健康づくりのための運動基準・エクササイズガイド改定に関する研究

文献情報

文献番号
200926001A
報告書区分
総括
研究課題名
健康づくりのための運動基準・エクササイズガイド改定に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田畑 泉(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口満(早稲田大学スポーツ科学学術院)
  • 津下一代(あいち健康の森 健康科学総合センター)
  • 竹中晃二(早稲田大学人間科学学術院)
  • 福永哲夫(鹿屋体育大学)
  • 沼田健之(岡山県南部健康づくりセンター)
  • 呉泰雄(松本大学人間健康学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
16,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2006年策定の健康づくりのための運動基準2006-身体活動・運動・体力-と健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)でしめされた生活習慣病予防に必要な体力、特に持久力の指標である最大酸素摂取量の値(基準値)の妥当性の研究及び、エクササイズガイド改定に関する科学的エビデンスを明らかにすることであった。
研究方法
20歳代から60歳代の健常成人の最大酸素摂取量および身体活動量を480名測定した。その他、生活主観病発症の危険因子やメタボリックシンドローム関連の因子、さらに生活習慣病との関連が従来報告されていない柔軟性(座位体前屈)を測定した。また、自体重を用いたレジスタンストレーニングの効果および運動習慣からのドロップアウトに関する逆戻り危険因子について調査を行った。
結果と考察
男性の最大酸素摂取量は、20歳代から50歳代で基準値とほぼ同等であるが、60歳代では、基準値よりも低い傾向が見られた。女性は、30代からすでに基準値より低下傾向を示し、特に50代から60代の中高年で下限値よりも低値となった。
男性において最大酸素摂取量は肥満度や筋力とは独立した血中中性脂肪濃度の予測因子であること、女性において筋力は、空腹時血糖濃度の予測因子であることが明らかとなった。過去の運動歴も、最大酸素摂取量への影響が推察された。
中等度以上の強度の身体活動量(エクササイズ(Ex))は最大酸素摂取量の強い予測因子であること、身体活動量は換気閾値にも影響を与えていることが示された。
横断研究により、座位体前屈で評価される柔軟性が低い中高年者は、動脈が硬いことを初めて明らかとなった。柔軟性についても男性3011名、女性6874名で柔軟性(座位体前屈(cm)を測定した結果より、基準値が定められた。
 運動習慣者のスリップ・ラプスを再発予防モデル(Relapse Prevention Model: RPM)を用いて、調べたところ、運動習慣者の逆戻りリスク場面において、対処行動の適用が男女によって異なることなどが明らかとなった。
結論
1)生活習慣病発症予防という観点から、女性の中高年及び男性60歳代の持久力(最大酸素摂取量)向上が必要である。
2)最大酸素摂取量とメタボリックシンドローム関連項目との関連が示唆された。
3)中等度以上の強度の身体活動量(エクササイズ(Ex))は最大酸素摂取量に影響を与える重要な独立した予測因子であることが確認された。
4)座位体前屈で評価される柔軟性は、生活習慣病発症に影響を与えている可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
200926001B
報告書区分
総合
研究課題名
健康づくりのための運動基準・エクササイズガイド改定に関する研究
課題番号
H19-循環器等(生習)・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
田畑 泉(独立行政法人 国立健康・栄養研究所 健康増進プログラム)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口満(早稲田大学スポーツ科学学術院)
  • 津下一代(あいち健康の森 健康科学総合センター)
  • 竹中晃二(早稲田大学人間科学学術院)
  • 福永哲夫(鹿屋体育大学)
  • 沼田健之(岡山県南部健康づくりセンター)
  • 宮武伸行(岡山県南部健康づくりセンター)
  • 呉泰雄(松本大学人間健康学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2006年策定の健康づくりのための運動基準2006-身体活動・運動・体力-(以下運動基準2006)と健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド2006)の妥当性の検証と、その普及啓発及び、次の運動基準とエクササイズガイド策定に必要な科学的エビデンスの獲得 
研究方法
20歳代から60歳代の健常成人の最大酸素摂取量および身体活動量を男女1233名測定した。また、その他の体力や、生活習慣病の危険因子を測定した。及び運動習慣からのドロップアウトに関する逆戻り危険因子について調査を行った。さらに文献学的研究(システマティックレビュー)を行った。
 
