日本人における動脈硬化性大動脈弁膜疾患の発症・進展予防に関する研究

文献情報

文献番号
200926013A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人における動脈硬化性大動脈弁膜疾患の発症・進展予防に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山本 一博(大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 増山 理(兵庫医科大学医学部内科学循環器内科)
  • 中谷 敏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座)
  • 吉田 清(川崎医科大学医学部循環器内科)
  • 木佐貫 彰(鹿児島大学医学部保健学科臨床看護学講座)
  • 尾辻 豊(産業医科大学医学部第2内科)
  • 赤阪 隆史(和歌山県立医科大学医学部循環器内科)
  • 大手 信之(名古屋市立大学大学院心臓・腎高血圧内科学)
  • 平野 豊(近畿大学医学部附属病院臨床検査部)
  • 山本 秀也(広島大学病院循環器内科)
  • 寒水 孝司(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
18,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、増加を続ける大動脈弁硬化の、日本人における発症進展予知に結びつく指標と進展促進要因を探索し一次予防法の確立を目指すと同時に、発症後の病態進展阻止に結びつく薬剤を見出し、治療介入指針を確立することを目的とする。
研究方法
1) 後向き調査研究
対象
過去3年以内に、心エコー検査にて大動脈弁の変性変化または狭窄所見を認めた50才以上の症例500例。

調査項目
登録時および2-5年前の患者背景、心エコー検査データ、血液検査データを登録する。

2) 前向き調査研究
対象
心エコー検査にて大動脈弁の変性変化または狭窄所見を認めた50才以上の外来追跡可能な症例300例(3年間で登録)。
調査項目
登録時、およびその後1年毎に3年間、患者背景、心エコー検査データ、血液検査データを登録する。
結果と考察
後向き調査研究では775例の登録を行った。データ解析を行ったところ、軽症の大動脈弁変性患者では、非進行例に比し進行例ではアンジオテンシン受容体拮抗薬服用率が低く、ワルファリン服用率が高かった。高度の大動脈弁変性患者では、非進行例に比し進行例では女性が多く、血中ヘモグロビン値が低く、左室形態はより求心性を呈していた。いずれの群においても、脂質異常症、糖尿病、高血圧など生活習慣病の有無は弁病変の進行と関連がなかった。前向き調査研究については372例の登録を終えた。1尖以上で大動脈弁石灰化を有する患者のみ登録されており、その合併症を見ると、高血圧が78%程度と高く、次いで脂質異常症が56%、糖尿病は29%であった。冠動脈疾患の合併は36%、脳血管障害の合併は9%であった。
結論
本病態は動脈硬化とは異なる病態として考えるべきと思われる。また、日本人を対象とした本研究では女性が大動脈弁病変の進行リスクとしてあがるなど、日本人と欧米人で病態の進行促進因子が異なる可能性が示された。軽症段階での病態促進因子と、高度進行例での病態促進因子が異なる可能性も示され、高度進行例では内科的介入は困難である一方、軽症段階であれば、アンジオテンシン受容体拮抗薬による内科的介入により病態の進行を遅延させうる可能性が示された。さらに、心房細動などの血栓塞栓症予防に広く使用されているワルファリンに大動脈弁石灰化促進作用が認められており、ワルファリン服用患者を追跡していく上で留意すべき点と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2010-10-05
更新日
-

文献情報

文献番号
200926013B
報告書区分
総合
研究課題名
日本人における動脈硬化性大動脈弁膜疾患の発症・進展予防に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-015
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山本 一博(大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
  • 増山 理(兵庫医科大学医学部内科学循環器内科)
  • 中谷 敏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座)
  • 吉田 清(川崎医科大学医学部循環器内科)
  • 木佐貫 彰(鹿児島大学医学部保健学科臨床看護学講座)
  • 尾辻 豊(産業医科大学医学部第2内科)
  • 赤阪隆史(和歌山県立医科大学医学部循環器内科)
  • 大手信之(名古屋市立大学大学院心臓・腎高血圧内科学)
  • 平野 豊(近畿大学医学部附属病院臨床検査部)
  • 山本秀也(広島大学病院循環器内科)
  • 寒水孝司(大阪大学臨床医工学融合研究教育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、増加を続ける大動脈弁硬化の、日本人における発症進展予知に結びつく指標と進展促進要因を探索し一次予防法の確立を目指すと同時に、発症後の病態進展阻止に結びつく薬剤を見出し、治療介入指針を確立することを目的とする。
研究方法
1) 後向き調査研究
過去3年以内に、心エコー検査にて大動脈弁の変性変化または狭窄所見を認めた50才以上の症例500例。

