わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究

文献情報

文献番号
200926022A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の今後の喫煙対策と受動喫煙対策の方向性とその推進に関する研究
課題番号
H20-循環器等(生習)・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
大和 浩(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 飯田 真美(岐阜大学大学院医学研究科再生医科学循環病態学呼吸病態学)
  • 江口 泰正(産業医科大学 産業生態科学研究所 健康開発科学研究室)
  • 寶珠山 務(産業医科大学 産業生態科学研究所 環境疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外では「たばこの規制に関する世界保健機関枠組み条約(FCTC)」第8条にそって、サービス産業も含めた全ての建物内を全面禁煙とする受動喫煙防止法が成立し、そのような国や地域では心筋梗塞が減少したことが報告されている。本研究の目的は、受動喫煙対策ほとんど進んでいないサービス産業における受動喫煙の曝露実態の調査をおこない、その結果を政策決定者に示すことにより、わが国においても海外と同じような包括的な受動喫煙防止法の早期成立を促すことである。また、先行研究からの継続テーマとして、JRと私鉄、および、医・歯学部の受動喫煙対策のモニタリングもおこなうことである。
研究方法
受動喫煙曝露の影響を評価する上で、世界保健機関(WHO)がAir Quality Guidelinesとして示している直径2.5ミクロン以下の微小粒子状物質(PM2.5)を指標として、わが国のサービス産業における受動喫煙曝露の実態を評価した。具体的には、サービス産業の店舗内(喫煙区域、禁煙区域)、および、そこで働く従業員の呼吸領域のPM2.5の濃度の測定をデジタル粉じん計を用いておこなった。JRと私鉄の有料特急の禁煙化率については先行研究の実地調査と時刻表をもとに全数調査をおこなった。全国の医・歯学部の敷地内禁煙の導入状況については、郵送法により全数調査をおこなった。
結果と考察
喫煙がおこなわれているサービス産業(4業種、22店舗)におけるPM2.5の平均濃度は、WHOが示す24時間の短時間曝露の指標(25g/m3)の6.4倍と高い濃度であること、そこで働く従業員が喫煙者に接客する際の胸元における個人曝露濃度はさらにその数倍高い、危険なレベルであることが判明した。JRでは東海道・山陽新幹線と寝台特急以外は全面禁煙となっていること、有料の特急を運行する私鉄15社のうち12社は全面禁煙であることがわかった。サービス産業の利用者だけでなく、そこで働く従業員の受動喫煙を防止するために、海外のように全面禁煙とすることが必要であると考えられた。また、全国80の医学部のうち44学部、70大学病院が敷地内禁煙であること、および、29の歯学部のうち10学部、21大学病院が敷地内禁煙であることがわかった。
結論
FCTC第8条が締約国に求めているように、わが国においてもサービス産業を含む全ての閉鎖空間を全面禁煙とする包括的な受動喫煙防止法の施行が必要であると考えられた。特に、社会全体の喫煙対策をリードする役割が求められている医・歯学部と大学病院においては、敷地内禁煙を施設基準とする措置が必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-09-29
更新日
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