結果と考察
①男性において持久性体力の指標である最大酸素摂取量は、運動基準2006で示された生活習慣病発症予防に必要な値である基準値に比べると、ほぼ同程度の値となった。しかし従来の値と比べると、男性では低い傾向にあり、最大酸素摂取量と言う観点から、男性は持久量の向上を目指すべきであることが明らかとなった。また女性では、従来の値よりも50歳代60歳代ではやや高い値であり、これはこの年代の体力がやや向上している可能性を示すものである。しかし、基準値を上回っている国民は少ないので、生活習慣病発症予防という観点から最大酸素摂取量を向上させるべきである。②運動基準2006の最大酸素摂取量の基準値は男性では妥当であるが、女性ではやや高いことが示唆された。③ややきつい強度での3分間歩行距離に体組成、中等度以上の身体活動量等を加えることによりより高い精度で推定できることが明らかとなった。④文献学的研究により、20才未満において、女性のがん発症を除いて生活習慣病発症予防に必要な身体活動量・体力を示すことはできないが、骨折発症と自立度低下を予防する身体活動量については、基準値策定が可能であることが示唆された。⑤新しい運動習慣を持つための最も身近に感じられる運動・身体活動を性・年齢毎に特定して普及することが大切である。
結論
①運動基準2006で示された最大差の摂取量の基準値は男性では妥当であるが、女性ではやや高い。
②男性・女性を問わず、生活習慣病発症予防という観点から持久力の向上を目指すべきである。
③システマティックレビューの結果より20才未満において、女性のがん発症を除いて生活習慣病発症予防に必要な身体活動量・体力を示すことはできない。一方、骨折発症と自立度低下を予防する身体活動量については、基準値策定が可能である。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2011-02-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200926001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
生活習慣病の発症と関係がある持久力の指標である最大酸素摂取量を日本人成人男女で測定し1970年代の値と比較したところ、男性ではすべての年代泥、女性は20歳及び30歳代で低下しているが。女性の50歳代と60歳代はやや高くなっていることが示された。最大酸素摂取量を体格・体組成と日常の身体活動(中等度以上の強度)でかなりの精度で予測できることを報告した。
臨床的観点からの成果
体前屈で示される柔軟性と生活習慣病発症との関係が示唆された。今後は生活習慣病発症という観点から柔軟性を見る必要があると考えられる。
ガイドライン等の開発
平成22年度から開始予定の“健康づくりのための運動基準”の改定の委員会で参考にされる予定。
その他行政的観点からの成果
エクササイズガイド2006で示された生活習慣病発症予防に必要な最大酸素摂取量の基準値改定に資するデータが得られた。柔軟性に関する基準値が示された。システマティックレビューにより生活習慣病発症をアウトカムとして必要な身体活動量・体力の基準値を示すことができる可能性を示すことができた
その他のインパクト
アメリカ心臓病学会でのメディアプレゼンテーションで紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
14件
原著論文(英文等)
88件
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
70件
学会発表(国際学会等)
15件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Cao Z-B, N Miyatake, M Higuchi et al.
Predicting VO2max with an objectively measured physical activity in Japanese men
Eur J Appl Physiol , 109 (3) , 465-472  (2010)
原著論文2
Cao ZB, N Miyatake, M Higuchi et al.
Predicting VO2max with an objectively measured physical activity in Japanese women
Med Sci Sports Exerc , 42 (1) , 179-186  (2010)
原著論文3
Miyatake N, M Fujii, M Miyachi et a.
Changes in metabolic syndrome and its components with lifestyle modification Japanese men
Inter Med , 49 (4) , 261-265  (2010)
原著論文4
曹振波, 宮武伸行, 樋口満等
3分間歩行テストによる最大酸素摂取量推定式の開発に関する研究
体力科学 , 58 (10) , 527-536  (2009)
原著論文5
Cao ZB, N Miyatake, M Higuchi et al.
Prediction of VO2max with daily step counts for Japanese adult women
Eur J Appl Physiol , 105 (2) , 289-296  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-