強度行動障害の評価尺度と支援手法に関する研究

文献情報

文献番号
200929026A
報告書区分
総括
研究課題名
強度行動障害の評価尺度と支援手法に関する研究
課題番号
H21-障害・一般-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
井上 雅彦(鳥取大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大塚 晃(上智大学)
  • 安達 潤(北海道教育大学旭川校)
  • 辻井 正次(中京大学社会学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害保健福祉総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 強度行動障害に対しては、1993年の特別処遇事業開始から15年が経過し、その間自立支援法・発達障害者支援法などが制定され、障害児者を取り巻く社会的環境には大きな変化がもたらされてきている。強度行動障害は以前から研究班が組織され、その処遇等に関しては一定の成果があがっていると考えられるが、現在の社会的・法的変化の中で知的障害のない発達障害児・者における行動問題も表面化し、社会的に大きな問題として取り上げられている。また同時に従来の入所施設については入所期間を経過しても移行先が見つからない状態も指摘されるなど様々な検討すべき課題も生じている。
 本研究では強度行動障害について、国内外での行動障害への評価と施策の検証を行い、評価に関する分析的研究、行動障害への効果的な介入技法の検討を行うことを目的とする。
研究方法
 今年度は強度行動障害の定義と施策及びこれまでの研究経過を明らかにし、諸外国での行動障害に対する評価方法と知的障害のない発達障害についての行動障害の先行研究の動向について文献的検討を行った。調査研究としては、知的障害者入所施設に入所している入所者289 名について、強度行動障害評価表、広汎性発達障害評価尺度(PARS)、異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)を用いてその関連を明らかにした。さらに精神科病院で在院日数が長期となっている患者のうち精神遅滞のある患者の実態について調査を行った。 
結果と考察
 現状の強度行動障害の判定基準とその活用は、制度上障害者自立支援法の各事業にまたがる複雑なものとなっており、今後の見直しも含めた整理が必要と考えらる。強度行動障害を国際的な評価基準に照らし、知的障害入所施設での調査を行った結果、広汎性発達障害の程度、ABC-J 等が強度行動障害判定基準との相関を示すこと、加えて旧法と新法における判定評価基準についても関連性が弱いことが明らかになった。また精神科病院の長期在院精神遅滞患者は全国に一定数存在し行動障害が医療的必要性となる患者の割合が高いことが明らかとなった。知的障害を伴わない発達障害の場合については、今後データを付加する必要があると考えられた。
 
結論
 行動障害についての我が国の施策的な経緯と実態についての知見が得られた。評価については自閉症スペクトラムと行動障害との関連やABC-Jの評価得点との関連性が示唆された。行動障害は環境と個人との相互交渉の結果もたらされるものであり、今後は個人要因と合わせて環境要因の分析を行うこと、さらにその効果的な支援手法について検討を深めていくことの必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-09-17
更新日
-