調査項目
登録時および2-5年前の患者背景、心エコー検査データ、血液検査データを登録する。

2) 前向き調査研究
心エコー検査にて大動脈弁の変性変化または狭窄所見を認めた50才以上の外来追跡可能な症例300例(3年間で登録)。
調査項目
登録時、およびその後1年毎に3年間、患者背景、心エコー検査データ、血液検査データを登録する。
結果と考察
後向き調査研究の登録症例数は775例となった。このデータ解析を行い、軽症の大動脈弁変性患者では、アンジオテンシン受容体拮抗薬には病態進展阻止効果が、ワルファリンには病態進展促進効果が認められることが示された。高度の大動脈弁変性患者では、女性および元々病態が進行している症例ほど進行が速いことが示された。いずれの群においても、脂質異常症、糖尿病、高血圧など生活習慣病の有無は弁病変の進行と関連がなかった。前向き調査研究については372例の登録を終えた。前向き調査研究登録症例の合併症を見ると、高血圧が78%程度と高く、次いで脂質異常症が56%、糖尿病は29%であった。冠動脈疾患の合併は36%、脳血管障害の合併は9%であった。
結論
後向き研究の結果および前向き研究の患者背景より、
1)本病態は動脈硬化とは異なると考えられる。
2)日本人と欧米人で病態の進行促進因子が異なる可能性が示された。
3)軽症段階と高度進行例では病態促進因子が異なる可能性が示された。
4)高度進行例では内科的介入は困難と考えられる
5)軽症段階であれば、アンジオテンシン受容体拮抗薬により病態の進行を遅延させうる可能性が示された。
6)軽症例では、血栓塞栓症予防に広く使用されているワルファリンに大動脈弁石灰化促進作用が認められており、ワルファリン服用患者を追跡していく上で留意すべき点と考えられる。
今後、計画通りに前向き調査研究に登録された症例を3年間追跡し、これらの結果の再現性を確認すると同時に、これら以外に本病態と関連する因子を解明する予定である。

公開日・更新日

公開日
2010-10-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
後ろ向き観察研究の結果から以下の点が明らかとなった。
1、本病態は動脈硬化とは異なると考えられる。
2、日本人と欧米人で病態の進行促進因子が異なる可能性が示された。
3、軽症段階と高度進行例では病態促進因子が異なる可能性が示された。
4、高度進行例では内科的介入は困難と考えられる
5、軽症例では、アンジオテンシン受容体拮抗薬により病態の進行を遅延させうる一方、ワルファリンには大動脈弁石灰化促進作用を認めることが示唆された。
臨床的観点からの成果
これまでの介入試験がすべてnegativeな結果となっていることとあわせて考えると、高度大動脈弁石灰化に対して内科的治療介入は困難であり、軽症段階での治療介入(アンジオテンシン受容体拮抗薬など)が望ましいことが示唆された。一方、ワルファリンには病変の進行を促す作用があると考えられ、同薬剤服用患者では注意を要する。
ガイドライン等の開発
前向き観察研究でも、後向き観察研究の結果が追認された場合、日本人患者における本病態の治療アプローチについて指針を提示することが可能となる。
その他行政的観点からの成果
本病態は高齢者に多いので、長期的に見れば、高齢者のQOL改善に結びつく治療方針を提示することが期待される。
その他のインパクト
第74回日本循環器学会学術集会シンポジウム(2010年3月5日)において発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第74回日本循環器学会学術集会シンポジウム(2010年3月)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamamoto K, Yamamoto H, Yoshida K, et al.
Prognostic factors for progression of early- and late-stage calcific aortic valve disease in Japanese: The Japanese Aortic Stenosis Study (JASS) Retrospective Analysis
Hypertension Research , 33 (3) , 269-274  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-