染症領域での先入観の排除、不要な不安払拭に寄与し、健康管理/教育体制の整備は予測外の感染可能性を未然に防ぐ。
(3) 特に輸血行政上、輸血により感染が拡大し得る慢性寄生虫/原虫症に対する対策立案の科学的根拠となる結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

文献情報

文献番号
200931007B
報告書区分
総合
研究課題名
慢性寄生虫感染症の侵入監視及びその健康管理体制の確立
課題番号
H19-新興・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
宮平 靖(防衛医科大学校 国際感染症学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 赤尾 信明(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 大西 健児(東京都立墨東病院 感染症科)
  • 高本 雅哉(信州大学大学院 医学系研究科)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) 在留外国人の慢性寄生虫/原虫症罹患状況の実態を把握しその監視体制を確立する。
(2) 輸血行政等に対する国民の先入観や根拠の無い不安の払拭に寄与する。
(3) 健康管理/教育体制の整備は予測外の感染事例の未然防止、作成ガイドラインは本事案に対する先駆的な対策マニュアルとなることを目指す。
(4) 新規診断手法、予防/治療的免疫療法の開発研究では、遅滞する本研究領域の発展に寄与し、本領域に留まらず他領域の制御手法へも応用する。
研究方法
(1) 健診実施による実態調査研究:教育施設、非営利団体組織 (NPO)、在留外国人の診察を行う医療機関、キリスト教会等宗教施設、外国人コミュニティー・リーダーを介し、神奈川県大和市、藤沢市、平塚市、群馬県太田市、茨城県常総市にて健診実施。
(2) 神奈川県藤沢市、大和市、横浜市において慢性寄生虫感染症教育講演会を実施。
(3) 本健康事案に対処するためのガイドラインを作成。
(4) 新規予防/治療的免疫療法の開発を目的とした基盤研究の推進。
結果と考察
(1) 3年間の受診者は、総計515名(男性196名、女性288名、不明31名)であった。このうち、中南米出身者298名、アジア出身者196名、その他の地域出身者8名、国籍不明者13名であった。採血応諾者473名、糞便検体提出者は263名、蟯虫検査テープ提出者は114名であった。
(2) 血清診断では在留外国人の8.7%の方々、糞便検査では6.1%の方々が寄生虫感染症を現症として、または既往として罹患可能性があることを示唆した。
(3) 教育講演会では、リーシュマニア症、シャーガス病、食べ物やペットから感染する寄生虫感染症、サナダムシ・マラリア、日和見感染症・下痢症について啓発。
(4) ガイドラインを作成し終え、全国自治体および教育研究機関へ送付する。
(5) 慢性寄生虫感染症の迅速診断キットを開発し、免疫療法の基礎となる知見を得た。
結論
(1) 在留外国人の慢性寄生虫/原虫症の罹患実態を明らかにし、行政施策の立案を可能にする監視、健康管理体制のガイドラインを作成し全国自治体等へ送付、周知する。
(2) 実態解明により在留外国人に対する感染症領域での先入観の排除、不要な不安払拭に寄与し、健康管理/教育体制の整備は予測外の感染可能性を未然に防ぐ。
(3) 特に輸血行政上、輸血により感染が拡大し得る慢性寄生虫/原虫症に対する対策立案の科学的根拠となる結果を得た。
(4) 基盤研究では新規診断・治療手技開発研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2010-07-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200931007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 着実に増加する日本国内在留外国人の慢性寄生虫感染症罹患実態は明らかではなかった現状を打破し、一般健診実施をベースとして初めてその実態を明らかにした。特に国内に存在したことが無い感染症に関しては専門家でも知識が乏しいことから、専門的知見が得られたことにより学術的関心も高まって行くことが期待される。対岸の火事として見られ財政的支援が得られないことが多かった本研究分野の基盤研究も、新規迅速診断キットの開発や新規免疫療法の開発によって国内でも適切な対応が選択態勢へと変わって行く可能性が高まった。
臨床的観点からの成果
 国内では希少感染症に属する慢性寄生虫感染症の国内における罹患実態が明らかになったことにより、医療従事者の意識啓発に本成果が科学的根拠として参照可能となり、さらに教育講演会等の実施は、具体的な臨床知識の普及に貢献する。慢性寄生虫感染症の国内流入が大規模な流行を引き起こす可能性は極めて小さいが、このような知識啓発によって臨床面から不測の感染事故発生を未然に防止しうる成果が期待される。人道的観点からも、罹患者への適切な治療手技の実施に関してもスムーズに行なえることが期待される。
ガイドライン等の開発
 本健康事案解決へ向けたガイドラインは、慢性寄生虫感染症について、在留外国人の現状、国内外における慢性寄生虫感染症の流行状況、地方自治体からアプローチし、時に孤立した閉鎖社会を形成しうる在留外国人コミュニティーの方々の健診を実施するマニュアル、慢性寄生虫感染症の診断、治療に加えて、6カ国語(日本語、英語、ポルトガル語、スペイン語、中国語、ハングル)で作成され感染症を平易な言葉解説した健康手帳、倫理的な配慮をやはり6カ国語で作成した例文等を含んだ。これは全国自治体へ送付される。
その他行政的観点からの成果
 世界へ開かれた日本社会は、国際化の流れの中で国益に合致する進むべき方向であると考えられる。在留外国人数の増加は、この世界情勢の中で当然の流れとして起こって来ている現象として捉えられる。この急展開する情勢を受けて、慢性寄生虫感染症の国内流入実態の把握と健康管理体制の整備は速やかに行なわれなければならない行政事案であり、その整備によって不要の偏見排除、不測の感染事故発生防止に寄与し、安心・安全社会構築の一助となるであろうことが成果として期待される。
その他のインパクト
 世界の中でも高度に発達、整備された衛生基盤に慣れた日本人は、国際化の急速な進展によってその適応能力が試されていると言っても過言ではない。聞き慣れない慢性寄生虫感染症名に不要な恐れを抱くとしたならば、それは無知によってもたらされる偏見のためである可能性が高く、教育啓発活動は効果的に開催し、不要な恐怖感を抱かぬよう正しい知識を得てもらう必要がある。この観点から教育講演会を3度開催し、医療従事者のみならず一般聴衆、在留外国人の方々でも学ぶべき点がある内容を工夫した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
14件
その他論文(和文)
19件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
「慢性寄生虫感染症の侵入監視及びその健康管理体制に関するガイドライン」を作成。全国都道府県、市町村等へ配布。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
慢性寄生虫感染症に関する教育講演会(神奈川県藤沢市、大和市、横浜市の3カ所)を実施。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-06-27
更新日
-